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日本
株式会社LSIメディエンス 公立穴水総合病院ラボ長 田尻 悟 氏と公立穴水総合病院 臨床検査室 佐藤 尚美 氏​

導入事例公立穴水総合病院

能登半島地震後の臨床検査室の対応

水を使わない富士ドライケムが被災地の医療に貢献

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

奥能登地域にある四つの公立病院の一つで、約70年にわたって地域の医療を担い続けている公立穴水総合病院。2024年1月1日に発生した能登半島地震後の臨床検査室の対応や復旧までの道のり、震災後に乾式臨床化学分析装置「富士ドライケムNX600」を導入した経緯などについてお話をうかがった。

株式会社LSIメディエンス 公立穴水総合病院ラボ長
田尻 悟 氏(左)
公立穴水総合病院 臨床検査室
佐藤 尚美 氏(右)

臨床検査室の特長は。

佐藤氏 当院では臨床検査技師不足への対応として、一部の検査業務を株式会社LSIメディエンスに委託しています。現在、検体検査は主にLSIメディエンスが担当し、月間の検体検査数は4,000~5,000件です。

能登半島地震当日の状況は。

田尻氏 当日は私が日直をしていて、16時6分の前震の後に避難をしようとしていたところに、16時10分の本震が来ました。本震は、本当に命の危険を感じるほどの揺れでしたが、揺れが収まった後に何とか駐車場に出たら、今度は「津波が来る」という町内放送が流れました。その後、当院は5階建てで町内では高い建物なので、近隣の方々が避難されてきました。そこで、当院の職員が入口の自動扉を開放して、避難されてきた方々を5階まで誘導し、私も検査室の状況を確認してから5階に移動しました。しかし、自分の家のことも心配で、検査室は検査ができるような状況ではなかったので、院長にその状況を報告し、安全を確認した上で、車で帰宅しました。奥能登地方では、2007年にも震度6強が観測された地震があったのですが、今回の地震はそれとは比べものにならないほどでした。

地震発生後の臨床検査室の様子1

地震発生後の臨床検査室の様子2

被災後の検査室の稼働状況は。

佐藤氏 震災当日22時に病院に来て検査室を確認すると、断水はしていたものの電気は非常電源ではなく通常の電源が使える状態でした。また、検査装置は固定されていたため、1台も倒れていなかったのですが、精密機械なので稼働させる前に点検する必要があると考えました。その中で、可能な範囲の対応として、2日から血液ガス分析、D-ダイマー、簡易キット、5日から血算を行い、同時に5日以降に富士フイルムを含めた複数メーカーのドライケミストリー分析装置の貸し出しを受けて、生化学検査を再開しました。
 生化学検査の大型機は、1月15日から動かし始めたのですが、断水が続いていたことに加え、屋上のタンクに自衛隊から提供された水をくみ上げても配管の漏水ですぐになくなってしまう状況でした。そのため、しばらくは時間と件数を限定するかたちで大型機を稼働させて、ドライケミストリー分析装置をメインに使用していました。その後、200Lの水が入る専用のタンクを設置してもらったことで、1日フルで検査が行えるようになり、その状態で3~4ヶ月対応し、断水が解消した5月から震災前とほぼ同じ体制に戻りました。

被災後の状況として想定外だったことは。

佐藤氏 今回の地震は非常に規模が大きかったので、土砂崩れ等による交通途絶が各所で発生し、多くのスタッフが病院に来られず、逆に病院に来ていたスタッフは帰れないという状況になったのは想定外でした。今後に向けて、被災後のスタッフの配置等についてもしっかりと検討しておく必要があると感じています。

災害時におけるドライケミストリー分析装置の有用性は。

佐藤氏 やはり水が必要ない点は大きいですね。また、特に富士フイルムのドライケミストリー分析装置は操作が簡単なので、臨床検査技師がいなくても精度の高い検査が行えるところが良いと思っています。

震災後に富士ドライケムNX600(以下、NX600)を導入した経緯は。

佐藤氏 当院では、従来から臨床検査技師の不足が続いていて、特に夜間・休日のオンコールの負荷が課題となっていました。そうした中で、夜間・休日の生化学検査を医師の指示の元で看護師に担当してもらうことになり、看護師でも簡単に使用でき、災害への備えとしても有用なドライケミストリー分析装置を導入することになりました。そして、震災後に貸し出しを受けていたNX600について、実際に使用して感じていた検査精度や操作の簡単さに加えて、プラズマフィルターPFを用いることで遠心機での遠心分離操作が不要な点が決め手となって、導入に至りました。

富士ドライケムNX600​
導入後の現場からの声は。

佐藤氏 実際にNX600を使用する看護師の皆さんは、操作が簡単なので、すぐに慣れてもらえたようです。また、医師からは、臨床検査技師が来るまで待たなくても30分程度で結果が出る点が好評です。

NX600の検査精度については。

田尻氏 大型機とのデータの相関を調べたところ、ほとんどずれがないことが確認できています。また、溶血の影響があまり出ないところも良いと思います。

NX600の運用のポイントは。

田尻氏 当院では看護師がメインでNX600を使用していますが、装置の管理は臨床検査室が行い、データに責任を持っています。そして、夜間・休日明けに臨床検査技師が検体とデータを確認しています。その際、異常なデータが出ている場合や、NX600で測定範囲上限の数値が出ていて医師がより詳細な数値が必要と判断した場合などは再検査をしています。

佐藤氏 災害への備えとしては、普段からNX600を使用していることで、災害時でも慌てることなく普段通りに、かつ高い精度を維持した状態で使用できることが大きいと思います。

今後、富士ドライケムに期待することは。

佐藤氏 夜間・休日にNX600で行う検査は、特定の10項目を決めて、毎回同じ項目の検査を行っています。そのため、任意の項目のスライドをセットにしてもらえたり、肝機能用や腎機能用などのセットがあると、さらに使い勝手が良くなると思っています。

今後、富士フイルムに期待することは。

田尻氏 水を使わない検査には大きな将来性があると思っているので、富士ドライケムの項目の追加だけでなく、新たな検査方法の開発にも期待しています。

佐藤氏 今回の震災を経験して、災害時のドライケミストリー分析装置の重要性を実感しました。その一方で、中小規模の病院で複数台のドライケミストリー分析装置をそろえておくのは難しいので、災害等でライフラインが途絶えた際に富士ドライケムを迅速に貸し出す体制を整備していただければと期待しています。

公立穴水総合病院 臨床検査室の皆さん​
NX600
販売名

富士ドライケム NX600

届出番号

14B1X10022000130

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