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日本

iViz air リニアプローブ AI技術を用いて開発した「血管判別アシストモード」でエコーガイド下穿刺を支援

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

埼玉医科大学総合医療センター
腎・高血圧内科学 教授
小川 智也 先生

透析領域において、いち早くエコーの活用に取り組むとともに、その普及にも注力している埼玉医科大学総合医療センターの小川智也氏。これまでの取り組みやワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air リニア」に搭載された「血管判別アシストモード」の意義などについてお話をうかがった。

超音波診断装置との出会いは。

私は「ジェネラリストを目指したい」という想いで腎臓内科の道に進みましたが、同時に透析医療にも興味を持っていました。そうした中、2002年頃に、エコーのボリュームレンダリング法によって透析患者のシャントを表示する専用装置の開発に携わったことがきっかけで、透析領域におけるエコーの活用に取り組み始めました。

超音波診断装置を活用した主な取り組みは。

ボリュームレンダリング法の研究と同時期に、シャントが心臓に与える影響についての検討を行いました。シャントを作ると心臓に負担がかかるとされており、シャント血流量が1Lであれば、心臓の仕事量も1L増えます。そこで、心エコーを専門とする臨床検査技師の協力のもとで、シャントを作る前と後で心臓の血流量がどの程度変化し、シャント血流量と整合するするのかについて調べました。

2000年代後半からは、エコーを用いてシャントの状態を客観的に評価する研究に取り組みました。当時、シャントの評価は理学的所見による主観的な評価が主流であり、再現性や標準化、教育面で課題があったことに加え、シャントの狭窄に対する経皮的血管拡張術(PTA)を適切に行う前提としても、シャントの正確な評価方法が求められていたという背景があったからです。

超音波診断装置の普及に向けた取り組みは。

私がエコーを使い始めた頃は、装置自体が非常に高価で、性能も高くなかったため、エコーを導入している透析施設はほとんどない状況でした。また、今でこそ幅広い医療従事者がエコーを活用していますが、かつては医師と臨床検査技師以外はエコーに触ってはいけないという不文律のようなものがありました。

そのような状況においても、私自身は、透析医療の質を上げていくためには、エコーを用いてシャントの状態を客観的に評価することが重要だと考えていましたので、そうした想いに共感してくれる透析スタッフの仲間と共にさまざまな試みを行いました。その中で、エコーの簡便かつ有用な使用方法として、上腕動脈のシャント血流量とシャント血管抵抗指数を用いたシャント血流機能評価に着目し、研究を進めていきました。

そして、富士フイルムにも協力していただきながら活動を続けてきたことで、透析領域におけるエコーの使用拡大と、エコーを用いたシャントの評価の普及に貢献できたのではないかと考えています。

血管穿刺にエコーが活用されるようになった経緯は。

エコーの普及が進む中で、透析患者が最も苦痛を感じる1日2回の穿刺の精度を上げるとともに、すべての透析スタッフが安心・安全に穿刺できる取り組みとして、エコーの活用が始まりました。

当初は、「血管を描出して、そこに針を刺すだけ」と簡単に思われる傾向がありましたが、実際にはエコーの構造や性質をしっかりと理解していない人がエコーガイド下穿刺を行うとリスクが伴います。そのため、エコーを安全かつ適切に活用する上では、教育が何よりも重要になりますが、富士フイルムは早い段階から教育に力を入れられていた印象がありますね。

iViz air リニアに搭載された「血管判別アシストモード」の評価は。

透析の現場には、若手からベテランまで、多職種のスタッフが集まっています。動静脈をリアルタイムで判別する「血管判別アシストモード」は、そうしたスタッフ全員が透析患者のシャントをしっかりと守っていく上で有用だと思いますし、教育や医療安全にもつながると考えています。

なお、エコーに習熟していれば、動静脈の判別を間違えることはないと思うでしょうが、エコーのエキスパートであってもミスをしないとは限りません。私が常々考えているのは、「誰も間違えない」と思うことに向き合う大切さです。例えば、一般的な生活道路に30km/hの速度制限表示がされていた場合、「こんな表示に意味はない」と思う人もいるかもしれませんが、表示が注意喚起となって事故防止につながる可能性もあるでしょう。このように、血管判別アシストモードは初学者のみならず、幅広い医療従事者のより安全な穿刺に貢献する機能だと思っています。

血管判別アシストモード

上肢末梢の動静脈をリアルタイム判別。
血管までの深さと径を自動計測。
さらに血管径に応じて異なる色のマーカーを表示、視認性を向上させました。

富士フイルムの超音波診断装置に期待することは。

エコーというと画質や3D/4Dなどの技術開発が重視されがちですが、富士フイルムは技術を追求するだけでなく、より透析の現場で使いやすい機能開発や、透析医療の質を高めるためのエコー教育にも注力されている印象があります。今回、汎用性の高いポータブルエコーであるiViz air リニアに血管判別アシストモードを搭載したことは“次の臨床現場への挑戦”だと捉えていますので、これからも透析領域におけるエコーの普及に取り組むとともに、我々が使いやすい機能開発に挑戦し続けていただきたいと思っています。

今後、富士フイルムに期待することは。

透析の現場には、透析をしながら社会で活躍していこうという若い方もいれば、高齢になって透析を始める方もいて、一人ひとりの透析患者のニーズはさまざまです。そうした状況を踏まえた上で、幅広い診断装置のラインアップを総合的に活用し、透析患者の多様なニーズに応える診断や治療を体系化することで、医療の質向上に貢献していただければと期待しています。