二次診療を提供するライフメイト動物高度医療センター八王子のセンター長を務めるとともに、東京大学大学院農学生命科学研究科 附属動物医療センターにおいて診療・研究・教育にも注力している金本英之先生。動物用内視鏡「ELUXEO Vシステム」の使用感や印象深い症例などについてお話をうかがった。

ライフメイト 動物高度医療センター八王子
センター長
東京大学大学院農学生命科学研究科
附属動物医療センター
金本 英之 先生
金本先生 ライフメイトグループは動物医療センターとして4病院、一般病院として8病院、合計12病院展開しており、八王子では救命救急センターと高度医療センターを併設する形式をとっています。その中で、救命救急センターは、いわゆる夜間救急とは異なり、二次救急として近隣の施設からご紹介をいただいた緊急性の高い症例に対して、検査から手術等の治療、その後の管理も含めて対応しています。そして、私がセンター長を務めている動物高度医療センターは、二次診療センターとしてご紹介をいただいた症例に対して高度な医療を提供しています。救命救急センターと高度医療センターは同じ建物内にあり、例えば、救命救急センターで受診した症例の内視鏡を含めた詳細な検査を高度医療センターのスタッフが請け負ったり、高度医療センターに受診した症例で緊急性の高いものを救命救急センターで管理をしてもらったりと相互に連携しながら、より適切かつ質の高い診療を提供できるよう取り組んでいます。
金本先生 年間に60~70件の検査・処置を行っていますが、それ以外にも麻酔をかけて行う検査に併せて内視鏡で胃の内部の確認等を行うこともあるので、使用頻度としては毎日に近いと思います。
検査・処置の内容としては大きく2つあり、1つ目は異物で、近隣の内視鏡を持っていない病院から異物を誤飲した疑いがあるとご紹介をいただいて処置を行うケースです。2つ目は慢性的な胃腸疾患や消化管の腫瘤等の検査で、具体的には慢性炎症性腸症や胃・腸管のリンパ腫の精密検査が多くを占めています。
そのほか鼻腔内など呼吸器についても検査・処置を実施することがあります。
金本先生 内視鏡システムの使用年数が長くなったため買い替えを検討し、従来使用してきたメーカーが動物用内視鏡の販売を終了することも踏まえて、国内外の複数メーカーのシステムを比較検討しました。その中で、当院では以前から富士フイルムのドライケム等を使用しており、保守・サポート体制に信頼を置いていたことや、国内メーカーで安心感があること、デモ機で画質の良さを実感したことに加えて、富士フイルムVETシステムズの担当者の内視鏡に対する熱意も大きな後押しとなり、「ELUXEO Vシステム」の導入に至りました。
金本先生 すべての症例で画質の良さを感じており、視認性が向上したと感じています。とりわけ細径スコープの画質が良く、太径スコープと遜色のない画質が得られるのは大きなメリットだと思います。
具体的な画質の評価としては、細かいびらんや局所的な粘膜病変のように、以前はあまり気付かなかった病変が明瞭に確認できるようになりました。また、十二指腸や小腸の絨毛について、「ELUXEO Vシステム」ではしっかりと観察できたと感じています。犬と猫に関しては、びまん性疾患が多く、その中で絨毛が萎縮していると重度の病変である可能性が高くなります。重症度の評価は組織学的な検査で行いますが、その結果が出るまでには1~2週間かかるので、その前に内視鏡で絨毛の状態を確認して、ある程度の評価ができることには一定の意義があると捉えています。加えて、まだ検証はできていないものの、絨毛が萎縮している箇所等を狙って採材することで生検の精度が向上し、ひいては診断の精度向上につながる可能性もあると考えています。









金本先生 これまで特殊光観察はほとんどしていなかったのですが、現在は全症例で記録を取っており、白色光では何もないように見えるところでも LCl・BLI観察を行うと何かが見えたりすることがあります。そういった症例を集めて検討を行うことで、将来的には LCl・BLI観察で炎症の程度や血流の異なる箇所を見極めて生検を行うという使い方もできるのではないかと期待しています。
