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2022年7月29日~8月8日に配信された「AI活用や最新の医療機器を相棒にする開業医セミナー」より、もりかわ内科クリニックの森川浩安氏の講演要旨を紹介する。
院長
森川 浩安
富士フイルムヘルスケア株式会社の金山です。当社の超音波診断装置「ARIETTA 650 DeepInsight」は、AI技術をノイズ除去に活用したDeepInsight技術によって、通常はノイズに埋もれやすい深部の視認性が特に向上しています。さらに、フルフォーカス機能であるeFocusing LITEによって、浅い部位から深部までピントのあったクリアで見やすい画像を描出することができます。これらの技術により、先生方にとっては撮りたい画像を即座に出すことができ、診察の合間に効率的な検査を実施できると思います。
今回は、消化器内科、肝臓内科で開業されている森川浩安先生に「ARIETTA 650 DeepInsight」の活用事例を紹介していただきます。
もりかわ内科クリニックの森川です。当院は2019年10月に大阪市福島区で開院しました。内科、消化器内科、肝臓内科を標榜し、消化器疾患、生活習慣病の診断・加療やかかりつけ医としての風邪や発熱などの急な病気の対応を主に行っています。また、エコー以外の大きな検査として、上部内視鏡も行っています。
そして、私個人として、超音波関連の研究においては、ノイズ情報から生体内の有用な情報を得る、具体的には“温度による超音波速度の変化”についての基礎研究や、肝臓のエラストグラフィと減衰率測定についての臨床研究などに注力してきました。
当院は新型コロナの感染拡大とほぼ同時期に開業したため、コロナ禍以前と比較はできませんが、患者さんの受診行動についてはwithコロナが定着してきていると思います。例えば、発熱があると必ずと言っていいほど事前連絡していただけますし、患者さんとの会話から「できるだけ受診回数を減らしたい」という意向も強く感じます。
当院は、超音波検査をアピールポイントの一つにしています。今回の「ARIETTA 650 DeepInsight」についても期待を高めながら使用させていただきました。新たな機種というのは、実際に使用する実施者も高揚感を得ることができますね。
当院におけるエコーの実施状況は、2020年が451件、2021年が550件と増加していますが、2022年は伸び悩みを感じています。これは、来院数の増加に伴い、余裕をもってエコー検査を行えなくなってきているということを反映しているのかなと考えています。おそらく、他の開業医の先生方も同じような悩みをお持ちではないでしょうか。
そこで、我々開業医がエコー検査をどのように施行しているか考えてみますと、
- 診療中に診察室にて施行
当院では、こちらを採用しています。後ほど、運用の状況をご紹介します。 - 診療の合間に別室で施行
患者さんに処置室に寝て待機してもらい、診療の合間に行うというものです。これは、スタッフが準備に時間を取られたり、患者さんに待機時間を強いることになります。 - 午前診と午後診の診療空き時間に施行
曜日を決めて、診療空き時間に行われている先生方も多いのではないでしょうか。この場合もスタッフの確保が必要になってきます - 別室を設けて、検査技師が施行
技師さんの雇用が必要で、採算ベースでみると年間1000件以上は必要かと考えます。
当院においてエコーを実施する理由としては、健診や当院の血液検査で異常があって施行する場合が3分の1を占めます。また、腹痛で来院され、その診療・加療の一環として行うポイントオブケアが3分の1を占めます。この中には高次医療機関に緊急紹介となった事例も数多くあります。また、生活習慣病、肝疾患のフォローアップ、スクリーニングとしてのエコーも3分の1を占めます(図1)。

当院では、患者さんのニーズに応えるため、エコー検査から説明までの一連の過程を診察室で行っています。診察室には、診察机、患者用の椅子、エコー装置と靴を脱がず利用できる椅子型診察台を設置し(図2)、エコー画像は検査後直ちに院内サーバーに転送し、患者さんと一緒に画像を見ながら説明をします。
この一連の流れによってスタッフや患者さんの時間的制約が減り、トータルとしてのエコー検査時間を短縮させることで、年間400~500件のエコー検査を確保しています。今回、使用した超音波診断装置「ARIETTA 650 DeepInsight」も検査時間の短縮が期待されます。

腹部エコーにおいては、病変部以外にも脾臓、腎臓、肝臓、すい臓、胆のうについて、くまなく観察し、観察しづらい部位があれば、体位変換や機器の設定変更を行う必要があります。
「ARIETTA 650 DeepInsight」では、ノイズ除去によって深部が格段に見やすくなり、臓器間境界がはっきりするという特徴があると思います。そのため、体位変換や機器の設定変更等の余分な作業時間の節約ができます。また、フルフォーカス機能であるeFocusing LITEによって、フォーカス点を合わせることなく、近距離から深いところまで均一に描出することが可能です。
X線撮影やCTではAI技術を開発に活用するものも多く出てきていますが、最近は超音波にも活用されるようになってきています。その中で、生体内の微小なノイズから生体情報を得るという基礎研究をしてきた私から見ると、AI技術を活用して生体外の不必要な超音波情報をフィルタリングし、生体内の必要な情報だけで画像構築する“DeepInsight技術”は、実に理に適った手法だと思います(図3)。今後、この技術の活用が進んでいくことで、埋もれていた新たな超音波情報の発見にもつながっていくのではないかと期待しています。

当院は肝疾患フォローの肝臓のエラストグラフィも実施しています。また、生活習慣病の観点から肝臓の脂肪化の程度もエコーで確認しています。いずれも定量評価で、シアウェーブと減衰計測機能が同時に、かつ簡単に計測できます(図4)。

その他にも、生活習慣病・予防医療の観点から頸動脈のIMTチェックによる動脈硬化症の診断も行っています。また、甲状腺エコーも行っています(図5)。

当院では年間に400~500件のエコー検査を実施しており、腹部エコー検査の診療報酬点数は530点です。
図6は、当院における腹部エコー検査の内訳です。通常の腹部エコー検査後に、慢性肝疾患や脂肪肝の病名群にはエラストグラフィを行うので200点加算となります。異常なしの群等においては、後日、頸動脈エコーや甲状腺エコーの検査を行う症例もあります。これで350点の診療報酬点数を100~200件加味することができ、「ARIETTA 650 DeepInsight」クラスの装置が約3年以内で償却できる試算となります。装置の耐用期間は7年間と聞いていますので、1日2件以上の検査を効率よく行うことが収益につながります。

当院では開院当初からホームページによる診療所内の機器紹介を行っており、その集客効果も大きいと感じています。ホームページを見て来院された初診の患者さんは、最初からエコー検査もしくはエラストグラフィを希望される方が多数を占めています。
開業されている先生で、まだホームページに超音波装置を掲載されていない方がいらっしゃるようでしたら、掲載されることをお勧めします。
画像検査は、患者さんに実際の画像を見せて説明することができ、それによって患者さんの病気への理解度を深めることができます。
エコー検査は、医師と患者さんのコミュニケーションを促進し、診療の質を向上させるツールとして、クリニックにおいて大きな武器の一つになると感じています。
- * AI技術について
AI技術のひとつである機械学習を用いて開発・設計したものです。
実装後に自動的に装置の性能・精度は変化することはありません。