「第64 回富士フイルムフォトコンテスト」に応募された計22,827点の作品の中から、岸 正美(きし まさみ)氏(長野)の『稲妻走るピンクの夕暮れ』を最高賞である「フジコン大賞」に決定しました。
フジコン大賞
『稲妻走るピンクの夕暮れ』 岸 正美
撮影した日は、大気が不安定な夕暮れ時で、空一面に乳房雲が広がり、オレンジからピンク、そしてグレーへとその表情を変えていきました。
不気味さと絵画のような美しさが同居する光景に、鋭い稲妻が走る瞬間も重なり、心を奪われて夢中でシャッターを切りました。
あの日、あの場所に居合わせたことを幸運に思っています。
こちらへ押し迫ってくるような雲はその形状だけを見ても珍しく、思わずシャッターを切りたくなる光景です。雲からは雷が2本、木の並びのちょうど低い位置に落ちていて、それが構図的にもピタッとはまり見事なバランスです。コントラストの効いた雷雲は夕方の微妙な色合いと混ざり合い、色彩的にも怪しげで幻想的な空気を醸し出しています。一瞬の光景を的確に写し取った技術とセンスが素晴らしいと感じました。
ネイチャーフォト部門審査員:高砂淳二
グランプリ
『思い出の1ページ』 髙橋 秀治
このたびは栄誉ある賞をいただききありがとうございました。
久々に家族で集まった夏休みに、せっかくなのでみんなで浴衣を着て楽しいひと時を過ごしました。その時、近所のおじさん、おばさんや友達と楽しく過ごした昔の懐かしい記憶がよみがえり、今日のこの日も未来へ繋ぐ良い思い出の1ページとして残したいと思い撮影をしました。
よい作品が生まれるきっかけを与えてくれ、また快く撮影に応じてくれた家族に感謝しています。
絵日記を見ているようなぬくもりを感じました。みんなで浴衣を着て、縁側に腰かけて、笑いながら花火をした夏休み。「この光景を写真に残したい」と思えるところに写真の原点を感じました。フォトコンテスト応募作品は、インパクトや決定的瞬間、緊張感などを描写する作品が多めですが、それとは真逆の、ゆるやかな時間の流れでほのぼのと癒やしを与えてくれるこの作品が心に響きました。
自由写真部門審査員:清水哲朗
『わが子』 増田 晋一
この写真は、倒木の上を危なげに歩く「わが子」を見守り、手を差し伸べるお母さんと、見つめ返す生後約3週間の赤ちゃんです。親子の絆と心の触れ合いを感じた瞬間です。
私はニホンザルの行動や表情に魅せられ、15年以上撮影を続けています。自然な姿を撮影するため、私が空気のような存在になるように、いつも苦労しています。
サルはどちらかというとその俊敏性や攻撃性から、時にはネガティブなイメージを持たれがちですが、本作からは純粋に子を思う親の気持ちが表現されています。わが子に触れるか触れないかという位置にある手の仕草や、子どもを見上げる親の表情から、深い繋がりと愛情が鮮明に伝わってきます。動物の持つ普遍的な親子愛を見事に引き出した、心に響く一枚です。
ネイチャーフォト部門審査員:高砂淳二
『とけあう瞬間』 森 夏鈴
偶然から生まれた、わたしだけの記憶です。
この作品を選んでいただけたことに、心から感謝しています。
多重露光をすることで、1枚目と2枚目が、2枚目と3枚目が……というように4枚が繋がっていく作品です。7枚にも8枚にも見えるような広がりを4枚で見せているところがとても面白いですね。写っているものをよく見ると、都市風景や撮影者が日常的に見ているものがストレートに写っている、また自分自身が鏡か何かにリフレクションで写っているなど、外の世界と自己投影が両方混ざっている感覚も、作品を見る楽しみとして限りない広がりを感じました。
組写真部門審査員:GOTO AKI
『安堵』 平川 貴史
たくさんの好きを撮りため、その中から一枚を選び、それを評価していただけて、多くの人に見ていただく機会も得ることができました。
この1枚をとおして、写真の醍醐味を存分に味わうことができたと思います。
寄り添うべき瞬間にカメラを構えたいというわがままを許してくれた家族に心から感謝を伝えたいと思います。
赤ちゃんが生まれて、お父さんが母子に対面した時のシーンですね。写真は撮りたくなる特別な瞬間があるものです。そしてこれは、この子にとっては一生に一度しかない瞬間ですよね。「安堵」というタイトルにも表れているように、奥さんにもしっかりピントが合っていて、ホッとしている表情や幸福感が伝わります。親密な人にしか撮れない特別な瞬間を切り取りつつ、日常のひとコマをストレートに押さえていて、とても素敵な一枚です。
アンダー39部門審査員:川島小鳥
『瞬く宇宙』村井 伶圭
私にとって学生最後の夏、「終わってしまう前に」と焦るような気持ちで、夜の公園で花火やシャボン玉をしました。
フラッシュに照らされたシャボン玉は、暗闇に浮かぶ小さな宇宙のように瞬いていました。
一瞬で消えてしまうシャボン玉が、とてもきらきらと鮮明に残る、一生の思い出になりました。
タイトルとビジュアルともに秀逸です。宇宙を意図的に表現しようとしたのではなく、日常の延長線上で生まれた一瞬を切り取り、それを宇宙に見立てるという撮影者の想像力が素晴らしいと感じました。まるで空気ごと撮っているかのようです。写真の魅力の一つに「こう撮ればこうなる」などという予定調和に収まらない点もありますが、まさに本作は、言葉で説明しにくい抽象的な魅力を秘めています。偶然の瞬間と、それを逃さずに切り取る撮影者の独特な視点が作品の持ち味となり、写真の奥深さを感じさせてくれます。
学生部門審査員:鵜川真由子
- * 掲載されている写真の転用は固くお断りします。













