富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、2026年2月22日 からの5日間、米国カリフォルニア州サンノゼで開催される国際光工学会SPIE主催の半導体関連技術の国際カンファレンス「SPIE Advanced Lithography + Patterning 2026」(以下、「SPIE 2026」)において、最新の研究成果を論文発表することをお知らせします。
当社の半導体材料事業は、2030年度に2024年度比で倍増となる売上高5,000億円を目指す成長戦略の一環として、AI半導体向けを中心に需要が拡大している先端レジスト市場に注力し、シェア拡大を目指しています。
今回の「SPIE2026」での研究成果発表では、EUVレジストの性能強化とラインアップの拡充に加え、ナノインプリント(NIL)レジストおよびPFASフリーレジストのラインアップ拡充に関する最新技術の開発進捗を紹介します。これらの最新技術は、半導体製造の微細化・高性能化に貢献し、当社半導体材料事業の成長を支える重要な柱になると考えています。
具体的には、ネガ型EUVレジストの欠陥低減性能の強化と、高NA EUV露光に対応する次世代フォトレジストの開発進捗を報告します。これにより、微細化が進む最先端半導体製造における高精度なパターン形成を実現し、競争力のある製品群を拡充します。
また、ポジ型EUVレジストの開発も進めており、幅広いニーズに対応可能な製品ラインアップの強化を図っています。さらに、ナノインプリントリソグラフィー*1用のUV硬化型スピンコーティングレジストや、環境負荷低減を目指したPFASフリーのポジ型ArF液浸レジストのラインアップ拡充も進行中です。
これらの取り組みを通じて、富士フイルムはAI半導体をはじめとする先端半導体市場でのシェアアップを目指し、最先端のリソグラフィー材料技術で業界をリードしてまいります。
- ネガ型EUVレジストの性能強化と「高NA EUVレジスト」の開発の進捗について
- ポジ型EUVレジストの開発の進捗について
- UV硬化型スピンコーティングレジストの開発の進捗について
- ポジ型ArF液浸レジストの開発の進捗について
「SPIE 2026」は、半導体業界のリーダーや著名な研究者、エンジニアが一堂に会し、半導体のリソグラフィー関連技術に関する最先端の研究成果と技術革新を共有する、世界的に権威のある国際カンファレンスです。今年も、500件を超える技術成果が発表されるほか、技術展示会も同時開催され、リソグラフィー技術の新たな進展や材料科学の革新、プロセス技術の改善など、多岐にわたるセッションと講演が予定されています。
富士フイルムは、フォトレジストやフォトリソグラフィー周辺材料*4、CMPスラリー*5、ポストCMPクリーナー*6、薄膜形成材*7、ポリイミド*8、高純度プロセスケミカル*9など半導体製造の前工程から後工程までのプロセス材料や、イメージセンサー用カラーフィルター材料をはじめとした 「Wave Control Mosaic(ウエイブ コントロール モザイク)™*10」などをグローバルに展開しています。
今後も当社は、最先端からレガシーノードまで半導体製造プロセスのほぼ全域をカバーする豊富な製品ラインアップに加え、日米欧アジアに製造拠点を有する安定供給体制や高い研究開発力を活かしたワンストップソリューションの提供により、顧客の課題解決に取り組み、半導体産業の発展に貢献していきます。
当社は、リソグラフィー分野において、EUVリソグラフィーとNILという2つの最先端の半導体技術領域で材料を提供している唯一の半導体材料メーカーです。
今回、当社は、「SPIE 2026」にてEUVレジスト、ナノインプリントレジスト、PFASフリーレジストの性能強化と新たなラインアップに関する最新の研究成果について4つの論文を発表します。
