3Dデータフォーマット「FAV(ファブ)」

近年、3Dプリンターの技術が急速に進化しています。立体物の複雑な内部構造を再現でき、フルカラーでの表現や異なる材料を組み合わせて造形できる3Dプリンターも登場しています。

複雑な情報を保持する世界初注1の3Dデータフォーマット「FAV」を慶應義塾大学と共同で研究、仕様を公開

従来の3Dプリント用のデータフォーマットは、内部構造の記述ができないことや、カラー情報や造形に用いる材料情報を保持できないなどの課題がありました。さらに、データ変換作業などの煩雑な中間処理や、データ処理の過程で壊れたデータを修復する作業など、多くの工程を必要としていました。
富士フイルムビジネスイノベーションは、ボクセル注2ベースのデータフォーマット「FAV」注3を慶應義塾大学SFC研究所と共同で研究しました。複雑な内部構造や属性を自由にモデリングし、管理することが可能なため、3Dプリンターで高い表現力を実現することが可能になります。さらに、3Dデータフロー上でデータ変換などの煩雑な処理を行う必要がなく、3Dデータの入力・作成から出力まで一貫したワークフローを実現できます。
3Dデータフォーマット「FAV」は、オープンフォーマットとして仕様を公開しています。お客様との実用化に向けた取り組みから得られた要望を反映し、2019年にはバージョン1.1aがJIS規格として制定されました注4

3Dデータフォーマット「FAV1.1a」の仕様書を公開 [PDF:3.55MB]

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立体物の複雑な属性分布や内部構造をデザインでき、3Dプリンターでの高い表現力を実現

「FAV」は、3次元的な画素値であるボクセルを立体的に配置することで3Dデータを表現しています(図1)。各ボクセルには、RGBや透明度などの色情報、ABS樹脂やナイロンなどの材料情報、硬さや柔らかさなどの物性情報など、様々な属性を定義できます。また、お互いの接続強度など、ボクセル同士の関係性を管理することができます。複数材料の分布を自由にデザインできるだけでなく、単一材料の立体物においても、内部構造のデザインや製造装置の設定を細かく制御でき、立体物をより表現力高く出力することが可能になりました(図2)。

ボクセルを立体的に配置したイメージ図【図1:ボクセルを立体的に配置したイメージ図】

内部構造、色情報、材料情報を保持【図2:内部構造、色情報、材料情報を保持】

ボクセルデータのままシミュレーションが可能、その結果を簡単に3Dデータへ反映

さらに、ボクセルデータのまま各種シミュレーションを行い、その結果を立体物の設計に簡単に反映させることが可能です。例えば、外力による変形などの構造解析の結果を反映して、歪の大きい部分の材料変更や構造変更などを容易に行うことができます(図3)。
また、ボクセルごとに管理されるお互いの接続強度などの属性を利用して、望みの強度を得るためのデザイン変更や3Dプリンターの造形ルート・充填率の最適化が可能となります。

ボクセルデータによるシミュレーション結果とデータ反映の例【図3:ボクセルデータによるシミュレーション結果とデータ反映の例】

FAVを使って多様な情報を管理し、設計や造形プロセスに活用

バージョン1.1aでは、よりFAVの拡張性が高まりました。例えば、1ボクセルの中身を細分化して定義できるようになりました。これにより、立体物を全体として大まかに処理するか、立体物の一部を詳細に処理するかを、用途によって使い分けることができ、注意が必要な領域のみ厳密に解析することも可能になりました。
また、各ボクセルに対して、ユーザーが任意の情報を属性として登録できるようになりました。使用時にかかる圧力、水への溶けやすさ、製造時に使用した装置の設定情報など、多様な情報をFAVで管理し、設計や造形プロセスに活用できます(図4)。

ボクセルデータによるシミュレーション結果とデータ反映の例【図4:ユーザー定義属性を活用した設計・造形プロセスの例】

  • 注1 3Dモデルの表面だけでなく、内部構造・色・材料・接合強度情報を、全て保持した3Dデータフォーマットとして。
  • 注2 3次元的な画素値。2次元的な画素値であるピクセルで画像を表現するように、3次元的な画素値であるボクセルで物体を表現する。
  • 注3 FAbricatable Voxelの略:富士フイルムビジネスイノベーションと慶應義塾大学が共同で提案するボクセルベースの新しいデータフォーマット
  • 注4 規格番号:B9442,「3Dモデル用FAVフォーマットの仕様」
  • 注記1 本研究は、慶應大学が中核拠点となっている文部科学省COI(Center Of Innovation)「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」の成果でもあり、今後、だれでも簡単に3Dプリンターを活用したものづくりができる社会を目指します。
  • 注記2 内容は2019年11月時点の情報です。