このコンテンツは獣医療従事者向けの内容です。
動物病院の求人・採用において、自院のWEBサイトや求人媒体、学校への求人資料発送などが重要であることは、これまでのコラムでもお伝えしてきました。近年はそれらに加えて、「InstagramやLINEなどのSNS等を求人に活用した方がよいのか」というご相談を受けることが増えています。
昨今は大企業などでも採用活動にSNSを活用することは珍しくありませんし、Instagramなど閲覧していて企業や店舗の求人情報を見かけたことがある方も少なくないでしょう。一方でSNSの活用と聞くと「毎日投稿しなければならないのではないか」「動画を作るのが大変ではないか」「炎上したらどうしよう」と不安に感じる院長先生も多いと思います。今回は、動物病院の求人におけるSNS等の活用のポイントと注意点についてお伝えします。
「求職者から選ばれる動物病院になるための求人用WEBサイト制作」のコラムで、WEBサイトで発信する求人情報は求人活動における「名刺」のようなものだと述べましたが、SNSはその「名刺」をより補強し拡散させるための媒体だと考えるとわかりやすいでしょう。
求職者は「どんなスタッフが働いているのか」「新人教育はどのように行われるのか」「院長先生はどんな考え方をしているのか」「スタッフ同士の雰囲気は良さそうか」といった情報を知りたいと考えています。これらの情報は、求人票の文字情報だけではなかなか伝わりません。SNSでスタッフの表情、院内の様子、勉強会の風景、実習生への説明風景などを発信することで、求職者は「この病院で働く自分」をイメージしやすくなります。またSNSというチャネルが増えることで、自院の求人情報が求職者に届く可能性をより大きくすることができます。
SNS等を求人に活用する際には、それぞれの特徴を理解し、役割を分けて考えることが大切です。
- LINE
まずLINEは一般的にはSNSと分類されることも多いですが、メールと同じような「メッセージツール」として考えるといいでしょう。学校説明会、実習、病院見学、採用サイトなどでLINE公式アカウントのQRコードを案内して登録してもらうことで、見学日程の案内、実習受付、採用説明会のお知らせなどを届けやすくなり、一度接点を持った求職者と継続的につながるためのツールとして有効です。ただし、個人のLINEでやり取りをすると、対応漏れやプライバシー面の問題が生じやすくなります。できれば病院として管理する公式アカウントや専用窓口を使い、返信時間や対応者を決めて対応するのがよいでしょう。
- Instagram、TikTok、Facebook
Instagram、TikTok、Facebookは、写真や短い動画を通じて病院の雰囲気を伝えるのに向いています。スタッフ紹介、院内勉強会、休憩室やスタッフルームの紹介、実習生受け入れ時の流れ、1日の業務の一場面などは、求職者にとって大いに参考になる情報です。中でもInstagramは利用者も多く、ストーリーズやハイライトを使って「採用情報」「実習について」「スタッフ紹介」「よくある質問」などを整理しておくと、初めてアカウントを訪れた人にも伝わりやすくなるためお勧めです(TikTok、Facebookは余裕があればで構いません)。
- YouTube
YouTubeは、院長インタビュー、スタッフインタビュー、病院見学動画、1日の仕事の流れ、教育体制の説明など、まとまった情報を動画で伝えるのに向いています。毎日更新する必要はありません。「動画は資産」という言葉もあるくらいで、一度作成しておけば、採用サイトに掲載したり、求人資料にQRコードを載せたり、LINEやInstagramから誘導したりと、長く活用できます。
- X(旧Twitter)
Xは、短い文章でリアルタイムに情報を発信しやすい媒体です。文章制限があるため、X単体でまとまった情報を伝えるというよりは、採用説明会や見学会のお知らせ、実習受け入れ開始の案内などに活用したり、病院のWEBサイトやInstagramなど他の媒体へのリンクなどに活用するといいでしょう。
もちろんこれらの媒体を全て活用することが必須というわけではなく、無理なく継続できることが大切です。優先度をつけるなら、LINE、Instagram、YouTubeあたりから始めてみるのがお勧めです。
