ASEAN国家製品試験所の技術者が集い、国際規格に基づくEMC評価の知識と技術を学ぶインターンシップを開催
2025年10月21日(火)~30日(木)、富士フイルムビジネスイノベーション国際認証センターで「EMCインターンシップ」が開催されました。このインターンシップは、日・ASEAN統合基金(JAIF)の支援のもと、一般社団法人 ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)が実施する「マルチメディア機器の安全性、電磁両立性(Electromagnetic Compatibility(EMC))およびエネルギー効率の適合性評価のためのトレーナー能力開発プログラム」の一環として行われたものです。
パソコンや複合機、テレビなどのマルチメディア機器を販売する際には、それらの製品が安全に使用できるか否かを確認する適合性評価が必要です。東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian Nations)各国では、海外市場へのスムーズな参入を目指し、国家試験機関で行う適合性評価を国際規格に基づいて実施しようとしています。しかし、多くの国家試験機関では国際規格に沿った製品の適合性評価経験が不足しており、適切な評価ができないだけでなく、評価を担う技術者の育成も十分に進んでいないという課題があります。そこで、ASEAN加盟国が自国内で正確に国際規格に基づく適合性評価を行えるようにするため、JBMIAではASEANの要望に基づき、2024年7月より優れた技術指導者の育成を目的としたワークショップや勉強会を継続して開催しています。
今回のインターンシップのテーマは「EMCの評価スキルとノウハウの習得」。マルチメディア機器を含めた全ての電気・電子機器からは、その機能上、微弱な電磁波が発生していますが、EMC評価試験では、その電磁波が周囲の機器の動作を妨げたり、逆に他の機器からの電磁波で製品の機能が損なわれたりしないかを確認します。このEMC試験は測定環境や設備の整備が非常に難しく、評価に用いる測定機器が正しく機能しているかを確認する「校正」も欠かせません。こうした理由から、校正の国際認証を取得し、充実した設備で国際規格に基づいた質の高い試験を実施しているJBMIA会員の富士フイルムビジネスイノベーション国際認証センターが、本インターンシップの会場として選ばれました。
温かな歓迎ムードと大きな期待に満ちた
オープニングセレモニー
インターンシップ初日の10月21日(火)には、12名の参加者たちを迎えるオープニングセレモニーが行われました。インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの国家試験機関で適合性評価を担当している技術者の皆さんを前に、富士フイルムビジネスイノベーション 執行役員の藤田 尚寿が「EMCインターンシップにASEAN諸国からご参加いただく皆様を心より歓迎いたします」と挨拶。また、「この国際認証センターは、国際規格ISO/IEC 17025に基づく認定試験所です。EMC分野では、ISO/IEC 17025校正認定も取得しており、信頼性の高い適合性評価を実現しています」とセンターの特長を説明しました。
複雑なEMC評価を12のテーマで多角的に解説
8日間のインターンシップ
各講義には、国際認証センターのスタッフだけでなく、日本をリードするJBMIA会員企業の技術者たちが講師として登壇。12のテーマに沿って、座学と実習を組み合わせながら幅広い内容が取り上げられました。
EMC試験を実施する電波暗室内で製品を適切に評価できるか否かを判断するための設備評価方法の一つである「サイト電圧定在波比(Site Voltage Standing Wave Ratio(SVSWR))測定」を取り上げた回では、測定方法と注意点を詳しく説明。インターンシップ参加者たちは、これまで自国で実施したことのないSVSWR測定について、メモを取りながら熱心に耳を傾けていました。また、最新の測定機器を実際に操作する実践的なプログラムも体験し、理解を深めました。
また、「無線機能が搭載されたマルチメディア機器の評価」をテーマとした講義では、電磁波を測定するためのアンテナや電磁波吸収体など測定に必要な設備の配置、試験の対象となる製品(Equipment Under Test (EUT))設置時の注意点、EUTに搭載された無線機能と他機器との干渉を避ける方法など、測定のポイントを座学で学習。その後、実際の測定環境を再現した半無響電波暗室の試験設備を用いた実習では、参加者から多くの質問が寄せられました。
さらに、試験施設が適切な測定環境か否かを判断するために必要な「電界均一面(Uniform Field Area(UFA))」や「正規化サイトアッテネーション(Normalized Site Attenuation(NSA))」の測定方法から、複合機を試験する際の注意点まで、複雑なEMC評価試験を多角的に学べるさまざまな講義が行われました。参加者たちは、「私の勤める試験機関の評価精度向上に欠かせない知識を習得できた」「日本はEMC評価試験をいち早く導入した国。経験豊富な日本の講師陣から、8日間にわたり多岐にわたるテーマを詳しく学べたのは貴重な経験だった」と語り、2026年6月まで続く今後のワークショップ、勉強会にも大きな期待を寄せていました。
富士フイルムビジネスイノベーションは、これからも「マルチメディア機器の安全性、EMCおよびエネルギー効率の適合性評価のためのトレーナー能力開発プログラム」への積極的な支援を通じ、ASEAN地域の技術力向上に貢献していきます。