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日本

AI技術を活用して下部内視鏡検査における検出・鑑別を支援~微小病変などの見落とし防止や検査負担の軽減に期待~

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

大分大学医学部
消化器内科学講座 教授
村上 和成 先生

大分大学医学部附属病院
卒後臨床研究センター 准教授
水上 一弘 先生

(左)村上先生(右)水上先生

消化器内科領域全般において高度かつ先進的な医療を提供し、ピロリ菌の研究においては世界をリードする大分大学医学部附属病院 消化器内科。内視鏡診断支援機能「CAD EYE」の使用感についてお話をうかがった。

大分大学医学部附属病院 消化器内科の特長は。

村上氏 当科では、臨床的・基礎的なデータをもとに、外科、放射線科などとも連携して、専門的な検査、治療の提供に注力しています。研究面では、ピロリ菌感染症、炎症性腸疾患、および肝胆膵疾患に関する基礎的、臨床的なテーマで国内・国外での学会発表や論文作成を精力的に行い、中でもピロリ菌については1980年代後半から検体の収集を開始し、現在までに1万例を超えました。これは世界でもトップの検体数であり、それらの検体をもとに臨床研究や基礎研究を実施しています。そして、教育面では、消化管疾患・肝臓疾患・膵胆道疾患の消化器病全般の診療を行える“消化器内科のジェネラリスト”の養成を目指し、領域をなるべく細分化せず、消化器内科医としてオールマイティな実力を得られるように指導を行っています。

年間の内視鏡検査数は。

村上氏 年間平均で約7,000件、そのうち約7割が上部、約3割が下部になります。

富士フイルムの内視鏡の印象は。

村上氏 富士フイルムの内視鏡が登場した当初から画質が良いと感じており、その印象は今でも変わっていません。また、画像強調機能のLCIは、色調の変化を強調することで、ピロリ菌の現感染と除菌後などの鑑別が容易になり、有用だと思っています。そして、操作性については改善が進んだことで、かなり使いやすくなってきましたが、下部のスコープについてはまだ伸びしろがあると感じています。

水上氏 私も村上教授と同様の印象で、画質については、コントラストが強調されすぎず自然な色調で見やすいと思います。操作性については、以前は多少難がある部分もありましたが、我々内視鏡医のニーズに応えていただいたことで、今では問題なく使用できています。

多施設共同研究を行っている内視鏡診断支援機能「CAD EYE」に期待したことは。

水上氏 最も期待したのは、検出支援機能による病変の見落とし防止効果です。当院では初学者や若手の内視鏡医が検査を行う際に、指導医や専門医が同席して指導やチェックを行っていますが、将来的にCAD EYEがモニタリングなど指導医の役割の一端を担うことで、幅広い臨床現場における検査精度の担保や教育に寄与する可能性が期待できます。

検出支援機能の使用感は。

水上氏 検出音や画面表示が検査の妨げになるのではないかと心配しましたが、実際にCAD EYEを使用すると、そのような印象はなく、迅速・的確に病変を指摘してくれています。所見に対する感度が高く、偽陽性も多いのは事実ですが、見落とし防止という観点からは感度が高すぎるくらいでちょうど良いと感じています。

CAD EYE使用における適正な観察速度は、通常通りでまったく問題ありません。検査中にスコープが一気に抜けてしまった際に、CAD EYEが反応し、戻ってみると病変が見つかったという事例を経験しましたので、検出が追いつかないということはまずないと思います。

白色光でCAD EYEが検出した隆起性病変。CAD EYEは色調の変化だけでなく、微小な形状の変化にも鋭く反応します。

色調を鮮明に映し出すLCI観察においても、CAD EYEは同病変を速やかに検出しました。

BLIでの鑑別支援機能。黄色のvisual assist circleで腫瘍性病変であることを示します。

鑑別支援機能は、拡大観察を用いなくとも高い精度で腫瘍/非腫瘍の鑑別が可能です。

有用性を感じた症例は。

水上氏 5mm以下の微小病変は、内視鏡医が見落としやすく、CAD EYEの検出支援が有効と言えるでしょう。ただ、そうした微小病変は生命予後に影響するとは言えないため、臨床的な有用性についてはさまざまな考え方があると思います。また、平坦病変についてもCAD EYEの検出支援が有効で、しっかりと拾い上げてくれる印象がありますね。

現在、進めている研究の経過は。

水上氏 まだデータが少ない段階ではありますが、CAD EYEの検出支援は、特に初学者や経験の少ない医師の検査精度を向上させることが期待できます。また、複数のポリープがある症例では、専門医と初学者で病変の検出率に差が出やすい傾向がありますので、そういった症例ではCAD EYEの有用性が高いと言えるかもしれません。

鑑別支援機能については。

水上氏 拡大機能を併用すると、ほぼ確実に腫瘍性病変と非腫瘍性病変を鑑別できていると思います。とくに拡大観察を用いなくても鑑別精度が高いことに驚きました。専門医であれば腫瘍性病変と非腫瘍性病変の鑑別で迷うことは少ないかもしれませんが、わずかな迷いが生じた場合の確認や支援をしてくれる存在として、CAD EYEは有用な機能だと思います。

CAD EYEの操作感や検査時間への影響は。

水上氏 ボタン一つで検出支援、鑑別支援を切り替えられるので使い勝手が良いと思います。偽陽性病変の確認や検出される病変が多いと、検査時間は多少長くなりますが、私自身はそれがデメリットだとは思っていません。むしろ、CAD EYEの支援があることで、隅々までしっかりと観察できたという安心感が得られ、心理的負担の軽減につながっていると実感しています。

CAD EYEが地域医療にもたらす価値は。

村上氏 地域で内視鏡診療を行う医師は専門医ばかりではなく、多忙な外来診療と併行して内視鏡検査をされている開業医の先生もいらっしゃいます。CAD EYEは、そういった先生方の診断を支援して、検査精度の向上と負担の軽減に貢献するとともに、地域全体の内視鏡診療の質を高めていく可能性があると考えています。

今後、富士フイルムに期待することは。

水上氏 富士フイルムは、LCI、CAD EYEなど革新的な機能を次々に開発されていますので、これからも我々を驚かせるような機能を開発して、内視鏡に限らず診断・治療に幅広く貢献していただければと期待しています。

村上氏 今後もAI技術の活用を含めた急速な進歩を続けて、日本国内はもちろん世界での地位を確保して、ワールドワイドで活躍していただければと思います。