媒体ごとの違いはありますが、求人において発信すべき内容は大きく変わりません。求職者が知りたいのは、医療機器や診療件数などのハード面だけではなく、人間関係、教育体制、働き方、病院の価値観などのソフト面です。
まず発信したいのは「病院の考え」です。院長先生がどのような診療を大切にしているのか、スタッフにどのように成長してほしいと考えているのか、チームとしてどんな病院を目指しているのか。こうした考え方は、求職者にとって重要な判断材料になります。
次に「人」です。どんな先輩がいるのか、入社後に誰から教わるのか、スタッフ同士はどのように関わっているのか。写真や動画でスタッフの表情が見えるだけでも、病院の印象は大きく変わります。
そして「日常」です。朝の準備、診察の合間のミーティング、検査、手術、勉強会、休憩時間など、病院にとっては当たり前の日常でも、求職者にとっては貴重な情報です。特別なイベントや派手な企画である必要はありません。普段の仕事を少しだけ切り取り、求職者に向けてわかりやすく説明することが大切です。
SNSを求人に活用する際に見落とされがちなのが「導線」です。
どれだけ良い投稿をしても、求職者が次に何をすればよいのかわからなければ、見学や応募にはつながりません。LINEのリッチメニュー、Instagramのプロフィール、YouTubeの概要欄、TikTokのプロフィール、Xの固定投稿、Facebookページの投稿や基本情報、などから、自院のWEBサイト、募集要項、見学申込フォーム、問い合わせフォームへ進めるようにしておきましょう。
SNSは雰囲気を伝える入口、採用サイトは詳しい情報を確認する場所、見学申込フォームは行動につなげる場所、というように役割を分けると運用しやすくなります。
また、SNSのフォロワー数や再生回数だけを追いかけすぎる必要はありません。求人における最終的な目的は、フォロワーを増やすことではなく、見学や実習、応募につなげることです。採用サイトへのアクセス数、見学申込数、問い合わせ数、実習後の応募率などを見ながら改善していきましょう。
求人にSNSを活用するうえで、最も注意すべきなのは情報管理です。
スタッフの写真や動画を掲載する場合は、必ず本人の同意を得ましょう。退職後の写真の取り扱いについても、あらかじめルールを決めておくと安心です。飼い主さまや動物が映る場合も注意が必要です。飼い主さまの個人情報やカルテの情報などが映り込むことは避けなければなりません。動物の写真であっても、飼い主さまが見れば自分の動物だとわかる可能性がありますので、掲載する場合は事前に許可を得ることをお勧めします。
また病院として、SNSを運用する体制や担当者を決め、投稿してよい内容、撮影してよい場所、コメントに対する対応、写真の確認フロー、アカウントのパスワード管理など、最低限のルールを定めておくことが大切です。昨今はSNSを通じて機密情報がWEB上に拡散されてしまったり、個人のアカウントと企業のアカウントを誤認して投稿してしまったり、という事象がたびたびニュースにもなっています。よかれと思って運用しているSNSがかえってトラブルを招いたり、飼い主さまや求職者の不信感につながるようなことがないよう、気を付けて運用しましょう。
SNSの活用において大切なのは、無理なく続けられる頻度で継続し、情報を求めている求職者に情報が届く状態を維持することです。すべての媒体を一度に始める必要もなく、見学者や実習生と継続的につながりたいならLINE、写真や雰囲気を伝えたいならInstagram、まとまった動画で病院紹介をしたいならYouTube、といったように、自院の採用ターゲットや運用体制に合わせて選ぶことが大切です。またWEB制作などにも言えることですが、成功への近道は「良い物を真似ること」です。すでにSNSを活用している動物病院も増えてきましたので、魅力的だな、上手だなと思える手法などを自院のSNS活用に取り入れてみるのもよいでしょう。
SNSは、それだけで求人活動のすべてを解決してくれる魔法のツールではありません。しかし、求職者に病院の雰囲気を伝え、不安を減らし、見学や応募への一歩を後押しするための有効な手段にはなり得ます。求人・採用は、動物病院経営における継続的なミッションです。WEBサイト、求人媒体、学校への情報提供などと組み合わせながら、自院に合った形でSNS等を無理なく活用していきましょう。
【2026年10月/文責:動物病院経営パートナーEn-Jin 代表取締役 古屋敷 純】



