このウェブサイトはクッキーを使用しています。このサイトを使用することにより、プライバシーポリシーに同意したことになります。

日本

VINCENT Case Report「マルチベンダーCT対応 Dual Energy解析システムにおける臨床での有用性」

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

済生会川口総合病院
富田 博信 先生
はじめに

昨今、さまざまなベンダーよりDual Energyデータ収集可能なX線CT装置が開発され、臨床において用いられている。しかしながら、その解析については、CT装置専用の解析システムを使用しなければならず、手術支援などの3D画像作成には、解析画像(仮想単色画像など)を市販のワークステーションへ転送し画像作成を行うことが一般的である。この煩雑性を解消するために、マルチベンダーCTのデータ解析が可能なワークステーションを開発した。

新Dual Energy解析システム概要および仮想単色画像の精度検証

SIEMENS社製SOMATOM Definition Flash 120kVにおいて(1)100HU、(2)200HU、(3)300HU、(4)400HUのCT値になるように希釈造影剤を2.5mL注射器に作成。CTDI測定アクリルファントム内に(1)~(4)を挿入し、Aquilion Precision(CANON)、SOMATOM Definition Flash(SIEMENS)、にてファントムを撮影し、VINCENTにて仮想単色画像を作成し、HUカーブを取得した。(図1)

図1:マルチベンダーCT装置におけるVINCENTによるHUカーブ比較
それぞれの装置において、同様なHUカーブとなり整合性が取れていることがわかる。

実際の3D画像作成
1.リアルタイム仮想単色エネルギー調整

実際の臨床使用においては、造影剤の感度上昇を目的とした低keV仮想単色画像を用いることがあるが、骨部分のCT値上昇を伴うので、自動骨抜き精度の低下が懸念されるが、本システムでは自動骨抜きを行った後に、仮想単色画像でのkeV調整ができるので、一連での画像作成が可能(図2)になり、効率的な画像作成が可能で、3DやMPR画像作成しながらリアルタイムに仮想単色エネルギーの調整が可能なため、臨床での応用性も広がり業務軽減に寄与することが期待される。

図2:70keVにて骨除去行った後にそのまま40keVへ調整した画像

2.仮想単色画像のノイズ軽減処理と臨床応用

低keVおよび高keVでは、ノイズが増加するが、リアルタイムに処理可能なガウシアンフィルタを実装しており、使用keVに合わせたノイズ低減処理が簡便に可能。(図3)

図3:低keVにおけるリアルタイムガウシアンフィルタ使用例

さらに、PixelShine(Deep Learning Based Image Processing再構成)を用いることにより分解能の低減を抑えた高精度のノイズ低減が可能であり、低keVから高keVにおいて最適な画像が得られる。(図4)

図4:PixelShineを用いた低keVノイズ軽減症例

高keV画像においての金属アーチファクト、ノイズ軽減にも有用であり、また、矢印部分の移植骨の描出も忠実に表示され、CT装置メーカー画像と比較しても良好な画像が得られている。(図5)

図5:仮想単色120keVによる金属アーチファクト低減症例
左上 SingoVia 120keV 右上 VINCENT 120kV相当(70keV)
左下 VINCENT 120keV 右下 VINCENT 120keV PixelShine

マルチベンダーCT対応WSであるのでCANON製高精細CTでの仮想単色画像取得が可能となり、臨床応用への幅が広がる(図6)

図6:CANON社製 Aquilion Precisionを用いた高精細仮想単色画像
左上 140kV 右上 80kV
左下 VINCENT 120keV PixelShine 右下 VINCENT 120keV

まとめ

マルチベンダーデータ使用可能なWSは、3D作成の簡素化が可能であり、臨床での運用に期待される。また、PixelShineの活用で、低keV画像への画質向上が期待される。
今後は、2-material decomposition法および3-material decomposition法など、ほかのDual Energy解析についても検討を進め、臨床での利用拡大の可能性を探っていきたい。