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富士フイルム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長・CEO:後藤 禎一)は、グループ会社である富士フイルム富山化学株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:佐藤 充宏)が、再生医療等製品「セイビスカス®注」の日本国内における製造販売承認を取得したことをお知らせします。なお、同製品は、「半月板切除術が適応となる半月板損傷」を適応症とし、国内初*1となる半月板損傷に対する再生医療等製品です。
「セイビスカス®注」は、患者自身の膝の内部から採取した滑膜組織から分離、培養増殖させて得られた自家滑膜間葉系幹細胞*2を用いた再生医療等製品です。現在、半月板損傷の治療では、約5割のケースで損傷部を取り除く半月板切除術が行われています。半月板切除術は、短期的には症状の改善が認められるものの、長期的には変形性膝関節症*3の進行リスクが高まると指摘されていることから、半月板の温存を重視する考え方が近年の整形外科領域で広く浸透しています。今回の承認により、「セイビスカス®注」が半月板の温存を可能にする新たな治療選択肢となることが期待されます。
富士フイルム富山化学株式会社は、国立大学法人 東京科学大学の関矢一郎教授が主導した医師主導治験、および臨床第Ⅲ相試験結果を踏まえ、2025年5月13日に製造販売承認申請を行い、このたび承認を取得しました。臨床第Ⅲ相試験では、半月板切除術が適応となる半月板損傷患者19例を対象とした、単群多施設共同試験*4を行いました。スクリーニングから投与後52週時点までのリスホルムスコア*5の変化量を主要評価項目としたほか、投与前後の半月板損傷部の修復を客観的に評価するために、副次評価項目として第三者専門家による関節鏡評価を投与後52週時点で実施しました。さらに投与後104週までMRIによる追加評価を行いました。
富士フイルムは、膝関節疾患にかかわる整形外科領域において、3D画像解析システム(SYNAPSE VINCENT*6)の「膝関節解析ソフトウエア」を提供しています。本ソフトウエアは、日本人変形性膝関節症MRI実態調査である「神奈川ひざスタディ」および「神奈川ひざスタディ追跡調査2026」*7による変形性膝関節症の疫学研究でも活用され、変形性膝関節症やその初期病変である半月板損傷の診断に繋がることが期待されます。
「セイビスカス®注」は、半月板の温存を重視する考え方を象徴する国際的なスローガンである「Save the Meniscus(半月板を温存しよう)」を名前の由来とします。富士フイルムグループは、本製品を通じて半月板損傷に対する新たな治療選択肢を患者さまにお届けするとともに、予防から診断、治療にいたる整形外科領域のソリューションを通じて、人々の健康維持・増進に貢献していきます。
- *1 医薬品医療機器等法(薬機法)に基づき製造販売承認を取得した再生医療等製品として国内初。
- *2 患者自身の滑膜組織から採取した間葉系幹細胞。間葉系幹細胞は、生体内に存在し、一定の分化能/増殖能を有する細胞。
- *3 関節軟骨の摩耗を特長とする疾患で、国内では2,000万人超の患者がいると推定されている。
- *4 比較群を設けず、複数の医療機関で共通の計画書に従って実施する臨床試験。
- *5 膝の痛みや不安定性、ひっかかりなどの項目について、症状に従い段階的に点数化される評価法。半月板の機能・症状の評価に適しており、広く半月板治療の評価として採用されています。
- *6 SYNAPSE VINCENTは以下の医療機器を指します。
販売名:富士画像診断ワークステーション FN-7941型、認証番号:22000BZX00238000 - *7 国立大学法人 東京科学大学 再生医療研究センター長・関矢一郎教授主導、神奈川県協力
半月板は、膝関節のクッションの役割を担う重要な組織です。半月板損傷は、加齢やスポーツなどでの強い衝撃により、半月板が断裂することにより生じます。膝の曲げ伸ばしのときに痛みやひっかかりなどを伴い、重症の場合には膝に水が溜まる、または、歩行困難に陥るケースもあります。