当社は、現在広く普及しているネガ型レジストの現像工程であるNTIプロセス*11を世界で初めて開発・実用化し、ArF露光*12を用いた半導体の微細化をリードしてきました。EUV向けに進化させたNTIプロセスに対応するEUVレジストとEUV現像液を組み合わせて提供することで、回路パターンの形成プロセスを最適化し、さらなる微細化に貢献します。EUVレジストでは、当社が従来のフォトレジストなどの開発で培った機能性分子技術を活用して、EUV露光時のレジスト膜中の酸濃度を均一に保たせることで、従来の化学増幅型レジストの課題であった回路パターンのばらつきを約17%*13低減させることに成功。EUV現像液では、有機溶剤の処方を工夫することで、独自のNTI現像液*14をEUV向けに進化させました。現像時のレジストの膨潤を極限まで抑え、回路パターンのさらなる微細化に貢献します。
本発表では、NTIプロセスに対応するネガ型EUVレジストの「欠陥低減」性能強化と、最先端半導体の微細化を実現する次世代技術である高NA EUV露光に対応するフォトレジストの開発の進捗状況を紹介します。
EUVレジストの性能は、回路パターンのばらつきによって影響を受け、現像均一性を保つことが重要です。液浸ArF液浸リソグラフィーで有機溶剤を用いたネガ現像(NTI)技術を他社に先駆けて開発した富士フイルムは、同様の溶剤技術をEUV向けに進化させています(EUV現像液)。また、当社が従来のフォトレジストなどの開発で培った機能性分子技術を活用して、レジストの反応制御機能を持つ光分解性クエンチャー連結型光酸発生剤(以下、PCP)*15を導入。EUV露光時のレジスト膜中の酸濃度を均一に保つことで、従来の化学増幅型レジストの課題であった回路パターンのばらつきを低減させることに成功しました。EUV現像液を用いたネガ現像方式とPCPの組み合わせは、欠陥低減と高NA EUV対応レジストの開発実現に貢献します。
本発表では、次世代最先端半導体製造におけるEUVリソグラフィーの性能向上を目的とした、ポジ型EUVレジストの開発の進捗について報告します。当社は、EUV光の吸収効率を高めて解像度を改善するとともに、エッチングプロセスにおける耐久性の改善を目指して、ポジ型EUVレジストの開発を進めており、「解像度とエッチング耐性を両立し得るレジストプラットフォーム」の開発成果を発表します。また、量産適正に必要不可欠な環境耐性についても、既存ポジ型EUVレジストと同等レベルを保有することを示すデータも紹介します。本研究により、高NA EUV対応含む次世代ポジ型EUVレジストのさらなる最適化の基盤確立を目指します。
当社のナノインプリントレジストは、マスクに刻み込まれた複雑な回路パターンに均一に素早く充填でき、ナノメートルレベルの回路パターンを忠実に短時間で転写・形成。さらに、UV照射により硬化させた後、マスクを高速で剥がしてもレジストに転写された回路パターンに欠損を生じさせない優れた離型性を発揮します。これにより、NILの実用化に向けた課題であった、スループット(時間当たりのパターニング処理能力)向上と低欠陥による歩留まり改善を可能にし、先端半導体製造時のコスト低減と省電力化に貢献します。
NILは、20nm以下の微細構造を容易に転写できるため、次世代半導体デバイスにおけるナノパターンの形成に有望な技術です。半導体デバイス製造では、高スループット(処理速度)が要求されるため、NILによる回路パターン形成の生産性向上に向けてスピンコーティングによるレジスト塗布プロセスが開発され、ガス拡散に時間を要するレジスト吐出時間と充填時間の短縮が可能となりました。本研究では、このプロセスに適した優れた剥離性と良好なパターニング性能を示すUV硬化型スピンコーティングレジストの開発について紹介します。
当社は、環境や生態系への影響が懸念される有機フッ素化合物PFASを一切使わないネガ型ArF液浸レジストを2025年に開発しました。当社のPFASフリーネガ型ArF液浸レジストは、当社が銀塩写真の研究開発で培った機能性分子の設計技術に加え、フォトレジストなどの半導体材料開発で培った分子設計技術や有機合成技術、処方技術、解析技術により、回路パターンの形成における優れた酸反応効率や、先端のArF液浸露光時の水残りを低減する高い撥水性を実現し、バラつきの少ない微細な回路パターンを形成します。また当社は、PFASを含まないナノインプリントレジストを2024年に発売。レジストのPFASフリー化の技術やノウハウを、EUV向けをはじめとした他の先端レジストにも適用することで、先端レジストのPFASフリー化を進めています。
