富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、複数の半導体チップを一つのパッケージに実装する先端パッケージング向け研磨剤「CMPスラリー*2」の販売をこのたび開始しました。本製品は、AI半導体の性能向上の鍵を握る先端パッケージング技術の一つ「ハイブリッドボンディング」で接合面を平坦化する必要不可欠な研磨剤として、大手半導体デバイスメーカーに採用されました。
CMPスラリーは、半導体製造においてウエハーの表面を研磨して平坦化する工程で使用される研磨剤です。半導体デバイスの微細化と積層化が進むに伴い、ウエハーのさらなる平坦化が求められるなど、製造工程の中で必要不可欠な役割を担っています。ウエハーの平坦化には、非常に高い精度が求められます。その精度は、300ミリ径のウエハーの面積を東京23区の広さに例えると、23区全体の表面にある全ての凹凸を、高さ1ミリ以内の誤差に抑えながら平坦にできるほど緻密なレベルと言われています。CMPスラリーは、主に半導体製造の前工程で使われていますが、近年では、複数の半導体チップを接合する先端パッケージング工程でも使用されるケースが増えています。
当社は、米国アリゾナ州、台湾の新竹市および台南市、韓国天安市、熊本県菊陽町にあるCMPスラリーの生産拠点に加え、2026年春からベルギー ズヴェインドレヒトでもCMPスラリーの製造設備を稼働予定です。顧客である半導体デバイスメーカーの近くで生産し「地産・地消」を実現することに加え、開発・生産・品質管理でも近傍から顧客をサポートする「地援」を推進することで、現在、CMPスラリーにおいて世界で高いシェアを保有。中でも、先端半導体の製造に使われ、高い成長が見込まれている銅配線用CMPスラリーでは世界トップシェアを獲得しています。当社の銅配線用CMPスラリーは、ウエハーの表面を研磨しやすくするよう性質を変化させる添加剤や、研磨した後の銅の酸化を防止する防食剤の独自処方技術に加えて、砥粒を高濃度でも安定的に分散させる技術により、銅に対する高い研磨効率と平坦化性能を実現しています。
今回、当社は、前工程向け銅配線用CMPスラリーを先端パッケージング向けに進化させた新製品の販売を開始。銅と酸化膜が混在するハイブリッドボンディングの接合面を高い精度で平坦化するために、添加剤・防食剤・砥粒などの処方を最適化しました。
今後、当社は、再配線層やマイクロバンプ*3など、さまざまな先端パッケージング材料向けに本製品を展開していきます。また、最先端半導体製造の前工程向けCMPスラリーについてもさらなる技術開発を進め、半導体の微細化に貢献していきます。
当社は、フォトレジスト*4やフォトリソグラフィー周辺材料*5、CMPスラリー、ポストCMPクリーナー*6、薄膜形成材*7、ポリイミド*8、高純度プロセスケミカル*9など半導体製造の前工程から後工程までのプロセス材料や、イメージセンサー用カラーフィルター材料をはじめとしたWave Control Mosaic(ウエイブ コントロール モザイク)™*10をグローバルに展開しています。
当社は今後も、最先端からレガシーノードまで半導体製造プロセスのほぼ全域をカバーする豊富な製品ラインアップに加え、日米欧アジアの主要国に製造拠点を有する安定供給体制や高い研究開発力を生かしたワンストップソリューションの提供により、顧客の課題解決に取り組み、半導体産業の発展に貢献していきます。
- *1半導体の先端パッケージング技術の一つであり、主にチップ同士、またはウエハー同士を直接接合するための高度な接続技術を指す。
- *2 硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平坦化する研磨剤。CMPは、Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
- *3 半導体チップ同士やチップと基板を高密度で接続する、直径数マイクロメートルから数十マイクロメートル(μm)の微細な突起状の端子。高性能・小型化を実現する先端パッケージング技術に使われ、チップと基板間の配線を短縮し、信号伝達の高速化や放熱性向上に貢献する。
- *4 半導体製造の工程で、回路パターンの描画を行う際にウエハー上に塗布する材料。
- *5 半導体製造のフォトリソグラフィー工程で使用する現像液やクリーナーなど。
- *6 CMPスラリーによる研磨後に、金属表面を保護しながら、粒子、微量金属および有機残留物を洗浄するクリーナー。
- *7 低誘電率の絶縁膜を形成するための材料。
- *8 高い耐熱性や絶縁性を持つ材料。半導体の保護膜や再配線層の形成に使用される。
- *9 洗浄・乾燥工程に使われる高純度薬品。半導体製造の洗浄・乾燥工程で異物を除去したり、エッチング工程にて金属や油脂などを取り除くために使用する化学薬品。
- *10 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサーなどのイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。Wave Control Mosaicは、富士フイルム株式会社の登録商標または商標です。
富士フイルムホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
富士フイルム株式会社
エレクトロニクスマテリアルズ事業部
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