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座談会「胃内視鏡検診は新たな領域へ」

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

公益財団法人
北海道対がん協会 会長
加藤 元嗣 先生
医療法人財団 博愛会
人間ドックセンターウェルネス
吉村 理江 先生
公益財団法人
とくしま未来健康づくり機構
徳島県総合健診センター
青木 利佳 先生

(左)青木 利佳 先生(中央)加藤 元嗣 先生(右)吉村 理江 先生
2023年3月31日 JPホテルクレメント徳島にて収録

加藤先生 本日は「胃内視鏡検診は新たな領域へ」というテーマで、検診の最前線でご活躍されている徳島の青木利佳先生と、福岡の吉村理江先生をお迎えしました。

私は1年前に北海道対がん協会の会長になりましたが、おふたりから比べると内視鏡検診に関しては初心者に入ると思っています。経験豊富なおふたりのお話を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

吉村先生・青木先生 よろしくお願いします。

自己紹介

加藤先生 最初に、自己紹介を兼ねて当施設を紹介させていただきます。国立函館病院にいた一昨年には、函館市の内視鏡検診システムの立ち上げに加わり、効率のよい内視鏡検診を実施してきました。現在私の所属する北海道対がん協会は道内市町村の約9割のがん検診と特定健診を請け負っています。札幌市は4年前から内視鏡検診を始めていますので私は毎日内視鏡検診に携わっている状況です。

私が赴任した当初は通常径内視鏡と経鼻内視鏡が半分ずつでした。検診施設のため、富士フイルム社製経鼻内視鏡(EG-840N)を新規で導入し、現在では全例に経鼻内視鏡を使用しています。

では吉村先生、自己紹介とご施設がどのように内視鏡検診に携わっているかお話をしていただけますか。

吉村先生 当センターは1990年に開業した職域中心の任意型検診健診施設で、対策型胃がん個別内視鏡検診も件数は少ないですが対応しています。1995年に通常径内視鏡検査を開始して、2005年に富士フイルム社製の経鼻内視鏡を導入しました。2008年からは経鼻内視鏡のみで行っており、現在の年間検査数は約9,500件です。私自身はウェルネスで内視鏡検診に携わって、今年でちょうど20年目になります。

加藤先生 職域が多いということですが、バリウムと内視鏡の割合はどれくらいですか。

吉村先生 2017年にバリウムと内視鏡の件数が逆転して、今は内視鏡が約60%、バリウムが約40%の割合です。

加藤先生 全例経鼻内視鏡ですか。

吉村先生 スコープは経鼻内視鏡のみで、挿入ルートは鼻か口か、受診者のご希望に対応しています。受診者の約90%は鼻挿入を希望されます。

加藤先生 ありがとうございました。それでは青木先生、自己紹介とご施設の状況を教えてください。

青木先生 当施設は、加藤先生のご施設同様、対がん協会の支部になります。徳島県は人口が70万人くらいの小さな県で、施設の規模も先生方のご施設と比べて小さいです。対策型内視鏡検診は、1次と2次の両方を引き受けています。内視鏡検診は2ベッドで実施しており、ドクター1人につき1日最大11~12件。年間の検査数は約4,000件です。

私が赴任して11年目になりますが、当初内視鏡検査数は年間約2,000件でしたが、内視鏡検査に対するニーズの高まりと、少しずつ効率を良くしていくことで内視鏡検査数を増やすことができました。人間ドックもX線から内視鏡に変わってきている状況もあり、内視鏡検査を増やすことができると人間ドックの数が増えるということで、内視鏡検査数を倍増させることに施設の協力が得られました。

内視鏡時にピロリの感染診断を行い、積極的に除菌をして今は現感染の方は5%以下で、多くが未感染か既感染の方になっています。

加藤先生 今はほとんどが除菌後の方なのですね。その中でもピロリ未感染の方が半分以上でしょうか。

吉村先生 2021年度はピロリ未感染が70%弱で、既感染が30%弱、現感染はわずか3%まで減ってきました。ただ30代の現感染は5.5%と少し高めですので、特に若い世代の初回受診者は注意が必要だと思っています。

青木先生 10年前は胃がんの発見数も多かったのですが、リピーターが増えて、胃がんの発見数は半減している印象です。現在は、除菌後胃がんか未感染胃がんが多いです。

加藤先生 吉村先生の施設も発見がんのほとんどが、除菌後胃がんですか。

吉村先生 当センターでは検査総数が増えてきている分、発見胃がん件数はあまり減っていませんが、発見胃がんのピロリ感染状態割合は大きく変わってきました。除菌の保険収載前は現感染胃がんが半数以上でしたが、今では除菌後胃がんが全体の約60%、残りは当センターが未感染者の割合が多いこともあって未感染胃がんが約30%を占めています。

