このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
代表理事・診療部長・院長
宮原 光興 先生
東京都台東区、千代田区、中央区を中心としたエリアで訪問診療と往診を行い、日々幅広くエコーを活用している神田川訪問診療所の宮原光興氏。ワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air コンベックス」の使用感やAI技術を設計に活用した膀胱尿量自動計測の有用性や、使用感などについてお話をうかがった。
当院は、2020年6月に在宅医療に特化したクリニックとして開業し、現在は医師3名体制で、幅広い患者層および疾患の診療を行っています。その中で、「医療を通じて人生と地域にさまざまな“楽”を提供し、関わるすべての人々を笑顔にする」という理念を掲げています。患者さんの人生や在宅での生活を日々“楽”しんでいただけるよう、多職種の皆さまと地域を“楽”しくし、最後まで快適安“楽”にお過ごしいただくために、誠心誠意努力しています。
研修医時代から機会があればエコーに触れるようにしており、一般外科医として診療を行っていた際は、腹部はもちろん、胸部、甲状腺、乳腺、末梢血管など、さまざまなエコーを経験する機会がありました。そして、在宅医療の道に進んでからは、幅広い場面で積極的にエコーを活用しています。
1日あたり12~15件の訪問を行い、そのうち3~4件でiViz airを使用しています。我々在宅医が行うエコーはスクリーニングではなく、ポイント・オブ・ケアです。患者さんの症状に応じて、胸部、肝臓、腎臓、膀胱、血管、前立腺、直腸の便など、さまざまな部位をその都度確認します。
コンパクトかつワイヤレスで携帯しやすく、聴診器と同じ感覚で持ち運べるエコーというのは、私の経験上ではiViz airが初めてです。また、画質が優れていることに加え、スマートフォンベースですので直感的に操作できます。
さらに、膀胱尿量自動計測や直腸観察ガイドなど、在宅領域で使いやすいアプリケーションを備えているところも良いと思います。
従来は、エコー画像と計算式で尿量を計測していましたが、日常的に計測を行うのは手間がかかるので在宅医療という限られた時間の中で行うのはなかなか大変でした。iViz airの膀胱尿量自動計測は、非常に簡便な操作でスピーディに計測できるため、尿量計測のハードルが大きく下がったと感じています。
また、エコーに慣れていない看護師等でも少しトレーニングをすれば計測できるので、医師がすぐに訪問できない場合には、看護師にiViz airを渡して先に訪問して計測してもらうという使い方もしています。
クリアな画像で膀胱を描出・確認しながらプローブをあてることができ、さらに、膀胱領域を自動抽出、キャリパーの自動配置を行い、計測を短時間に終えることができます。
高齢者に多い排尿障害には、膀胱の運動機能が低下している場合と膀胱の知覚が低下している場合があり、そのどちらにも有用だと思います。特に、在宅医療においては、患者さんの状態や生活スタイル、ご家族との関わりなどが多種多様で、認知機能が低下していて問診が難しかったり、一人暮らしでご家族から情報を得られない場合もあるので、エコーで尿量計測を行い、適切な処置や治療につなげていくことが重要だと考えています。
「尿が出ていない」と連絡を受けて訪問した80代の女性の患者さんのケースです。実際に訪問すると、少し尿が出るようになっていたのですが、ご本人は「お腹が張ってつらい」ということでしたので、iViz airで尿量を測定すると600ccの尿が貯まっていることが分かりました。この患者さんはカテーテルによる導尿に抵抗をお持ちだったのですが、エコー画像と600ccという表示をお見せすることで納得していただいて、スムーズに処置ができました。
同じようなケースで、エコーがない場合は「いったんカテーテルを入れてみる」という選択になると思いますが、もし尿が貯まっていなければ患者さんに苦痛を強いるだけの結果になります。したがって、排尿障害にエコーを活用することで、適切な処置や治療はもちろん、患者さんの負担軽減にもつながると感じています。
検査方法が限られている在宅領域において、非侵襲で体内を可視化するエコーが持っている価値は非常に大きいですし、医療の質や患者満足度の向上にも貢献するツールだと思います。また、在宅領域では、訪問看護や介護などとの多職種連携が不可欠ですが、エコー画像や計測した尿量をデータとして共有することで、迅速かつ円滑な連携につながると感じています。
iViz airに搭載されている膀胱尿量自動計測などのアシスト機能は、これからエコーを始めようという医師や看護師などにとって心強い味方になると思いますので、今後もエコーの普及につながるような機能の開発を継続していただければと思います。そして、将来的には、病変を自動で検出するような機能にも期待しています。
医療従事者の利便性を向上させる技術は、世界中の方々の健康や豊かな生活の実現につながります。私自身、富士フイルムの技術にはいつも助けられていますので、これからも医療現場の日常や患者さんの生活に寄り添った技術・機器を開発し続けていただければと期待しています。