3Dデータ統合管理技術

デジタルモノづくりの変革をもたらす3Dデータ基盤を構築

従来のモノづくり工程では、各工程で生成されたデータや判断に至った経緯や結果など、さまざまな派生データが工程ごとに管理されています。そのため、工程間でデータを参照・活用することが難しく、ノウハウが共有されづらいため、下流工程で手戻りが発生するなどの課題がありました。
富士フイルムビジネスイノベーションでは、3DCADで設計したデータ以外に立体物の内部構造・色・材料・接合強度など3次元の複雑な情報を保持できる3Dプリント用データフォーマット「FAV」注1を活用する研究を進めています。さまざまな業種の社外メンバーと共に「FAV」の実用化を進めるための議論を実施し、3Dプリント以外の様々な3Dデータの情報を統合的に扱いたいというニーズに対応するため、「FAV」バージョン1.1aの仕様拡張を実現しました。さらに、この仕様を活用し、モノづくり工程における3Dデータの一元管理を可能にする3Dデータ基盤を構築しました(図1)。
このたび 「FAV」による3Dプリンター活用への期待と、活用範囲が広がることなどが評価され「FAV」が汎用3DデータフォーマットとしてJISに制定されました注2。多くの製造業においてモノづくりに「FAV」の利用が広がり、より効率的な生産プロセスの確立および普及することが期待されます。

【図1:FAVデータを用いてモノづくり工程の情報を一元管理した例】

多様な3Dデータを統合して工程間で見える化することで、意思決定を迅速化・問題を未然防止

モノづくりの各工程で発生する、シミュレーション結果のデータ(CSV)や測定結果データ(点群)など、解像度やフォーマットが異なるデータを、「FAV」形式でボクセルの属性として登録できます。ボクセルデータ処理では、データ量が巨大な点や、曲面・角などの特徴的な形状の再現性が低下することが課題とされてきました が、富士フイルムビジネスイノベーションが培ってきた画像処理技術の応用により、形状精度を維持したまま、処理時間を1/100~1/1000に短縮しました。これにより、従来は工程ごとに管理されていた製造前のシミュレーション情報や、製造装置設定データ、製造後の測定結果データなどを精度よく1つのデータ上に統合し、工程間で効率的に共有しながら活用することが可能です。
FAVデータを製品ごとに作成し、データベースを構築することで、過去の類似データを検索できます。FAVデータに一元管理されている製造装置設定データや測定データを、事前に参照することができるため、製造工程での問題を未然に防ぐことが可能になります。

【図2:多様な3Dデータが統合されたFAVデータを検索して活用した例】

また、設計意図や、製造上の制約、公差の実力値など、これまでは各工程に分散していた情報が他の工程から見えるようになることで、意思決定の迅速化や手戻り防止による生産性の向上が期待できます。さらに、大量の「FAV」仕様のデータをビッグデータとしてAI(人工知能)で活用することで、これまで言語化が難しかった技術者のノウハウをデータ分析結果として表現するといった新たなコミュニケーション手段としての活用も見込まれます。

  • 注1 FAbricatable Voxelの略。立体物に関する様々な情報を保持した基本構成単位(ボクセル)を積み上げることで立体物全体を表現する。JISに制定された仕様は1.1a。
  • 注2 規格番号:B9442,「3Dモデル用FAVフォーマットの仕様」