このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
鹿児島県の種子島において、地域の方々に寄り添った医療を提供している百合砂診療所。
医療クラウドサービスの胸部X線CADサービスを導入した経緯や使用感などについてお話をうかがった。
百合砂診療所
田上 容祥 氏

種子島では高齢化が急速に進んでいる一方で、公共交通機関が少ないため運転免許を返納すると通院が困難になってしまいます。そうしたご高齢の通院困難者の方々への医療を担いたいという考えのもと、2015年に当診療所を中核として訪問リハビリテーション、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所などからなる「ハーモニーセンター」を開設し、在宅医療などを含めた多様な医療サービスを提供しています。
その中で、私自身の専門は整形外科・リウマチ科ですが、"島の便利屋さん"として専門領域にとどまらず、幅広い領域・疾患の診療を行っています。また、スタッフの働きやすさも大切にしており、患者さんにもご協力いただきながら、急患を除いて診療時間内にすべての診療を終えて、スタッフが毎日定時で帰宅できるよう努めています。
当診療所は2015年の開設以来、年々患者数が増加し、年間1,500件以上の胸部X線撮影を行っています。その一方で、私は胸部X線画像の読影については専門外のため開設当初から読影に苦心し、優秀な診療放射線技師の読影補助を受けながら医療水準の維持に努めてきましたが、読影に対する不安は払拭されない状況が続いていました。同時に、診療放射線技師に対しては、読影補助の負担を軽減することで訪問診療時のエコー検査により注力してもらいたいという思いもありました。
読影についての課題を抱えていた中で、富士フイルムの担当者から胸部X線CADサービスのことを聞き、以前から医療AIに対して興味を持っていたこともあり、無料トライアルで利用を始めました。トライアルは50件でしたが、その限られた件数の中でも結節・腫瘤影が疑われる箇所が検出され、専門医に紹介した症例を複数経験したことなどを評価して、正式な導入に至りました。
2023年3月の導入後は胸部X線画像の全例で使用し、撮影後は自動で処理に進む設定にしています。2024年の年間利用件数は、近隣での大規模公共工事に伴う健康診断件数の増加もあり、2,000件以上を解析しています。
ヒートマップで疑わしい領域がマーキングされると、パッと目に入ってくるので分かりやすいと感じています。また、診療放射線技師からは、ヒートマップとスコアの両方を参考にして読影補助の精度向上につなげていると聞いています。
ヒートマップを患者さんに見せることもあり、その際に色がついて分かりやすく表示されていることで、納得してCT検査等に進んでいただける印象があります。一方で、胸部X線CADサービスで疑わしい箇所が検出されてCT検査を行ったものの、異常なしと診断されるケースも一定数あります。しかし、これは初期病変を見落とさないためにはやむを得ないことだと捉えていて、患者さんは精密検査で異常なしと分かることで安心され、喜ばれるので決して悪いことではないと思っています。
健康診断の胸部X線撮影で前がん病変と疑われる箇所が検出され、CT撮影からその後のフォローアップへとつなげられた症例が数件ありました。また、関節リウマチの患者さんについては胸部X線撮影を年2回程度実施しており、胸部X線CADサービスがあることで読影の質向上や不安軽減につながっていると実感しています。
読影の課題解決を重視していたので、導入にあたって初期コストやランニングコストについては考えていなかったというのが正直なところです。1件あたりのコストについては、あまり負担感がなく、コスト以上の効果が得られていると評価しています。
また、導入前には想定していなかったのですが、胸部X線CADサービスを導入したことで疑わしい箇所の検出数が増加し、それに伴って有益なCTの撮影件数が増加しました。これは経営面のメリットだけでなく、病気の早期発見・早期診断に大きく寄与しています。
現在の胸部X線CADサービスは、結節・腫瘤影、浸潤影、気胸が疑われる領域を検出しますが、3種類のどれが疑われるのかまでは表示されません。今後は、そこまで分かるようになれば、さらに使いやすくなると思います。
近年のAI技術の進化は目を見張るものがありますが、その中でもCT画像から初期段階の膵頭部がんを検出できるAIの開発に期待しています。血液検査で異常値が出た際にCT検査をしますが、私のような非専門医は読影が困難ですので、AI技術を用いたサポートは非常に助かると思います。今後、そうしたAIを含めた技術開発をいっそう推進して、引き続き医療の質や医療従事者の働きやすさ等の向上に貢献していただければと期待しています。
- *1 AI技術:AI技術のひとつであるディープラーニングを設計に用いた、コンピュータ支援検出ソフトウェア(Computer-Aided Detection=CAD)。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。
- *2 本サービスは胸部X線画像病変検出(CAD)プログラムLU-AI689型で実現しています。
販売名:胸部X線画像病変検出(CAD)プログラム LU-AI689型 承認番号:30300BZX00188000 製造販売業者:富士フイルム株式会社
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