スマートシティでは、デジタル技術を活用した次世代型のバス停が注目されています。しかし、具体的にどのような機能があるのか、イメージが湧かないという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、スマートシティで活用されているバス停サイネージの役割や注目される背景、導入のメリットなどを紹介します。記事の後半では具体的な導入事例もまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
スマートシティとは、都市の運営にICT(情報通信技術)やAIなどの先端技術を取り入れることで、より持続可能で快適な環境を目指すための取り組みのこと。具体的には、都市インフラや交通などをデジタル化しデータを活用することで、まちの課題を解決しながら人々の暮らしやすさを高めていく考え方です。
スマートシティにおいて交通と情報インフラの一体化が進む中、次世代型のバス停ソリューションが注目されています。デジタルサイネージ上に時刻表やバス接近案内、路線図などを組み合わせ、利用者が必要な情報を一目でわかりやすく表示するシステムです。
サイネージ上に広告を表示させて収益化したり、災害発生時には緊急情報をリアルタイムで発信したりすることも可能です。また、外国人観光客に向けた多言語対応や、視覚障がい者向けの音声案内など、あらゆる利用者に使いやすい設計が進んでいます。
以下では、スマートシティにおいて、公共交通機関のなかでもバス停が注目されている背景を具体的に解説します。
- 行政DX・スマートシティ構想の推進
- 高齢化・過疎化の進行
- 多様化する利用者ニーズ
- 防災・減災対策の強化
行政DXやスマートシティ構想の推進において、ICTの技術やデータを活用して暮らしやすい地域をつくる取り組みが進められています。官民が連携しながら、都市や地域の運営を効率化し、新たな価値の創出を目指しています。
こうした動きのなか、バス停のデジタル化は重要なテーマのひとつとして位置づけられています。バス停がデジタル化されることにより、行政の業務負担を軽減しながら、公共サービスの質も高められるようになるためです。
高齢者が多く暮らす地域では、公共交通がライフラインとなっています。買い物や通院に必要な交通手段が減れば、外出そのものが困難になるでしょう。しかし、過疎化によってバスの本数が減ったり、路線そのものが廃止されたりする例も各地で見られているのが実情です。
バス停のデジタル化を行えば、遠隔からの情報更新や自動化が可能なため、人手が限られた地域でもバスを運用しやすくなります。
また、表示の文字サイズを大きくしたり、音声案内を追加したりすることで、高齢者が使いやすいバス停へと改善できます。日常的に目にする場所で自然にデジタルに触れられるようになれば、高齢者の新しい技術への抵抗感を少しずつ減らすきっかけにもなるでしょう。
多様化する利用者ニーズにともない、外国人観光客や高齢者、障がい者にも使いやすいバス停の実現が課題となっています。
バス停のデジタル化が進めば、多言語対応、音声案内など、あらゆる利用者に対して的確に情報を提供できます。
通常時には交通情報を案内するバス停ですが、デジタル化することで、防災時には地域住民の命を守るための情報拠点の役割を担うことが可能です。
サイネージを利用して、避難所情報や避難指示、交通機関の運休情報などをリアルタイムに発信できます。
スマートシティのなかで注目されるバス停には、従来のものとは異なる特長があります。ここでは、特に重要となる2つのポイントを紹介します。
- デジタルサイネージで情報をリアルタイムに配信
- 多言語・ユニバーサルデザインに対応
スマートシティで活用されているバス停では、デジタルサイネージを活用し、リアルタイムで情報を配信する仕組みが基本です。バスの接近状況や時刻表はもちろん、急な運休や遅延といったトラブルの情報も即時に反映されます。
従来型のバス停では、ダイヤ改正や臨時便の追加を周知するために、事前に紙掲示物で告知し、変更当日に貼り替える2段階の大規模な現場作業が必要でした。しかしデジタル化されたバス停では、クラウド経由でデータを一括更新できるため、運用にかかる手間を大幅に削減できます。
バス停の利用者にとっても、リアルタイムの発着案内を表示することで「いつバスが来るかわからない」という不安が減り、バスを利用するハードルが下がります。
スマートシティで活用されているバス停は、多様な利用者に配慮した設計がなされていることも特長です。表示内容を日本語だけでなく、英語、中国語、韓国語などにも対応させることで、外国人観光客にも使いやすい環境が整います。
また、高齢者や障がい者への配慮も進んでいます。視覚的にわかりやすいデザインや、AIによる音声案内など、あらゆる人が直感的に利用できる設計になっています。
以下では、スマートシティにおいてバス停をデジタル化するメリットをご紹介します。
- バス利用者の満足度向上
- 職員・ドライバーの負担軽減
- バス事業者・市町村の収益改善
- 補助金の活用による導入コストの削減
バス停のデジタル化によって、利用者が受け取れる情報の質と量が飛躍的に向上します。バスの接近状況、遅延情報、運行停止情報などをリアルタイムで確認できるため、待ち時間の不安が大幅に軽減されます。
