富士フイルムビジネスイノベーション

コラム

WEBマーケティング新時代
~成果が出るパーソナライズ実践事例~ 前編

アドビ株式会社 様

マーケティングの手法として注目を集めている「パーソナライズ」。なぜ、パーソナライズが求められるのか?パーソナライズを実施するには何をどう進めれば良いのか?そんな、企業のマーケティング担当者のみなさまのお悩みを解消すべく、アドビ株式会社さまにお話をお聞きしました。

アドビ株式会社 望月 ありさ氏

デジタルエクスペリエンス事業本部 ソリューションコンサルティング部

プロフィール

ウェブ制作・アクセス解析からキャリアをスタートし、プロジェクトマネジメント、運用組織・業務設計、品質管理など、長年大企業のオウンドメディア運用支援に携わる。その後、東京理科大学大学院にてMOTを取得。お客様と一緒に、ビジネスとテクノロジーの両面から心躍る顧客体験の創造を目指す。

マーケティングの潮流として外せないのがパーソナライズ。パーソナライズとは、ご存知の通り、顧客に合った情報を提供することです。ターゲティング注1、レコメンデーション、One to One など、パーソナライズにもさまざまな手法がありますが、パーソナライズの実施は、もはや企業の責任であるとも言える状態になってきました。「企業の責任」は大袈裟ではないか?と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、企業の競争力強化、顧客満足度の向上においても、パーソナライズが果たす役目は大きなものといえるでしょう。

では、まだパーソナライズ施策を行なっていない、仕組みの導入ができていない企業は、これからどのように検討していけば良いのか。仕組みを選定する上で、注意すべきことは何か。また、パーソナライズ施策の運用を始めたけれど、うまくいっていないと感じている企業は、どのように改善したら良いか、当記事を読んでいただければ、それらの解決策のヒントが見つかると思います。

  • 注1広告配信の文脈では、パーソナライズを「顧客が求めている情報」、ターゲティングを「企業側が提供したい情報」と定義し、両者を異なるものとして考える場合もあるが、ここではターゲティングはパーソナライズの手法のひとつとして含めている。

視点コンテンツのパーソナライズが「企業の責任」になる

企業の責任のひとつといえば、みなさまの記憶に新しいのは2022年4月に施行された改正個人情報保護方針への対応だと思います。年度末の業務で混沌とした状況の中、必死で対応されたご担当者様も多いのではないでしょうか。このような、個人情報の取り扱いに対する法律への対応については、企業が果たすべき責任のひとつとして、みなさまもご納得いただけると思います。

では、なぜ「パーソナライズ施策を行うこと」が企業の果たすべき責任の範囲に含まれてきているのか。本当に、それが最近のマーケティングの潮流なのか。まずはここからご説明したいと思います。

COVID-19の影響で、購買プロセスにおけるデジタル化が急加速

最近のマーケティングを語る上で、やはりCOVID-19の影響は外せません。アドビが2020年に発表したCOVID-19(新型コロナウィルス)禍における消費行動の変化に関するリサーチ注2では、外出自粛をきっかけにオンラインで購入したものを、「COVID-19収束後、デジタルまたは店舗と併用して購買する」と回答した割合は実に90%となりました。また、2022年に米国で発表された、2022年ホリデーシーズンにおけるオンラインショッピングデータ注3では、サイバーマンデーのオンライン消費額は113億ドルとなり、Eコマースの最高記録を更新しました。購買プロセスのデジタル化が急加速していることについては、数字で説明しなくても、みなさまも実感されているのではないでしょうか。そして、この波は、現在も進行しています。

デジタル上での購買が進むと同時に、個人情報保護に注目が集まり、法律も整ってきました。日本でも、改正個人情報保護方針が2022年4月に施行となったり、ヨーロッパの一部の国では、それまで広く使われてきたウェブサイトのデータ分析のソリューションが、GDPR(一般データ保護規則)に違反している可能性があるという判決が下されたりと、個人情報の取り扱いに対してさらに関心が高まってきています。

その中で、顧客にもはっきりとわかる形で現れたのが、Cookie情報の取得に同意を求めるポップアップだと思います。日本の法律上、そのポップアップが必須かどうかというのは、みなさまの企業内、あるいは委託されている弁護士の専門家のご判断になりますが、ヨーロッパやアメリカでビジネスを行っている企業においては、GDPRに対応する必要、つまり、顧客の行動情報について取得する旨を、顧客に通知し、取得情報をどの様に使用するか、事前に顧客に同意を得ることが必要になりました。それにより、グローバルでビジネスを行う大きなブランドのウェブサイトに、一斉にCookie情報の取得に同意を求めるポップアップが現れました。みなさまもウェブサイトで、このポップアップを見たことがあるのではないでしょうか。

つまり、今まで顧客側が漠然と感じていた、自分のウェブサイトの行動情報は企業側に送られているかもしれない、という思いは、そのポップアップによって、自分は自分のウェブサイトの行動情報を企業側に渡しており、例えばそれが他のメディア、アプリや広告などに使用されるのだ、ということを明確に自覚するようになったのです。

顧客が求めているのは、「ギブアンドテイク」

顧客が、自分のウェブサイトの行動情報を企業に提供していると自覚するようになると、今度は自分が渡した情報を、企業が有意義に活用してくれているのか気になり始めます。「私たちが提供したものに対して、企業は私たちに、何を返してくれるのだろう。」と。

実際に、 McKinsey & Companyが発表しているNext in Personalization 2021 Report注4の調査では、71%の消費者が、企業がパーソナライズされたコンテンツを提供することを期待しています。そして76%は、それが実現されないと不満さえ感じているというのです。この調査からも、顧客自身がパーソナライズを求めていると証明できます。「顧客データを収集する企業は、それを顧客体験に活かし、顧客により良い影響を与える責任がある」。これは、Adobe Summit 2022で、米国とカナダに2,000店舗を持つ、ベーカリーカフェを経営するパネラブレッドのCDO、George Hansonさんの言葉ですが、ビジネス上、どのような形であれ、みなさまも顧客の情報を取得する機会はあると思います。それを有効活用するのは、顧客に求められていることであり、この声に応えないということは、顧客満足度が上がらないということです。何より、顧客から情報を取得しておいて腐らせておくのは、企業の責任を果たしていない、と言えるのではないでしょうか。

パーソナライズは業績にも影響を与える

パーソナライズが企業の責任というと、非常に重い気持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、パーソナライズは、企業にとってもプラスに働きます。顧客にもらった情報を活用して顧客体験を改善する、つまり、顧客満足度が向上すれば、当然、業績にも連動します。先程のNext in Personalization 2021 Report注4の調査では、パーソナライゼーションに優れた企業は、平均的な企業よりも40%収益を上げているという調査結果が出ていました。パーソナライズは顧客満足度を向上させると同時に、業績も向上させる手段として、非常に有益である、ということになります。

このように、今やパーソナライズとは、顧客のデータを取得するその御返しとして、そのデータを有意義に活用して顧客体験に還元し、顧客満足度を向上させること、そして、その結果、収益をあげることができる手法となりました。これを自社のマーケティング活動に取り入れないという選択肢は、もはやないのではないでしょうか。もし、まだパーソナライズに着手できていない、という方がいらっしゃれば、ぜひ、これから一緒に検討していきましょう。