現在、半月板損傷の治療法として、関節鏡を用いて半月板を治療する縫合術と、切除術があります。縫合術が適応できる断裂の部位や状態は限定的であるため、日本においては約5割で切除術が行われています。しかし、切除術では、半月板が失われることで膝の軟骨への負荷が大きくなり、変形性膝関節症が進行するリスクが高まるといった問題があります。変形性膝関節症が進行すると、人工関節などの侵襲の大きい外科手術が適応となり、術後は激しいスポーツができなくなるなど、日常生活が制限されることが課題になっています。
半月板手術は、日本では年間約5万件実施されており、そのうち約5割が半月板の切除術である。なかでも、40代以上の患者は約6割で切除術が採用されている。
国立大学法人 東京科学大学(IST)再生医療研究センター長の関矢一郎教授が開発した細胞治療技術は、関節鏡を用いた低侵襲な方法により、自家滑膜間葉系幹細胞を培養した細胞懸濁液を投与するものです。投与後、同細胞が半月板損傷部に接着し、軟骨細胞へと分化して軟骨基質を産生するとともに、滑膜組織を損傷部へ誘導することで、損傷部の修復を促進します。
ISTと当社は、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の支援*8を受けて、本技術を応用した半月板損傷治療を実現するための共同研究を実施。さらに、ISTはAMEDの支援*9のもと、本技術による医師主導治験を実施するなど、「セイビスカス®注」の製品化に向けた取り組みを進めてきました。
- *8 AMEDの再生医療実用化研究事業の研究開発課題「滑膜幹細胞による変形性膝関節症(軟骨・半月板)の再生医療の実用化」(支援期間:2015年度~2017年度)
- *9 AMEDの再生医療実用化研究事業の研究開発課題「自家滑膜幹細胞の半月板損傷を対象とする医師主導治験」(支援期間:2018年度~2019年度)
富士フイルム富山化学は、医師主導治験の結果をうけて、2023年1月より、半月板の切除術が適応となる半月板損傷の患者を対象に、「セイビスカス®注」の有効性および安全性を確認することを目的とした臨床第Ⅲ相試験を実施しました。本試験は、半月板切除術が適応となる半月板損傷患者で、スクリーニング前直近12週間の保存治療で臨床症状が改善せず、特に複雑かつ難治な断裂形態であるフラップ断裂*10が疑われる19名を対象とした、単群多施設共同試験です。
本試験の主要評価項目は、フラップ断裂を有すると診断された患者15名における膝の痛みや機能を判定する評価法であるリスホルムスコアの変化量(治療前スクリーニング時~投与後52週時)を採用しました。その結果、スクリーニング時のリスホルムスコア(平均値±標準偏差)は38.1±8.9、投与終了後52週時は91.6±8.2であり、リスホルムスコアの変化量(最小二乗平均[95%信頼区間])は53.5[48.7、58.2]となり、臨床的意義のある変化量に対して、統計学的に有意な差が認められました。その後104週時のリスホルムスコアの変化量は57.8[54.4、61.2]であり、投与後52週での半月板の機能・症状の改善が維持されていました。さらに副次評価項目に、第三者専門家による治療前後の関節鏡画像評価および製品投与後104週までのMRI画像の経時的評価、痛みなどの症状評価などを設定しました。第三者専門家による関節鏡所見評価の結果、製品投与後52週時において自然治癒が期待できない無血行野である半月板中央部の完全癒合が認められた患者の割合は、フラップ断裂を有する患者の35.7%(5/14例*11)でした。また、対象者全員に対して行われたMRIによる半月板修復部の状態の画像評価では、73.7%(14/19例)で改善が認められました。製品投与後104週まで半月板再断裂により再手術に至った患者はいませんでした。なお、本試験において、本品との因果関係が否定できない有害事象は認められませんでした。
- *10 半月板の一部が裂け、断裂した組織がめくれ上がった状態の損傷。
- *11 1例は、有害事象の発現により製品投与後52週時の関節鏡検査が未実施。
富士フイルムホールディングス株式会社
コーポレートコミュニケーション部 広報グループ
富士フイルム株式会社
ライフサイエンス事業部
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