内視鏡によるピロリ菌感染診断

加藤先生 内視鏡によるピロリ感染診断の実際ですが、皆さん胃炎の京都分類を使っていると思います。現在第3版を準備中ですが、未感染所見にはRAC、胃底腺ポリープに新しくスクラッチサインが加わります。除菌後所見は地図状発赤が特徴的ですが、フジツボサインが追加されました。また、自己免疫性胃炎の所見として、逆萎縮、残存胃底腺粘膜、固着粘液、白点が、PPI/P-CAB胃症にクモの巣粘液が加わり充実しました。

RACと、びまん性発赤は表裏の関係ですので、胃角部周辺粘膜をしっかりと観察することが大切です。スクラッチサインは、スコープと粘膜が接する時にこすった時のような状態になるのがオリジナルです。

黄色腫はピロリ菌除菌後の所見として除菌後も長期に残るため診断に有用です。フジツボサインは生検すると腸上皮化生です。私は地図状発赤が消えてくるとフジツボサインに変わると思っています。また軽度萎縮の症例は既感染と未感染の鑑別が難しい時があります。未感染では幽門腺粘膜は白色調ですが、胃底腺粘膜への移行はグラデーションになるため線は引けません。軽度萎縮の除菌後は前庭部に萎縮が残っているため本来の腺境界から境界をもって萎縮粘膜がはみ出します。また、胃角部に斑状の萎縮粘膜を認める場合もあります。

除菌後では地図状発赤の出現が約3割で、残り7割はピロリ感染所見と未感染所見が併存する場合になります。除菌後に残存する萎縮や黄色腫を認め、それにRAC、胃底腺ポリープ、スクラッチサインがある場合は除菌後と診断できます。

RAC

胃底腺ポリープ

スクラッチサイン

地図状発赤

フジツボサイン

逆萎縮

残存胃底腺粘膜

固着粘液

ピロリ菌感染診断は実際どのように行い、難しい症例はどのようなものなのか、吉村先生からお願いします。

吉村先生 除菌歴がなくて、自然除菌後なのか未感染なのか、前庭部の粘膜が萎縮なのか幽門腺なのか悩む症例があります。

加藤先生 青木先生はいかがですか。

青木先生 未感染相当だというほどきれいになっていて、あまり萎縮がなかっただろうなという人は、本当にわからない時があります。例えば現感染でも、インジゴを撒くと胃小区模様は見えますがびまん性発赤はないというような場合、迷う症例はあります。

加藤先生 前庭部優位胃炎で、萎縮範囲がC1かC2の方が除菌するとそのようになりますね。

青木先生 それも除菌歴があるとわかりますけどね。

吉村先生 除菌歴が無いとわからないですよね。

青木先生 無いとわかりません。自然除菌だと思う時は胃角を越えて少し白く見える萎縮がある症例で、LCIにするとわかりますが、WLIにするとわからないといった症例も経験しました。

加藤先生 私も経験しましたが、萎縮範囲はLCIでよくわかります。

青木先生 私もLCIにすると萎縮の範囲がわかると思います。

加藤先生 確かに未感染でも白色調の粘膜が前庭部に見えることもあります。私の施設では、腺境界の部位に白色調の粘膜が見えなければ萎縮ととらないルールにしています。

青木先生 ルールを作っておかないと、そこはあいまいになってしまうことがありますね。

加藤先生 最近だと好酸球性胃炎やPPI胃炎は未感染ですが、発赤があり、現感染を疑う症例を経験することがあります。

吉村先生 私もPPI関連胃症は胃体部がLCIで濃い紫に見えたり、ひだが腫大・蛇行したりするので、現感染との鑑別が難しいと思っていましたが、最近は前庭部が比較的きれいということで鑑別できるのではないかと思っています。

加藤先生 前庭部粘膜の正常についての定義は明らかになっていません。前庭部粘膜には中心細静脈は見えませんが、移行帯には中心細静脈が見える所もありますし、幽門腺領域は人によって幅があります。感染者はLCIでわかります。

(左)黄色腫
(右)前庭部(色調まだら)

(左)萎縮範囲(WLI)
(右)萎縮範囲(LCI)

