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日本
医療AIの現在と未来

胸部X線画像診断や肺がんの腫瘍測定…
医療AIが有用性を発揮する具体的なケース

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

画像診断支援や新薬開発、手術支援など、「医療AI」は医療機器やソフトウェアに搭載され、様々な領域で活用され始めています。
実際の現場で医療AIが貢献した事例も続々と生まれ、医療AIの未導入施設や導入検討施設もその有用性を把握できるようになりました。
そこで今回は、医療AIの効用が際立つ具体的なケースを挙げ、併せて医療現場にもたらされるメリットを紹介します。

医療AIの活用が進む画像診断領域

人間の知能を模した機能を有する医療AIは、形式化されたルーチンワークのデータ処理や数あるデータから規則性を導き出し、求められる基準に沿った処理を得意としています。また、X線画像やCT画像などの医用画像データをもとに学習を重ねると、診断の正確性と判別速度が向上することが期待されています。画像診断領域では、実用性と発展性の観点から導入が進んでいます。

画像診断における医療AIが有用性を発揮するケースはいくつか挙げられます。ひとつは、胸部単純X線画像の検出シーンです。胸部単純X線検査は様々な胸部疾患の診療や健康診断で利用される一方で、血管、肺、心臓、横隔膜など注視が必要な要素の多いのが特徴です。血管部と重なり目視しにくい結節影などは、経験が豊富な読影医でなければ検出が難しい場合があり、情報量が多い検査のため心身の疲労から病変や異常領域を見落とすリスクもあります。画像診断を取り巻く課題に対し、医療AIは結節や腫瘤影、気胸、浸潤影といった画像所見の検出で有用性を発揮し、医師や読影医の画像診断をサポートしています。メーカーによっては、病変の候補エリアと異常領域の有無の可能性をカラーグラデーションで分かりやすく表示する医療AIソフトウェアが展開されています。

医師ごとの診断値の差異を軽減したい場合にも医療AIは効用をもたらしています。一例としては肺がんや肺結節の経過観察があり、同じ領域のサイズを測定しても医師によっては測定値に誤差が生じます。5mm前後の小さな肺がんの誤差は診断の誤りを招きかねません。胸部CT検査に導入された医療AIは、医師が指定した領域の性状分析を行い、サイズも自動で測定するため、医師間による測定値のばらつきを抑えることができます。

規則性のあるルーチンワークを得意とする医療AIの特徴は、肋骨骨折箇所の検出シーンで活かされています。医師が診断する際には、胸部CT画像に写る肋骨を目視で数えて骨折または骨折が疑われる箇所を確認してレポートにまとめます。診断は比較的容易ですが、肋骨を数える手間は医師の業務負担になっているのが実情です。現在、医療施設で導入されている医療AIには、胸部CT画像を解析し肋骨骨折箇所をマーキングするほか、骨番号をラベリングする機能が搭載されている機器・ソフトウェアもあり、検出だけでなく所見文作成の負担軽減にも寄与しています。

進歩を続けるなかでも未だ残る、医療AIの課題

医療業界への導入が進む医療AIには、有用性が期待できない領域も存在します。医療AIが画像診断の所見検出に貢献すると先述しましたが、現時点の技術では腹部領域では検出性能を発揮できていない状況です。腹部MRI検査では画像のわずかな濃淡を見極めることが求められますが、診断基準となる高精度な医用画像データが十分ではないため、腹部領域の医療AIは開発途上にあります。

また、胸部CT画像においても間質性肺疾患のケースでは、峰巣肺やすりガラスなどの認識するべき所見が多岐にわたり、所見ごとの特徴差が軽微なため、医療AIの検出性能をもってしても正確な識別が困難です。医療AIが形式化された処理を得意とする一方、複数フェーズの画像から総合的に分析・検出して正解を定義する業務は開発途上にあると言えます。

医療AIの開発には膨大な医用データと多額の資金が必要であり、希少疾患ではその必要量が一層引き上がります。医療現場のニーズに応えるためには、医療AIを手掛ける各メーカーの努力を後押しする、政府の支援にもとづく開発環境の整備が不可欠です。

医療AIがもたらす導入効果

医療施設は、高齢化にともなう患者の増加に加え、新型コロナウイルス感染症への対応に追われひっ迫した状況です。医師にはこれまで以上に多岐にわたる業務や配慮が求められるなか、画像診断領域の専門医は不足し、医師一人当たりの負担は増加しています。中長期的な視点では、医師の高齢化も進み、今後豊富な診断経験や高度な診療技術が求められる症例への対処を不安視する声もあります。

現在、医療業界が様々な課題に直面するなか、医療AIを導入した施設では着実に課題を解消し、医療現場が好転するケースも生まれています。高い集中力が求められる画像診断では、医療AIが所見検出などを支援することで医師の心身の負担が軽減され、医師の業務経験や専門領域を問わず安定した所見を出しやすくなったことで、施設としての診断レベルが均質化されます。医療AIはあくまで診断を支援する存在ではありますが、膨大な医用データにもとづく客観的な分析結果は、医師の所見の安定化を支える大事な情報として扱われています。

現代医療における医療AIは医師を支援する役割で活用されています。依然として課題は多いですが、それは発展の余地が大いに残されていることを意味します。長年にわたりメーカー各社が研究開発に励んできた成果は、近い将来新たな医療AIとして形になり、医療の“質”と“効率性”を飛躍的に高める可能性を秘めているのです。

現時点で有用性を発揮している医療AIですが、医療施設ごとに事情や状況が異なるため、導入前には一度利用することが重要です。AIを搭載する医療機器のトライアルとして初期投資を抑えられるクラウドサービスなどのデモンストレーションを通じて医療AIの有用性とこれからの可能性を検討してみてはいかがでしょうか?

【企画・編集 株式会社 広瀬企画/2023年7月公開】