このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
脳・神経・運動器疾患を専門とする岡山旭東病院は、南海トラフ地震やサイバーテロに備え病院全体で災害対策を進める中、臨床検査課は臨床検査技師が主体となり事業継続計画(以下、BCP)の構築を進めている。また、ISO15189認定を土台に、災害時だけでなく平時から検査を止めない仕組み作りに取り組んでいる。木浦氏と丸屋氏にその取り組みについて伺った。
- 富士ドライケムNX700(以下、NX700)の導入で、メイン機に集中していた検査を分散し、リスク管理と検査を止めない体制を構築。
- メイン機である溶液法自動分析装置と高い相関性を確認し、測定結果の信頼性を確保。
- NX700の日常活用と教育トレーニングにより、非常時の対応力を強化。
- 南海トラフ地震やサイバーテロを想定したBCPを策定し、定期的なシミュレーションを実施。

公益財団法人操風会 岡山旭東病院(左から)
木浦 大典 臨床検査技師
丸屋 由佳 臨床検査技師
木浦氏 当課は2009年に県内で2番目の早さでISO15189の認定を取得し、これまで検査精度の向上に励んできました。現在は17名の臨床検査技師が在籍しています。オールローテーション体制でマルチプレイヤーの育成をし、検査室にとどまらず、救急や病棟での業務拡大を見据えた教育にも注力しています。

岡山旭東病院
住 所 岡山県岡山市中区倉田567-1
設立年 1983(昭和58)年
丸屋氏 メイン機である溶液法自動分析装置は、定期メンテナンスなどで停止することがあり、その際の対応が課題でした。当時はその間外注検査に切り替えていましたが、外注用に検体を振り分ける手間や検体集荷・運搬が必要となり、臨床へ結果を報告するまでに2時間以上を要することも少なくありませんでした。
木浦氏 従来はメイン機の日常メンテナンスを当直帯に実施していたため、精度管理などで問題が発生した場合に担当者へ迅速に相談できないこともあり、対応体制や当直者への負担が課題でした。これらメイン機停止時の課題を解消するため、バックアップ機導入の検討をしました。
丸屋氏 当院の様な中規模病院では、検査スペースや予算も限られており、メイン機の様な大型装置を複数台所有する事ができません。富士ドライケムのコンパクト性、操作性、測定精度を総合的に評価し導入を決定しました。また、バックアップ用途にとどまらず、日常運用のイメージができた点も評価のポイントとなりました。
木浦氏 メイン機の測定を代用できる多項目測定が可能であるため、日常検査での運用拡大を見据えて、富士ドライケムシリーズの中でも5検体同時に測定ができるNX700の導入を決めました。
木浦氏 NX700を導入してからは、メイン機停止時も検査を継続できるようになりました。これに伴い、従来は当直帯に実施していたメンテナンスを、16時から実施する運用へ変更しました。当課ではこれを「16時メンテ」と呼んでいます。担当者がいる時間帯に実施することで、精度管理などで問題が発生した際もすぐに相談・対応でき、より安心して運用できる体制が整いました。また、NX700でISOフレキシブル認定を取得したことで(後述)、溶液法自動分析装置とNX700での測定値を同等に報告できる体制を整えました。その結果、以前は救急委員会との取り決めに基づき、非常時における緊急項目の結果報告時間を最長90分としていましたが、NX700の稼働を踏まえて運用を見直したことで、最長40分に短縮することができました。これも非常に大きな成果だと感じています。
NX700導入によりメイン機停止時の検査継続体制
非常時の結果報告時間(TAT)を大幅短縮


丸屋氏 NX700の導入検討として、メイン機の溶液法自動分析装置との相関性評価を実施しました。その結果ほぼ全ての項目で当課の評価基準である相関係数0.9以上を満たしました。また、同時再現性や日差再現性のいずれも良好な結果が得られました。その他、内部精度管理やメーカーサーベイによる適切な管理を行うことで、NX700のISOフレキシブル認定を取得しました。




