紙になる前は○○でした その1

前回のコラムでもお話したように、紙は「繊維」から作られます。よく原料として挙げられる木材などに限定されず、 繊維が取れるものなら何でも作れるのです。そこで、今回から2回にわけ原料についてお話しましょう。

優れモノ「植物繊維」

1回目は前回とりあげた優れモノの繊維を持つ「植物」をテーマにします。たとえば日本で昔から作られている和紙は 楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)という木の皮が原料とされ、東南アジアや中国では今でも竹で作る製紙工場があります。

野菜が紙になってたかも!?

「作る」ということだけ考えればキャベツなどの野菜や、アシなどの草からも紙は作れるのです。実際、木から繊維が 取れることが発見されるまで、原料はボロ布が主流で、深刻なボロ布不足に見舞われると草や野菜などさまざまなものが試されました。 ただし、出来上がった紙の風合いは、その原料により大きく異なります。一般に、繊維が長ければ強い紙、短ければ弱い紙になります。 また、幅が広いと密度は低く、表面が粗くなります。和紙の原料は繊維が非常に長く、幅が狭いため、とても丈夫でなめらかなものができます。

さまざまな材料

他にも面白い原料で、バナナの茎、麦わら、サトウキビの搾りカスなどがあります。珍しいものでは象の糞で作ったものもあります。象は繊維質の多いものをたくさん食べるので、糞は理想的な紙の原料になるんですね。本コラムにご協力いただいている「紙の博物館」に行くと実際に触ってみることができます。筆者も触ってみましたがゴワゴワしてちょっと分厚い感じで、それぞれに独特の風合いがあります。

非木材は、品質や収穫季節、取り扱い面などで多くの問題があり、効率的に大量の繊維が取れる木材が主流となっています。

さまざまな紙の原料

非木材繊維

主流原料「木材」

現在多く使われている木材は大きく分け「針葉樹」と「広葉樹」の2種類で、その特徴に合わせて用紙が作られます。針葉樹は、繊維が長く太いので丈夫な紙ができます。強度が求められる包装紙などに適しています。一方広葉樹は繊維が短いため、針葉樹ほどの強度はありませんが、表面がきめ細かくなり、漂白もしやすいため上質紙の原料として使われます。

 

<今回のポイント>

●繊維が含まれていれば、どんなものからでも紙が作れます

 
 

ペットボトルから紙!?

おまけコーナー

Q.ワラ半紙ってワラでできてるの?

 

A.昔はワラでした。

明治30年代までは洋紙の原料はワラとボロ布が主流でしたが、ワラは収穫の時期が限定され、保存も難しく、また無機質分が多いので機材にトラブルを起こしやすいなどの欠点がありました。また、繊維自体も細く短いために弱く、生産性が悪いので次第に姿を消し、現在のワラ半紙にはワラは一切使われていません。現在は、本来のワラ半紙の品質に近い下級印刷用紙などの「更紙(ざらがみ)」を「ワラ半紙」とよんでいます。

 

紙になる前は○○でした その2