コラム

デジタル広告配信におけるWEB解析の重要性

株式会社ベリースパイス 様

株式会社ベリースパイス 工藤 英資氏

代表取締役 戦略クリエイティブ

プロフィール

(株)東急エージェンシーで、マーケティング、営業、経営政策、クロスメディアプランニング、クリエイティブ、コミュニケーションデザイン、事業開発などを歴任。
2018年に独立し戦略クリエイティブブティック(株)ベリースパイスを始動。
多岐にわたるクライアントのブランディング、事業開発、ダイレクトマーケティング、商品開発、コミュニケーションデザイン、人材育成など、幅広い領域をサポートしている。

視点デジタル広告配信におけるWEB解析の重要性

目的と戦略がしっかりしていることが、良い広告のための条件

広告は目的か手段かといえば、手段です。より多くの人にブランドの存在やメッセージを伝えることであったり、特定のターゲットをWEBサイトに誘導することであったり、一人でも多くのお客さまに良い買い物体験をしてもらうためであったり、何かを達成するための打ち手です。

当然、目的が違えば手段は違います。とはいえ目的が定まれば即、広告で何をするかが決まるわけではなく、高い成果をあげるなら、目的は戦略に落とし込まれ、戦略に則って広告が役割を果たすべく適正なプランニングがなされるということになります。

戦略は目的を達成するためのシナリオです。ターゲットを設定し、ターゲットに喜ばれるブランドの価値を定義し、カスタマージャーニーを描くことが主な戦略立案です。そして広告はターゲットに価値を効率良く伝達し期待する行動を促進するものです。

例えば、現在とある大学のコミュニケーションをお手伝いしていますが、新設学部ならより多くの受験生と保護者に新設学部の魅力を知ってもらいたいのでリーチ重視の広告を展開しますし、既存の学部なら他の大学と比較検討してもらうために絞り込んだターゲットに対して他にはない強みを伝えられる広告を企画します。

戦略を立てるには、お客さまを知ること

お客さまは千差万別なので、どんなに良い商品でもお客さまを理解して、お客さまの求める情報に昇華させないといけません。自社の強みや特徴を一方的に伝えても情報が溢れている現代においてはスルーされてしまいます。そこで戦略立案においては、お客さまを知ることが第一歩です。

お客さまを知る方法として、WEBサイト解析はとても重要です。例えば、オンラインではなく実店舗で考えてみるとわかりやすいと思うのですが、例えばあるスーパーマーケットにおいて、お客さまが店内をどういう導線で巡っているのか、どの売り場に長時間滞在するのか、精肉売り場に行った人は調味料売り場に寄るとか、そういうことがわかるとチラシの内容や販促プロモーションの立て方が大きく変わるのはご想像できると思います。

WEBサイトも同様に1つの店内だと思って、お客さまにはどんなタイプがいて、タイプごとにどんなサイト内行動をしているのかは、戦略を立案する上で大きな情報です。

広告をプランニングする側としては、販売の現場を知らずにプランニングするよりも、オンラインにおける販売の現場であるWEBサイトでのデータがあって、情報を共有しながら企画できるとより良いプランになります。

実店舗でもWEBサイトでも戦略立案において顧客分析は重要

例えば、先ほどの大学のコミュニケーションの場合。新しい学部が出来たとして、まずは多くの人に知ってもらうために、志望大学を探している人から、百人の資料請求を取るより、1万人のサイト閲覧者を獲得しようといった戦略を立てます。そうすると、広告をプランニングする際には、クライアントやWEB解析担当者の方に、まずWEBサイトとしてどういう魅力を打ち出しているのか、どのコンテンツが良く見られているのかどういうことに興味関心を持っている人に合う学部なのかなどをヒアリングします。それなら今回はなるべくたくさんの人に目に付いて、なおかつこんなことに興味関心のある層にサイト来訪してもらえるように、例えばGDN(Googleディスプレイネットワーク)のディスプレイ広告で、こういうターゲティングでこんなクリエイティブで効率良くサイト誘導をしましょうといった提案になります。

もし、逆に既存の学部で、絞り込んだターゲットからのコンバージョンが大事だということになれば、誘導効率を落としてでもコンバージョンを取るメディアとしてリスティングやリターゲティングも選択し、シャープなクリエイティブを開発します。

