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ホーム 医療関係の皆さま 医療ライブラリ 第3回日本在宅医療連合学会大会 富士フイルムメディカル共催セミナー「社会医療法人 関愛会における訪問画像検査について」

第3回日本在宅医療連合学会大会 富士フイルムメディカル共催セミナー

社会医療法人 関愛会における訪問画像検査について

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

2021年11月27日に開催された第3回日本在宅医療連合学会大会のWeb共催セミナーにおける講演要旨を紹介する。

社会医療法人 関愛会 佐賀関病院
医療技術部 部長
桑原 宏 先生
関愛会の訪問診療患者数、訪問画像検査数について

私が所属している佐賀関病院を運営する関愛会は、2004年の市町村合併で佐賀関町が大分市に編入されたことを契機に、「地域包括ケアの推進」、「地域貢献」、「自己研鑽」という理念のもとで設立された社会医療法人です。そして現在は、大分市や豊後大野市などに医療・介護・福祉の各種事業を展開し、法人全体で1,185名(2021年9月現在)に訪問診療を行っています。

訪問画像検査については2017年12月から開始し、エコーは「FC1-X」を、X線撮影は「CALNEO Xair」と「FUJIFILM DR CALNEO Smart」を使用しています。

訪問画像検査数は、2017年に開始してからの1年間はX線26件、エコー2件でしたが、徐々に画質の良さがドクターに評価され、2021年度は半年間でX線51件、エコー11件と、件数が大きく伸びています。

訪問エコーの検査目的は、心臓では体重の増加による慢性心不全疑い、拡張性心筋症の経過観察、腹部では寝たきりの方での肝機能障害、下肢血管では下肢浮腫、D-ダイマー高値などです。我々診療放射線技師が出向いて、胸部のX線撮影と心臓エコーを1人で行っています。

訪問画像検査のメリットと問題点

次に、訪問画像検査のメリットについて、実際に掛けられた言葉を紹介します。

まず、患者の家族や介護施設職員からは、「病院に連れて行かなくて良いのは非常に助かる」と言われます。自宅患者で老老介護の場合は特に通院の負担が大きく、介護施設の場合も車両確保と人材確保(2名)の負担がかかるため、訪問画像検査は通院の負担軽減になります。また、その場で画像検査が行えることを説明すると、患者の検査拒否がないところも大きなメリットだと感じています。さらに、私が検査を行う中で患者さんから掛けられた言葉としては、「病院に行かなくていいのは助かる」、「やっぱり病院に行くのはしんどい」、「家で検査ができるなんて幸せなことはない」などがありました。

その一方で、訪問画像検査の問題点として、特にX線撮影とエコーを併せて行う場合は機材の重量によって運搬に苦慮することや、ご自宅の居住スペースの関係で器材の準備が困難なケースがあることが挙げられます。また、介護施設やご自宅ではベッドが壁付けされていたり、ベッドサイドにほとんどスペースがなかったりと、エコーの設置やいつも通りの姿勢での検査が困難な場合があります。こうしたケースでは、左手でプローブを操作して、右手で装置の操作をすることもあります。さらに、エコーのバッテリーが検査途中で切れる場合があります。充電コードは持参していますが、コンセントの配置などで患者宅での充電は難しいという状況もあります。

FC1-Xの画像評価について

実際のエコー画面を使って、FC1-Xの画像評価をしていきたいと思います。

写真1は、下肢浮腫が見られた症例の下肢静脈の画像です。血管はBモードで十分見えるため、血栓の有無のスクリーニング検査としては対応可能と思いますが、逆流防止弁機能などの細かい評価は、カラードプラの精度的に少し厳しいと感じています。

写真1:両下肢静脈

写真2は、心エコーで弁逆流を捉えています。心エコーの画像は、Bモードでの評価は問題なく、ポータブルタイプとしては十分な性能を備えていると思います。また、弁逆流についてはmild以上であれば評価可能です。一方で、流速計測は可能ですが、画面表示が小さく、操作や困難な場合があります。在宅での心エコーでは、基本体位である左側臥位が困難な場合もあり、病院と同じような評価は難しいので、あらかじめEF、心嚢水貯留の有無、IVC評価などの評価項目を決めておく必要があると思います。

写真2:心臓エコー

写真3は、腹部エコーの肝臓の最も深い部分の評価になります。腹部に関しては、Bモードでも十分評価可能で、深部もよく見えるので、在宅検査としては問題なく使用できると思います。

写真3:腹部
iViz airの評価について

続いて、ワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」のリニアとコンベックスのデモ機を1か月間使用して感じた結果を報告させていただきます。

実際に使用してみると、イメージ画像(写真4)のように、装置がワイヤレスかつコンパクトなのでベッドサイドでの検査がしやすく、軽量で持ち運びやすいため、特に在宅において有用性が高いと感じています。また、プローブの切り替えはボタン一つで可能です。さらに、バッテリーの持ちが良く、USB充電も可能なため、移動中に車内で充電することもできます。加えて、膀胱尿量自動計測や肺エコーガイドなどのアシスト機能は、エコー初心者には有益だと思います。

写真4:実際に使用してみて…

* イメージ画像

写真5は、iViz air コンベックスの腹部画像です。Bモードの評価で肝臓の結構深い部分まで観察することが可能です。また、胆嚢や腎臓、膀胱、脾臓なども十分に評価でき、距離計測も可能です。

写真5:腹部

写真6は、膀胱尿量自動計測の画像です。同機能は、自動抽出された膀胱領域にキャリパーを自動配置し、尿量を自動算出してくれます。

写真6:残尿量測定

写真7は、肺エコーガイドを使った、肺エコーの画像です。同機能は、肺エコーの走査手順を視覚的にアシストしてくれます。この症例の方はもともと肺炎があり、新しい肺炎の有無の評価は難しい部分があったのですが、肺エコーは動きがそのまま見えるので非常に有効でした。

写真7:肺

iViz airに対する今後の期待としては、現在、在宅での心不全の評価に対するニーズが高まっていますので、セクタプローブの開発に期待したいと思います。そして、将来的には、タブレット型、スマホ型という特性を活かして、病院やクリニックにいるドクターと遠隔でリアルタイムに画像を共有できるシステムを開発していただければ、在宅医療がいっそう充実したものになっていくのではないかと考えています。

今後の在宅画像検査について

今後、診療放射線技師としての技術や経験を活かして、在宅でX線撮影とエコーを展開していきたいと考えています。そのために、1人で対応できるだけの経験や知識を身につけていきたいと思います。そして、今後は他の在宅クリニックからの委託検査への取り組みなども進めながら実績を重ねて論文化を目指し、将来的な診療報酬加算につなげていければと思っています。

画像検査装置に対しては、装置の軽量化、血流エコーの充実、心臓エコーの充実、画像出力の簡易化に期待しています。

現在は在宅の画像検査に診療報酬加算がないため、病院やクリニックの経営的な観点においては検査を躊躇するところもあるかと思います。しかし、在宅の画像検査を行うことで、患者さんとそのご家族の負担は確実に軽減されます。実際に、我々が出向くと「本当にありがとう、来てくれてありがとう」と、笑顔で声を掛けられます。これからも、そういった笑顔を少しでも多くできるよう貢献していきたいと思っています。どうもありがとうございました。