丸屋氏 アンモニア測定は、現在すべてNX700で実施しています。従来使用していた富士ドライケムのアンモニア専用機からNX700へ移行しました。また、毎日の溶液法自動分析装置のメンテナンス時間帯や点検、故障時にはNX700をメインで使用し、CRP、電解質3項目をはじめ、脂質・肝機能・腎機能項目など幅広く測定しています。通常は自動点着で測定していますが、検体量が少ない場合は手動点着が可能なので、臨機応変に使い分けができるところが便利です。
木浦氏 緊急で造影CTを実施する際には、CRE値の迅速報告が求められる場面があります。NX700はCRE単項目において大型装置よりも迅速に測定できるため、医師に「CREは15分以内に報告します」と伝えることができます。患者様にとっても大きなメリットが期待できるため、今後院内の正式な運用フローとしていきたいと考えています。
丸屋氏 新人教育の中にNX700の操作チェックを取り入れています。操作方法がシンプルで分かりやすいので、測定ステップやメンテナンスを数日経験すると1人でも問題なく使用できています。また、新人に関わらず全技師に対して年1回、測定手順をチェックする場を設けています。
木浦氏 当課では、検査装置を「バックアップ用」や「災害対応用」として固定的に位置づけるのではなく、その時々の状況に応じて日常的に運用しています。このような運用により、多くの臨床検査技師が装置を扱う機会が増え、操作の習熟や知識の維持にも繋がっています。結果として、有事の際にも迅速に対応できる体制づくりに役立っていると考えています。
丸屋氏 当院では災害対策委員会を中心に、南海トラフ地震等の自然災害を想定したものと、サイバーテロを想定したものの2種のBCPを作成しています。それに基づき、2024年に臨床検査部門としてのBCP構築を開始しました。自然災害時は断水が想定され、水を大量に使用する溶液法自動分析装置は稼働できないため、NX700での測定を組み込んでいます。
また、サイバーテロを想定すると、検査装置と連携するシステムを遮断する必要があり、パソコンや電子カルテが使用できない状況も考えられます。NX700は測定結果を装置から直接印字できるため、サイバーテロを想定したBCPにおいても高い有用性をもち、その運用を想定しています。
発災後しばらくは臨床検査技師1人で検査業務を行うことも想定されるため、非常事態でも適切な検査対応がとれるよう、災害対策マニュアルの作成や理解度チェック、NX700を活用したシミュレーションを定期的に実施し、有事に備えた検査継続体制の強化に取り組んでいます。

「富士ドライケムNX700を用いた検査風景」
丸屋氏 私自身、当院の災害対策委員の一人として、「災害はいつ発生しても不思議ではない」という意識で災害対策に取り組んでいます。日頃からの心がけや業務経験が有事に役立つと思いますので、日常検査と災害用対応を別のものとせず、BCPに記載するようなNX700をはじめとした災害時検査装置に慣れる機会を日常から積極的に設けることをおすすめします。
木浦氏 当院は幸いにも震災やサイバーテロ被害に遭ったことはありません。しかし裏を返せば、災害発生時の実地経験がないということでもあります。だからこそBCPの策定やそれに基づくシミュレーショントレーニング、理解度チェックを大切にし、これらの施策を繰り返し実施し、その都度見つかった課題を洗い出し、継続的にブラッシュアップしています。全国の臨床検査技師の皆様におかれましても、災害リスクが隣り合わせにある今だからこそ、検査業務の継続を支える体制づくりの必要性を改めて考えていただければ幸いです。
- 販売名
富士ドライケム NX700
- 承認番号
14BlX10022000125
- 製造販売業者
富士フイルム株式会社
- 販売業者
富士フイルムメディカル株式会社
- 富士ドライケムNX700のカタログ
- 本記事のPDFデータ