NHPH感染胃炎や自己免疫性胃炎の診断には、前庭部粘膜が正常と診断することが大事な時代になってきています。

ピロリ感染状態を診断するには、LCIは有用ですか。

吉村先生 もちろん有用です。

加藤先生 BLIはいかがですか。

吉村先生 今のスコープはBLIも明るいですし。胃角を超えた萎縮があるかどうかはLCIと同じくらいわかりやすいと思います。ただ、現感染と既感染の鑑別には向かないです。

加藤先生 除菌後や現感染の時の前庭部は色調がまだらで統一の色ではないですね。LCIでは、紫、赤、白、黄色に見えて、未感染は否定できます。

またLCIはピロリ感染診断だけではなく、LCI-FIND*1でがん検出に有用だと証明されました。LCIを併用した経鼻内視鏡は患者さんが楽な分、よく時間をかけて検査ができるという利点があると思います。

経鼻内視鏡のメリットとIEEの進歩

加藤先生 IEEの進歩についてはいかがですか。

青木先生 IEEは進歩していて、WLIは要らないくらいに思っています。病変が見つかった時には一応WLI、BLIに切り替えて見て、最後はインジゴを撒いてそれぞれで撮影します。WLIだとこんな感じで見えるのかという確認のために使いますが、診断の過程においては食道も含めてLCIで見た方がWLIよりいいと思っています。もちろん食道ではBLIも使います。行きか帰りでLCI、そして帰りはBLIで食道を観察し、胃の中はLCIだけという使い方で検査を行っています。

IEEとWLI の両者を使うほうがいいのではと言われることがありますが、私はとにかく早く終わらせてあげたいと考えるのでどちらか一方で見るならばIEEだけで見るようにしています。

加藤先生 LCI-FIND1)もWLIかLCIを先攻モードと後攻モードで切り替えています。両群でのトータルのがんの発見数は変わりませんが、先攻モードと後攻モードでLCI のがん発見率が有意に高い結果でした。

青木先生 加藤先生はLCIとWLIと、両方で2回見ているのですか。

加藤先生 私はもうLCIでしか見ていません。

青木先生 私も同じです。

胃内視鏡観察の実際

胃ルーティン観察

胃食道接合部

幽門輪

胃角

角裏

噴門部小弯

加藤先生 穹隆部を見た後はどうしていますか。

青木先生 穹隆部を見た後は、噴門を全周性に観察して、再度小弯側を前庭部まで見ます。

加藤先生 そこで小弯側を見ていますね。2回小弯側を見たことになりますか。

青木先生 そうです。小弯側は初め上に上がっていく時は空気量が少ない状態で見て、穹窿部を見た後は胃内の空気量が増えている状態で見るようにしています。噴門を見る時は小弯側や前壁がよく見えるように空気を多めに入れて小弯側を見ます。そして胃角から前庭部辺りまでスコープを下ろしてきて、今
度は見下ろしで見るようにしています。

加藤先生 吉村先生はいかがですか。

吉村先生 私は、胃に入ったら送気せずに十二指腸まで行きます。十二指腸から胃に戻り、前庭部から前壁、小弯、後壁、大弯と、らせん状に体上部まで洗浄送気しながら上がっていきます。体上部で水の溜まりを吸引した後、穹窿部、噴門周囲をグルッと回して見てから、Jターンで小弯側を振り子のように前後壁を網羅しながら胃角まで下ります。この時点では十分に送気されているので、胃角小弯から角裏の前後壁まで見ます。最後に広がった体部大弯ひだの間と、空気量が少ない状態の見下ろしでは盲点になりやすい体中部~上部前壁を見て終わります。観察法にはいろいろ流派があると思うのですが、私は研修医時代に教わった医局のやり方をそのまま変えていません。

加藤先生 私は青木先生と同じような見方です。十二指腸までは大弯側も見るようにして十二指腸からの帰りは小弯を見てまた戻す方法です。

吉村先生 そのような先生が多いですね。

加藤先生 必ず同じ場所を2回見るというルールです。皆さん十二指腸は先に見ますか。

吉村先生 十二指腸は先に見ます。十二指腸まで入れていく途中で胃粘膜を見ながらピロリ感染状態が推定できるので、そのあとの胃内観察に有利だと思います。

食道内視鏡観察の実際
将来展望
まとめ

加藤先生 本日はお忙しいおふたりの先生をお迎えし、「内視鏡検診は新たな領域へ」というテーマでお話しいたしました。内視鏡検診が新たな領域に入ったことは間違いありません。もっと先を見据えてメーカーも努力してほしいと思いますし、我々も勉強しなければならない、ということでこの会を締めたいと思います。どうもありがとうございました。

吉村先生 ありがとうございました。

青木先生 ありがとうございました。白熱しました。