また、複数バス会社の運行情報や異なる交通機関の情報を一つのディスプレイで案内することもできるため、利用者は乗り継ぎをスムーズに行えるようになります。表示もわかりやすく、バス利用時の満足度向上はもとより、都市単位での公共交通の利便性向上が期待できます。
職員やドライバーの負担を軽減できることも大きなメリットです。
従来のバス停では、運行変更や臨時案内のたびに現地で掲示作業を行う必要があります。また、利用者からの運行状況に関する問い合わせ対応も大きな負担となりやすいです。
デジタル化されたバス停ならクラウド上から情報を更新できるため、都度現場へ向かう必要がありません。また、即時に情報が反映されることで、利用者からの「次のバスはいつ来ますか?」といった問い合わせ件数も減少します。
職員やドライバーは本来の業務に集中できるようになり、業務効率が向上すれば、人的コストの削減にもつながります。
バス停をデジタル化することで、バス事業者の収益改善も期待できます。
バス停ソリューションには、広告コンテンツを表示できる機能も備わっています。バス停のサイネージ上に運行情報と併せて広告を表示することで、新たな収益源を確保できるようになります。
国や自治体によっては、スマートシティ推進に関連する補助制度などが利用できる場合があります。
導入コストを抑えながら最新の設備を整備できる点は、大きなメリットです。費用面でのハードルを下げながら、新たな交通インフラ整備に踏みきる後押しとなるでしょう。
スマートシティに向けた取り組みのなかで、バス停サイネージを実際に導入し、成果を上げている事例が増えています。ここでは、4つの導入事例を紹介します。
- 西日本鉄道株式会社
- 京王電鉄バス株式会社
- 箕面市地域公共交通活性化協議会
- 山形市公共交通課
福岡市では、誰もが安心・快適にバスを利用できるよう、わかりやすい交通基盤づくりを目指しています。そこで西日本鉄道株式会社は、福岡市中心部で進むまちづくりプロジェクトの一環としてバス停サイネージを導入しました。
導入により、西鉄バスの時刻表や接近案内がリアルタイムで更新されるようになったことで、利用者が安心してバスを利用できる環境が整いました。運行データはバスロケーションシステムと連携されることで、従来手作業だった掲示物の貼り替え作業が不要となり、業務の効率化も実現しています。さらに、バス停を地域情報発信のメディアとして活用する機能拡張にも期待を寄せられています。
京王電鉄バス株式会社では、2022年3月に京王府中駅前バスロータリーにバス案内用サイネージシステム「MORA FOR BUS STOP」を初導入しました。その後、JR武蔵小金井駅前でも導入を拡大しています。
同社では、MORAの動的表示・静的表示・プリント表示を使い分けることで、見やすい案内を目指しました。特に運転免許試験場へのバス案内がわかりやすくなったことから、乗車方法に関する問い合わせ件数の減少にもつながっています。
大阪府箕面市では、主要施設や新駅バスターミナルに計16台のデジタルバス停を導入しました。
バス停サイネージの導入により、2種類のバス事業者の運行情報を一つの画面で統合表示できるようになり、双方の利用促進につながっています。利用者はバス種別に関係なく、最も早く出発するバスを簡単に見つけられるようになりました。
また、GTFSデータの活用により、業務のDXと利用者へのサービス向上の両立も実現しています。
山形市では、誰もが公共交通を利用しやすいまちづくりを目指して、バス停サイネージの導入に踏みきりました。市内7か所に多機能型デジタルサイネージを設置し、バス利用者へのサービス向上を目指しています。
導入されたバス停サイネージでは、多言語対応や音声案内、市政情報の発信機能も備えています。地域住民はもちろん、観光客にとっても使いやすい公共交通インフラが整いました。
市内バス交通の利用促進効果が期待できるほか、サイネージを広告メディアとして活用することで新たな情報循環を創出しています。また、音声案内やスマートフォン対応による利便性向上、多言語案内によるインバウンド需要の取り込みなど、幅広い層に向けたサービス強化が図られています。
本記事では、スマートシティで活用されているバス停のデジタル化について解説しました。次世代型のバス停は、ただ運行情報を表示させるだけでなく、新しい公共情報インフラとしても機能する存在へと進化しつつあります。
富士フイルムイメージングシステムズの「MORA FOR BUS STOP」は、こうしたバス停のニーズにこたえるソリューションです。複数バス事業者の運行情報を統合して、都市単位のわかりやすい運行案内を実現します。
サイネージに最適化した美しいデザインと、高解像度かつ低反射のディスプレイでの視認性の高さが特長です。また、ダイヤ改正の自動更新や自動リブート機能など、現場の運用負担を軽減する工夫が施されています。
交通サイン事業で培ったスムーズな工事オペレーションを活かし、導入から運用までを一貫してサポートします。さらに、広告販売支援を含めた運用支援体制も整っており、導入後の収益面にも寄与します。バス停のデジタル化を検討中の方は、ぜひお問い合わせください。













