2025.12.12
MDMとは?主な機能なメリット・注意点から製品の選び方まで解説
テレワークやモバイルワークが普及している昨今、企業ではスマートフォンやタブレットなどの業務用端末を安全に管理することが求められています。
そこで活用されているのが、MDM(Mobile Device Management)です。MDMは、企業が保有しているすべての端末を一元的に管理することで、情報漏えいの防止・業務効率の向上・セキュリティ一の一元管理を実現できます。
本記事では、MDMの基本的な仕組みや主な機能、導入によるメリット・注意点、製品選びのポイントまで解説します。自社のセキュリティ一体制を見直したい企業担当者は、ぜひ参考にしてください。
MDM(モバイルデバイス管理)とは?
MDMとは、企業や組織が従業員の業務用スマートフォン・タブレット・パソコンなどのモバイル端末を、一元的に管理するためのシステムです。
MDMを導入することで、管理者は各端末の利用状況を把握したり、リモートでの設定変更やセキュリティ一対策が容易になります。
MDMの意味や役割
MDMの主な役割は、モバイルデバイスを活用するうえで、組織全体における「セキュリティ一の向上」と「運用効率化」の2つを実現することです。
たとえば、従業員が業務用スマートフォンを紛失・盗難した場合に遠隔操作で端末をロックしたり、内部データを完全に削除(リモートワイプ)したりできます。これにより、企業の重要情報が外部に漏えいするリスクを未然に防げます。
さらに、新しい端末の初期設定や業務用アプリの配布、OSのアップデートなども全端末一括で実行可能です。その結果、IT部門の管理負担を軽減し、運用コストの削減と業務効率の向上につながります。
ビジネスにおいてMDMが注目される背景
MDMが注目される背景には、テレワークやリモートワークの普及によって、オフィス外で業務を行う機会が増えたことが挙げられます。
従来はオフィス内で作業するのが一般的でしたが、現在では従業員の自宅やカフェなど、企業の管理が及ばない環境で端末を利用するケースが増えています。
とくに、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を業務で活用する機会が増えたことが、管理が複雑化した原因です。企業が管理すべき端末の種類と台数が急増し、紛失・盗難・不正アクセス・サイバー攻撃といったリスクも高まっています。
こうした背景から、端末を一元管理できるMDMの導入が重要視されるようになりました。
MDMの2種類の方式
MDMがモバイルデバイスと通信する際の代表的な2つの方式について紹介します。
- ポーリング方式
- プッシュ方式
それぞれの特徴を押さえておきましょう。
ポーリング方式
ポーリング方式とは、管理対象の端末が定期的にMDMサーバーへ接続し、新しい指示や設定変更があるかを確認する通信方式のことです。
端末は15分ごとや1時間ごとなど、設定された間隔でサーバーにアクセスし、ポリシー更新やアプリ配信の指示を受け取ります。
ポーリング方式は、複雑なネットワーク設定が不要なため、導入しやすいのがメリットです。一方で、定期的に通信を行うため、バッテリー消費が大きくなります。
リアルタイム性よりもシンプルな運用体制を重視する場合や、ネットワーク環境が不安定な環境での運用に適しています。
プッシュ方式
プッシュ方式とは、MDMサーバー側から端末に対して、必要に応じて指示や通知を送信できる通信方式です。主にSMSや各OSのプッシュ通知サービスを通じて、サーバーから端末へ情報を送ります。
必要なときにのみ通信を行うため、ポーリング方式と比べてバッテリー消費を抑えられるのがメリットです。一方で、機内モード中やSIMカードが抜かれているなど、端末がネットワークに接続されていない場合は通知が届かない点に注意が必要です。
セキュリティーを重視し、緊急時に迅速な対応が求められる企業に適しています。
MDMの主な機能
ここでは、MDMの主要な機能について3つご紹介します。
- 端末情報や利用状況の一括監視ができる
- 紛失・盗難時の情報漏えいを防止できる
- 端末の一括設定や不要な機能の制限ができる
どのような機能があるのか、知っておくと便利です。
端末情報や利用状況の一括監視ができる
MDMを導入すると、管理下にあるすべてのモバイルデバイスの情報を一元的に可視化できます。
企業が数十台から数百台の端末を管理する場合、各デバイスの状態を個別に確認するのは非効率です。MDMを活用すれば、ハードウェア情報(機種名・シリアル番号)やOSバージョン、インストール済みアプリ、ストレージ使用量などを自動で収集できます。
これらの情報は管理コンソールのダッシュボード上に一覧表示されるため、IT担当者は複数端末をまとめて把握・管理しやすくなります。
