近年、データの長期保管手段として、さまざまな業界で「テープを活用したストレージシステム」が注目され、導入が進んでいる。テープストレージはディスクメディアに比べ、「耐久性が高く長期保管性に優れる」「オフライン保管によりウイルス攻撃などのリスクを回避できる」「常時通電の必要がなくランニングコストを抑制できる」などのメリットがある。このテープストレージを印刷業界でいち早く採り入れたのが図書印刷だ。
具体的にどんなメリットが得られているのか。導入に至った経緯なども含め、技術開発本部 技術開発部 製造システムグループ 係長・井原 美奈子氏に伺った。(取材:2021年11月)
課題

図書印刷株式会社
技術開発本部 技術開発部
製造システムグループ 係長
井原 美奈子 氏
膨大な印刷制作物データはDVD-ROM100万枚分以上。
サーバー移行の場合10台以上となり、コスト面から断念
図書印刷では、年々増え続ける在版データ(過去印刷制作物の最終データ。これを流用し印刷物の再製造などに使う)を、より効率的、より安全に保管するための新たなシステムを数年前から検討し、コストパフォーマンス・安全性・拡張性に優れた「ディターニティ オンサイト アーカイブ」を選択した。導入前の状況について井原氏はこう振り返る。
「これまで、在版データはDVD-ROMなどのメディアに書き込み、専用の倉庫で保管していましたが、最近は1つのジョブあたりのデータ量が大きくなっていることもあり、メディアの枚数は増える一方でした。おそらく100万枚は超えていたと思います」
メディアが膨大な枚数に上っていたため、データの取り出しにも多くの時間や労力がかかっていたという。
「再製造(再版)の際には、使用するデータを保管倉庫から取り寄せ、印刷工場に渡すのですが、当然、倉庫では人がメディアを取り出して内容を確認し、工場に送るという物理的な作業が発生します。以前はそれが当たり前のことになっていましたが、近年、急速にネットワーク環境が発達してきている中、データの取り寄せもオンラインでできないかと考えたわけです」
新たなデータ保管方法については、7~8年前から検討を進めていたが、当時は、オンプレミス(自社導入)サーバーでの保管を考えていたという。しかし、すべての在版データを収めるには、10台以上のサーバーが必要となり、コスト的にもスペース的にも実現が難しかった。
「最近になって、ディスクの大容量化や書き込み速度の高速化も進み、サーバーへの移行も現実味を帯びてはきたのですが、5~6年ごとにディスクを更新しなければならないのがネックでした。そのたびにデータを新しいディスクにコピーするとなると、それだけで何カ月もかかってしまいます。その間にもデータの保管や引き出しは頻繁に発生するので、やはり現実的ではなく、サーバー保管は断念しました」

導入企業情報
図書印刷株式会社
●代表者 代表取締役社長 川田 和照 氏
●創業 1911年(明治44年)3月17日
●本社所在地 東京都北区東十条三丁目10番36号
●URL:https://www.tosho.co.jp/
●従業員数 1,276名(グループ合計1,602名)※2022年4月30日現在
創業以来、印刷のエキスパートとして情報産業の発展に寄与。ペーパーメディアで培った技術を軸に、「情報デザイン事業」(出版印刷分野・マーケティング分野)と「教育ソリューション事業」(出版事業・法人研修事業・留学事業)を展開している。