本発表では、既に発表済のネガ型のPFASフリーArF液浸レジストに加え、ポジ型のPFASフリーArF液浸レジストの開発状況について報告します。光酸発生剤(PAG)、クエンチャー、添加剤の設計を大幅に見直し、既存のポジ型ArF液浸レジスト同等のリソ性能を達成しました。加えて、液浸露光に必須とされる表面撥水性に関する分析や、液浸欠陥評価の結果について、本発表で紹介します。
- 開催日
2026年2月22日~26日
- 会場
米国カリフォルニア州
San Jose McEnery Convention Center
- *1 高性能な先端半導体を低コスト・省電力で製造できる新しい製造技術。半導体製造に用いるウエハー上のレジストに、回路パターンが刻み込まれたマスク(型)をハンコのように押し当てて回路パターンを転写・形成する技術で、半導体製造で広く使用されているフォトリソグラフィーと異なって現像工程やリンス工程がなく、露光に用いる複雑な光学系も不要。
- *2 極端紫外線(EUV)を用い、10ナノメートルより微細な世代に必要とされる最先端リソグラフィー技術。
- *3 フォトレジスト(レジスト)は、半導体製造の工程で、回路パターンの描画を行う際にウエハー上に塗布する材料。
- *4 半導体製造のフォトリソ工程で使用する現像液やクリーナーなど。
- *5 硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を均一に平坦化する研磨剤。CMPは、Chemical Mechanical Polishing(化学的機械研磨)の略。
- *6 CMPスラリーによる研磨後に、金属表面を保護しながら、粒子、微量金属および有機残留物を洗浄するクリーナー。
- *7 低誘電率の絶縁膜を形成するための材料。
- *8 高い耐熱性や絶縁性を持つ材料。半導体の保護膜や再配線層の形成に使用される。
- *9 洗浄・乾燥工程に使われる高純度薬品。半導体製造の洗浄・乾燥工程で異物を除去したり、エッチング工程にて金属や油脂などを取り除くために使用する化学薬品。
- *10 広範囲な波長の電磁波(光)をコントロールする機能性材料群の総称。デジタルカメラやスマートフォンに用いられるCMOSセンサーなどのイメージセンサーのカラーフィルターを製造するための着色感光材料を含む。Wave Control Mosaicは、富士フイルム株式会社の登録商標または商標です。
- *11 Negative Tone Imaging プロセス。露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程。
- *12 ArF(フッ化アルゴン)エキシマレーザー光(波長193ナノメートル)を用いる露光手法で、現在最も普及している先端リソグラフィー技術。
- *13 回路パターンのゆらぎの指標となるLWR(Line Width Roughness)を、PCPを用いない場合と比べて約17%低減させた。当社調べ。
- *14 Negative Tone Imaging現像液。露光後に感光しなかった部分を現像液で除去して回路を作るネガ型の現像工程で使用される。
- *15 PAG Connected PDQ(Photo Decomposable Quencher:光分解性クエンチャー)の略。光酸発生剤(PAG)とクエンチャーを偏りなく分散させるために、光酸発生剤(PAG)とクエンチャーを結合させた機能性材料。
富士フイルム株式会社
エレクトロ二クスマテリアルズ事業部
- * 記事の内容は発表時のものです。最新情報と異なる場合(生産・販売の終了、仕様・価格の変更、組織・連絡先変更等)がありますのでご了承ください。