紛失・盗難時の情報漏えいを防止できる
MDMには、端末の紛失や盗難時に役立つセキュリティ一機能が備わっている場合があります。
たとえば、リモートロック(遠隔で端末をロック)やリモートワイプ(遠隔でデータを消去)、端末の位置情報追跡などが代表的な機能です。これらを活用することで、万が一従業員が端末を紛失しても、企業の重要データが外部に漏えいするリスクを抑えられます。
ただし、これらの機能は端末がネットワークに接続されている場合のみ有効です。盗難時に端末が機内モードに設定されたり、SIMカードを抜かれたりした場合は、機能が一時的に使えなくなります。
ただ、ほとんどの製品では、再びネットワークが有効になった際にリモートロックやリモートワイプが実行されるため、情報漏えいのリスクは極小化できます。
端末の一括設定や不要な機能の制限ができる
MDMを導入すると、端末情報の確認だけでなく、ネットワーク設定や機能制限も一括で管理できます。Wi-FiやVPNなどのネットワーク設定を、遠隔からまとめて適用可能です。
さらに、USB接続・Bluetooth・外部ストレージの利用を制限することで、意図しないデータの漏えい防止にもつながります。
ただし、端末の機能を制限する際は、セキュリティ一対策と業務の利便性のバランスを考慮することが重要です。過度な制限をかけると、かえって業務効率の低下や従業員の負担増につながるおそれがあります。
アプリケーションの一斉配布や管理ができる
MDMを活用すると、業務に必要なアプリケーションを遠隔操作で全端末に一斉インストール・配布できます。
従来は、新入社員の端末や新規導入デバイスに業務アプリをインストールする際、IT担当者が一台ずつ手作業でアプリストアからダウンロードし設定する必要がありました。
端末の数が増えるほど膨大な時間と労力がかかり、設定漏れやミスが発生しやすいという課題があります。
MDMであれば、管理コンソール上で対象アプリと配布先を選択するだけで、自動的にインストールが完了します。これにより、アプリ管理の効率化と運用ミスの防止が可能です。
MDMを活用するメリット3選
ここでは、MDMを導入することで企業が得られる具体的なメリットについて、以下の3つを紹介します。
- 端末の管理を効率化できる
- 盗難・紛失時の情報漏えいを対策できる
- 端末の私的利用を防げる
①端末の管理を効率化できる
MDMのメリットは、端末を一元的に管理できることです。アプリの配布やアップデート、OSバージョンの管理などを遠隔で効率的に行えます。
とくに、従業員数が多い企業や今後の増員を見込む企業では、すべての端末を手作業で設定するリソースを確保するのは困難です。人の手で作業する分、設定ミスや対応漏れが発生するリスクも高まります。
MDMで端末を一括管理できるようになれば、管理工数の削減だけでなく、社内の端末利用ルールの標準化・統一にもつながります。
②盗難・紛失時の情報漏えいを対策できる
万が一、従業員が業務用端末を盗難・紛失した場合でも、MDMを活用すれば企業の重要データを保護できます。
端末内には、顧客情報・技術情報・財務情報などの機密データが保存されていることも多く、第三者の手に渡れば企業の信用失墜や金銭的損害につながるおそれがあります。
MDMには、リモートロックやリモートワイプといった機能が備わっており、情報漏えいの防止が可能です。
MDMを活用して重要なデータを守りつつ、従業員には紛失時の迅速な報告体制を周知することが重要です。
③端末の私的利用を防げる
MDMを活用することで、業務時間中の不適切なアプリ利用やWebサイトへのアクセスを制限し、端末の私的利用を防止可能です。
会社支給の端末を従業員が私的に使用すると、業務時間中のゲーム・SNS・動画視聴などによって生産性が低下するおそれがあります。また、私的利用によって大量のデータ通信が発生し、通信コストの増加や業務用通信の帯域圧迫を招くケースもあります。
MDMでは、不要なアプリのインストールを制限したり、URLフィルタリング機能で不適切なWebサイトへのアクセスをブロックしたりすることが可能です。これにより、業務端末の不正利用を防ぎながら、安全かつ効率的に運用できます。
MDMを活用する際の注意点3つ
ここでは、MDMを導入する際に企業が認識しておくべき注意点について、3つ紹介します。
- 導入コストがかかる
- シャドーITのリスクがある
- 運用における専門的知識が必要
①導入コストがかかる
MDMを導入する際は、費用・コストがかかる点に注意が必要です。
ソフトウェアのライセンス費用や初期設定費用に加え、運用・保守などの継続的な管理コストも発生します。そのため、導入を検討する際は事前に見積りを取得し、総コストを把握しておくことが重要です。