- * LCI(Linked Color Imaging)…複数の高出力LED照明を用い、白色光と短波長狭帯域光を生成して画像を取得。赤色領域の彩度差・色相差を拡張し、粘膜のわずかな色の違いを強調した画像を提供。
BLI(Blue Light Imaging)…複数の高出力LED照明を用い、白色光と短波長狭帯域光を生成して画像を取得。発光強度を変えて照射しさらに画像処理を組み合わせることで、血管や表面構造などの観察に適した画像を提供。
金本先生 以前から使用していたメーカーのスコープと操作が同じなので違和感なく使用できています。また、ハンドル部分がコンパクトなので使いやすいと思います。
挿入性も良好で、技術的に難易度の高い回腸等も含めて現状では全症例で問題なく挿入できています。それぞれの動物で挿入する角度や位置が異なり、症例によって挿入のしやすさに違いがあるため、挿入性に関しては術者の経験や技術による部分も大きいと思います。しかし同時にスコープの性能も重要で、例えば私はこれまでに多くの検査・処置を経験してきましたが、以前、他院で使用した海外製のスコープで初めて十二指腸になかなか挿入できないという経験をしました。それとはまったく違い、ELUXEO Vシステムのスコープは十分な挿入性を備えているので、経験の少ない獣医師でも一般的な症例であればスムーズに挿入できると思います。
もう一つ、細径スコープについては先端のわん曲部がコンパクトに曲がるので、特に小さい動物の胃の内部が観察しやすいと感じています。また、この仕様は鼻咽頭の観察にもメリットをもたらしています。鼻咽頭の観察は、喉までスコープを入れて狭いところで反転させなければいけないので難易度が高く、穿孔のリスクもあるのですが、わん曲部がコンパクトに曲がることでスムーズかつ安全に観察が行えています。
金本先生 動物の大きさや目的によって使い分けています。例えば、体重4kg程度の動物で上部も下部もしっかり検査を行う場合は、幽門部や回盲部を通る際のリスクを考えて細径スコープを選択します。これに対して、胃内異物であれば、小型の動物でも鉗子口が大きくて視野が広い太径スコープを選択する場合もあります。
なお、以前に使用していたスコープは鉗子口が2.0mmで採材に失敗してしまうことが時折あリましたが、 ELUXEO Vシステムの導入後はそうした失敗が減ったと感じています。これはおそらく太径スコープは2.8mm、細径スコープは2.4mmと、鉗子口が大きくなったことが一つの要因ではないかと考えています。
金本先生 最も印象に残っている症例は、ビーグル(中年齢)の胃のリンパ腫です。犬の胃のリンパ腫は極めて稀である一方、胃腺がんは犬の胃の腫瘍の中では比較的多いものになります。そして胃腺がんは発見した時にすでに進行しているケースがほとんどであったり胃を部分的に取る治療を行うと吐き気等の合併症が起きやすく、非常に治療が難しいことが知られています。この症例では、事前のさまざまな検査結果から胃腺がんであろうと考えられました。そこで、ご家族さまに「かなり厳しい状況かもしれない」とお話をしました。こういった場合、「内視鏡検査をしても治療に結びつかないのであれば」ということで、検査をご希望されない方もいらっしゃるのですが、「内視鏡検査をすれば治療の可能性が出てくるかもしれない」とご家族さまにお話をしたところ、ご理解いただけて検査に進むことになりました。その結果、胃のリンパ腫と診断できたものの、大細胞性リンパ腫だと分かりました。そこで、犬の胃のリンパ腫はそもそもデータが少ないことを踏まえて、化学療法をお勧めして治療を行ったところ、最終的に寛解しました。その後も長く経過を見させていただいたのですが、結局再発することはなく、高齢になって他の病気で亡くなるまで元気に過ごしていました。
金本先生 新たな診断装置・検査技術等の開発および普及活動に期待するとともに、動物検体受託検査サービスのデータの検証にも注力していただければ獣医療の進歩につながると考えています。













