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次世代型薬剤識別システムPROOFIT iQ(本文中はiQと記載)を、2024年11月よりご利用いただいている、鹿児島大学病院(鹿児島県鹿児島市)。導入の背景や今後の期待について、鹿児島大学病院 教授・薬剤部長 寺薗 英之さんに伺いました。
鹿児島県鹿児島市桜ヶ丘8-35-1
明治2年(1869年)設立の島津藩医学校を前身とする、鹿児島県唯一の特定機能病院。病床数704床。薬剤師56名・薬剤助手15名、派遣12名。「心豊かな医療人による安心・安全・高度な医療を目指します」を理念に、先進かつ高品質の医療を提供している。
持参薬鑑別業務を集約し薬剤助手へのタスクシフトを実現

鹿児島大学病院は、開設病床数704床を有する県内唯一の特定機能病院です。薬剤部の主な業務の一つに、入院患者さんの持参薬の鑑別があり、その数は1日あたり30〜70名分にのぼります。
従来、持参薬の鑑別は、各病棟に1名ずつ配置された薬剤師が、病棟ごとに行っていました。しかし、入院患者さんの高齢化に伴い持参薬が増加。鑑別に時間がかかることもあり、入院患者さんに直接関わる業務の時間が十分に確保しづらい状況でした。加えて、薬剤師の欠員が生じ、薬剤部の業務全体を効率化することが不可欠でした。
こうした背景から、鑑別業務を病棟ごとに行うのではなく、薬剤部内に集約する「持参薬センター」を立ち上げ、薬剤師の作業の一部を薬剤助手にタスクシフトする方針を打ち出しました。そこで鍵となったのが、スマートフォンなどの端末で簡単かつ正確に薬剤を識別できるiQです。
鑑別業務は主に、薬剤助手が一次確認を行い、薬剤師が確認をするダブルチェック方式で行っています。
iQ導入前の薬剤助手による一次確認は、持参薬を目視し、薬の辞典やデータベースで調べ判別した結果を紙の鑑別書に記入し、電子カルテに仮入力。薬剤師が紙の鑑別書を見ながら、電子カルテの入力情報が正しいかを確認するという手順でした。薬剤助手は、薬の情報を調べて判別したり鑑別書に記入したりする作業に、多大な時間を要していました。また、鑑別書に書かれた手書きの薬剤名や規格単位の数字の視認性が良くない場合は、確認を行う薬剤師の判読に時間がかかってしまうこともありました。
iQの導入後は、薬剤助手が持参薬をタブレット端末で撮影し、AI識別*2で表示された候補画像から選択するだけで、一次確認が完了します。また、出力された持参薬確認表は、撮影した錠剤と選択した錠剤の画像が並んで表示されており、薬剤名もデジタル印字なのでとても読みやすく、薬剤師がチェックする際にも誤読などの防止に役立ちます。
その結果、持参薬鑑別全体の時間としては、1件あたり5分以上、1日で延べ4〜5時間かかっていたものが、約半分に削減*1されました。実際に、薬剤助手が一包化持参薬の鑑別にかかった時間の中央値で比較すると、従来の肉眼での作業の場合は、2錠/包で約1分30秒、7錠/包で約5分、15錠/包で約12分かかっていたものが、iQの活用により、それぞれ約40秒、約2分40秒、約5分に短縮されました。
持参薬鑑別のデータがエビデンスに
薬剤師の安心、薬の安全を向上させたい
まず、持参薬の画像や情報をデジタルデータとして保存し、エビデンスとして保持できます。いつでも見直せるので、薬剤助手や薬剤師の安心につながります。鑑別後の問い合わせにも、記録を基に正しく対応できます。
また、持参薬を撮影すると、タブレット端末上に複数の候補が表示され、選択のプロセスが生まれるため、識別精度が向上していると感じます。撮影画像と選択画像は印刷された持参薬確認表でも並列表示されるので、薬剤助手による一次確認の内容を薬剤師が確認する際にも候補画像選択のプロセスを見比べることができ、正確かつ迅速な鑑別が行えます。
さらに、医薬品マスタの自動アップデートにより、新薬や先発品、後発品などの情報を利用者側で更新する手間がなく、業務の合理化に寄与しています。
今回、iQを活用して持参薬鑑別業務の集約化・効率化を実現し、薬剤師から薬剤助手へのタスクシフトが促されました。これにより、病棟薬剤師が入院患者さんの対応に専念できる体制が整いました。薬剤管理指導の件数増加に基づく診療報酬の加算など、病院全体の運営にも良い影響を及ぼしています。
今後は、鑑別業務の効率化で生まれた薬剤師の時間を、患者さんを中心に据えたチーム医療への取り組みに充てていきたいと思います。急性期医療から慢性期医療への移行においても、トレーシングレポートを活用した医師や看護師との連携に、iQで保管されたデジタルデータが役立つはずです。
これからも、業務上のDXを推進し、薬剤師が患者さんに寄り添う時間を増やして、さらに地域医療への貢献を広げていきたいと思います。
- *1 鹿児島大学病院 薬剤部集計による。
- *2 AI技術の一つであるディープラーニングに基づいた薬剤識別技術。導入後にAIモデルの更新がない場合は、システムの性能や精度に変化はありません。
- 「次世代型薬剤識別システム PROOFIT iQ」のカタログ
- 本記事のPDFデータ