MDMの導入コストは、クラウド型かオンプレミス型かによって異なります。クラウド型は初期投資を抑えられ、デバイス単位またはユーザー単位の月額料金制で利用できるため、中小企業でも導入しやすいモデルです。
一方、オンプレミス型は自社でサーバーやインフラを構築・維持する必要があるため、高額な初期費用や専門的なIT人材の確保が求められます。
②シャドーITのリスクがある
MDMで端末の利用を過度に制限しすぎると、従業員の不満を招き、結果的に「シャドーIT」を誘発するリスクがあります。シャドーITとは、IT部門が承認していないツールやクラウドサービスを、従業員が独自に業務へ利用する行為のことです。
シャドーITを防ぐには、なぜ制限が必要なのかを従業員に丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。技術的な対策だけでなく、運用ルールとコミュニケーションの両面から対策を講じることが、シャドーITの防止につながります。
③運用における専門的知識が必要
MDMを効果的に運用するには、専門的な知識と継続的な管理体制が求められます。導入後は、従業員への使い方の説明や、セキュリティ一対策の重要性を社内に浸透させる取り組みが必要です。
また、運用開始後もトラブル発生時の対応・バージョンアップへの対応・セキュリティ一ポリシーの策定と見直しなど、定期的な管理業務が発生します。
MDM専任の担当者を設置するのが理想的ですが、中小企業では難しいケースも少なくありません。
そのため、MDMの導入を検討する際は、初期費用だけでなく運用にかかるコストや人員体制まで含めて判断することが重要です。
MDM製品の選び方のポイント
ここでは、自社に最適なMDM製品を選定するための具体的なポイントについて紹介します。
- 必要な機能が搭載されているかどうかチェックする
- 対応するOSやデバイスを確認する
- 「オンプレミス型」と「クラウド(SaaS)型」から選択する
必要な機能が搭載されているかどうかチェックする
MDM製品を選定する際は、自社の業務に必要な機能が搭載されているかどうかを確認してください。
MDMには多様な製品があり、提供される機能や操作性はそれぞれ異なります。必要な機能が不足している製品を選んでしまうと、導入後に追加ツールの導入や運用の見直しが必要になる可能性があります。
選定時は、機能を「必須機能」「重要機能」「あれば望ましい機能」の3段階に分類し、優先順位を明確化することが大切です。
また、候補となるMDM製品を2〜3社に絞り込み、トライアル期間などで実際の使用感や管理画面の操作性を確認しながら導入を検討することをおすすめします。
対応するOSやデバイスを確認する
MDM製品を選定する際は、自社で利用しているOSやデバイス、今後導入予定のプラットフォームに対応しているかも確認するポイントです。
現在、iOS・Android・Windows・macOSなど、複数のOSが混在しています。特定のOSに特化したMDM製品を選ぶと、将来的に他のプラットフォームを導入する際、別のMDMを追加導入しなければならない可能性があります。
そのため、まずは自社で利用しているデバイスやOSの種類を正確に棚卸しし、対応できるMDM製品を選ぶことが重要です。
「オンプレミス型」と「クラウド(SaaS)型」から選択する
MDM製品には、「オンプレミス型」と「クラウド型」の2種類があります。
オンプレミス型は、自社内にサーバーを構築してデータを管理する方式です。自社環境で運用するためセキュリティ一性が高く、カスタマイズの自由度にも優れているのが特徴です。
ただし、初期費用が高額になりやすく、24時間365日の運用・保守や障害対応を担う専門的なIT人材の確保が必要になります。
一方、クラウド型はインターネット経由でシステムを利用する方式です。初期費用が低く、月額制で利用できるため導入のハードルが低いのがメリットです。
また、自社でサーバーを管理する必要がないため、中小企業でも手軽に導入・運用できます。
企業の規模や予算などに応じて、自社に適した製品を選んでください。
まとめ
MDMは、企業が保有するスマートフォンやタブレットを一元管理するシステムです。
端末の紛失・盗難時には、リモートロックやデータ消去で不正利用・情報漏えいを防げます。アプリの一斉配布や利用状況の監視により、管理工数を削減できるのもメリットです。
導入を検討する際には、自社に必要な機能があるか、OS・デバイスに対応しているかどうかをチェックします。
モバイルデバイス管理の効率化とセキュリティーを高めるために、ぜひMDMの導入をご検討ください。
また、MDM製品の導入に不安・疑問のある方は、ぜひ富士フイルムビジネスイノベーションまで、お気軽にお問い合わせください。