お客さまを知る方法として、WEBサイト分析は不可欠

基本的にマーケティング活動はブランドや商品ごとに、オーダーメイドするものです。当然戦略もその先の広告コミュニケーションもオーダーメイドです。

戦略にしても広告にしても、例えばサイト内の回遊の状況であったり、あるターゲットはこういうコンテンツを見ているとか、そういうフィードバックがあれば、最初に作っていたコピーやデザインが、全然違う視点によって劇的に変わることもあります。

また、一見良いと思っていた広告が、WEBサイト解析によって違う見方になることもあります。

こんなことがありました。その大学の案件で、2種類のデザインのバナー広告を走らせたところ、WEBサイトへの誘導効率に結構差が付きました。そこで、効率の低いものは掲載を中止するか、あるいは費用配分を著しく下げるかを検討し、クライアントに「人気のバナーに寄せましょう」という話をしました。しかし、WEB解析データを見ると、その誘導効率の悪いデザインを見てサイトに来た人のコンバージョンが高いというフィードバックが来ました。

そこで、効率の悪いバナーの比率は、1対1とは言わないまでも、コンバージョンが1対1になる程度の費用配分にしようということになりました。もしWEBサイト解析が無ければ、広告配信側の判断で、より多くの人をサイト誘導できても、コンバージョンは下げてしまっていたかもしれません。

PDCAが、広告運用のエンジン

オンラインのコミュニケーションと、オフラインのコミュニケーションの違いに、PDCAサイクルのスピードがあります。特にテレビCMや印刷物を活用したコミュニケーションは高額の制作費で、制作期間も長いため、一度作ったら実施=Doも長くなります。もちろんオフラインにはオフラインの良さがあり、自身がテレビCMに携わる時は長期間ワークするよう乾坤一擲(けんこんいってき)で頑張りますが、オンラインはもっと安価で短期間で多くの企画が実施可能です。

オンラインの利点は、1つのWEBサイト誘導でも季節のテーマ別や、ターゲットセグメントごとなど、多くのメッセージを作れることです。レスポンシブディスプレイ広告なら複数のバナー画像と複数の広告文が同時に展開できるし、入れ替えも可能です。リスティング広告なら文章だけなので人手も制作時間もかけずに多数のクリエイティブ開発が可能です。

PDCAを高速でバンバン回すことで、広告はどんどんチューニング可能です。

そこで重要なのは、クライアント/WEBサイト解析/広告運用が、しっかり連携しながらこまめにPDCAを回していくことです。広告の計画立案が年に1~2回で、レビューも半年から年に1回になるよりも、毎月や毎週様々なデータを共有しながら、修正ポイントや新しい打ち手を検討することです。

たとえば、この時期はこのサイトのこのコンテンツに、こういう人たちが来るので、それをドライブさせるための広告を来週スタートさせましょうといったことができます。また、広告でこういう人が沢山来るので、WEBサイトを改訂してその人たちが喜ぶコンテンツを追加しましょうといった、サイトと広告の相乗効果も狙えます。

広告とWEB解析はセットで考えるべき

このように、WEB解析と広告が手を取り合ってPDCAサイクルを回していくことで、オンラインマーケティングは大きな効果が期待できます。

実は、高速PDCAを回す時に一番大変なのはクライアント担当者の場合が多いです。オンラインマーケティングの専門部署があったり、担当者が沢山いるような大手企業なら別かもしれませんが、多くの企業はオンラインマーケティングが別の業務との兼務であったり、しかも1~2人の少人数が時間を見つけてなんとか業務を廻しているなど、人的リソースに不足しています。忙しい上に、周囲がオンラインマーケティングを理解しておらず孤軍奮闘のうえ、疲弊しているクライアント担当者の方によくお会いします。

そこで、外部のWEB解析や広告運用を行うパートナー会社がいかにクライアントに伴走してサポートしながらコミュニケーションの精度をあげていけるかがカギになると思います。

クライアントがMAツールを導入しても使いこなせていなかったり、忙しくて分析に手が回らなかったりすることが多いことから、WEB解析と広告運用がセットになってPDCAをサポートしてあげる伴走型のビジネスモデルは、この先求められるビジネスモデルの1つだと思います。

編集後記

今回の記事はいかがでしたでしょうか。みなさまのデジタル広告施策やマーケティング施策のご参考になれば幸いです。デジタル広告を出稿しているけれど思うような反響を得られていない、広告と連携したWEBサイト解析や改善のPDCAがうまく回せていない、といったお悩みがあればぜひ富士フイルムビジネスイノベーションにご相談ください。ツール導入は不要、マーケターのみなさまに伴走しながらマーケティングDXをサポートさせていただきます。