富士フイルムビジネスイノベーション

若手メンバーの「主体性」を引き出し、AIの社会実装を加速させる。年齢や役職を超えて相互に学び合うコアテクノロジーラボの組織風土

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#働き方
#AI技術
水﨑さん、田村さん、鈴木さん

富士フイルムビジネスイノベーション(以下、富士フイルムBI)は、AIを活用した事業拡大や新たな価値創造を推進するため、2025年4月にAI技術の研究開発を担う「コアテクノロジーラボ」を設立しました。

技術革新の進化が速い時代において、AI開発の最前線に立つ組織で活躍する若手とリーダー層は、どのような視座やモチベーションを持ってプロジェクトに取り組んでいるのか。

今回はコアテクノロジーラボに所属する若手メンバー2名とグループ長に、若手が主役となる組織風土のあり方やメンバーの主体性を引き出すマネジメント、コアテクノロジーラボが目指す未来について話を聞きました。

田村 和也さん

田村 和也

Kazuya Tamura

ビジネスソリューション事業本部 コアテクノロジーラボ 1G グループ長 兼 CTO戦略室 AI CoE

2011年入社。入社後は複合機の流体のシミュレーション技術やAIを用いた故障の予兆診断技術の研究に従事。全社業務DXに向けたAI活用推進に業務領域を広げ、現在はソリューションサービス向けのAI技術開発、商品のAI搭載加速のためのAI共通基盤(AI-Hub)開発のマネジメントを務める。

水﨑 裕太郎さん

水﨑 裕太郎

Yutaro Mizusaki

ビジネスソリューション事業本部 コアテクノロジーラボ 兼 CTO戦略室 AI CoE

2020年入社。複合機の認証機能開発チームにてOAuth/OIDCプロトコルを活用したクラウド認証機能の開発保守に従事。2024年から現部門に移動し営業支援AIのような機能特化型のAIシステムから汎用AIチャットシステムまで多様なAI開発に従事している。

鈴木 太一さん

鈴木 太一

Taichi Suzuki

ビジネスソリューション事業本部 コアテクノロジーラボ

2023年電機メーカーに入社。故障解析・統計解析を専門としてカメラ画像センサーの品質保証・信頼性技術開発に従事。2024年10月、KaggleがきっかけでAIに強い興味を持ち富士フイルムBIに転職。LLMのモデル開発/LLMの業務利用に関するテーマに従事。営業支援AIや保守DXに関するテーマの技術開発を行う。

最先端の先にある「価値」を見極め、現場の最適解に落とし込む姿勢

談笑する三人

── はじめに、現在コアテクノロジーラボで取り組んでいる業務内容について教えてください。

水﨑 私はコアテクノロジーラボでAI機能の開発を担当し、その成果を社内DXの推進や各種商材の開発へとつなげる役割を担っています。具体的には、AI開発の基盤となる部分を整備しつつ、社内向けのChatGPTのような汎用型AIから営業支援など用途を絞った特化型AIまで、幅広い領域の開発に携わっています。

鈴木 私もAIの技術開発を担当しており、主なテーマとしては営業活動を支援するAI機能の導入や、機器の保守・メンテナンス領域におけるAI活用に取り組んでいます。

田村 自分はCTO戦略室で活動しつつ、コアテクノロジーラボの中にある3グループの1つで、水﨑さんと鈴木さんも所属する1Gのリーダーを務めています。CTO戦略室で策定されたAI戦略を、コアテクノロジーラボで実際に商品化して実現していく役割を担っています。そのために、他部門との折衝や「技術をどう商品に結びつけるか」という戦略設計、組織のマネジメントも行っています。

インタビューに答える水﨑さん

── どのあたりに仕事のやりがいやモチベーションを感じていますか?

水﨑 AI技術は注目を集める一方、その内容は非常に難しく、関連する領域も幅広いため、人にわかりやすく伝えることが大変な分野になっています。

だからこそ、そうした技術が実際の業務にきちんと組み込まれ、成果として形になっていくまでの一連の流れに関われるのはとても嬉しくて、今後も続けていきたいと感じています。

また、業務の中で取り組んでいた技術が、業界でも注目されるコンテンツだったりすると、本当に取り組んでよかったと実感できるので、それがモチベーションにもつながります。

国内外の最新AIトレンドは常に追っていますが、実際のビジネスで価値を生む技術は、必ずしも最先端のものだけとは限りません。ビジネスにフィットする技術を見極めることは、現場の仕事を通じてこそ得られる感覚だと思っています。

そのような視点を持ちながら、鈴木さんや田村さんから得た情報も取り込み、自分の頭の中で整理・融合させて実践につなげていくプロセスを大切にしていますね。

インタビューに答える鈴木さん

鈴木 仕事でやりがいを感じるポイントは3つあると思っています。

1つ目は、「あったらいいな」と思うアイデアに対して、AIをはじめとする新しい技術や既存の技術をうまく組み合わせて具体化し、それが実際に現場で使われるというのが、すごくモチベーションになります。

2つ目は、業務を進めるなかで、営業や保守の現場の方、あるいは社外の協業先の方など、さまざまな人と関わりながら「コアテクノロジーラボだからこそ提供できる価値は何か」を考えながら動くのが、とても楽しいと感じていますね。

そして3つ目は、もともと独学でプログラミングを学んでこの分野に入ったので、最初は分からないことだらけでしたが、実際の業務を通じて、ソフトウェアの知識やデータの扱い方など、できることが少しずつ増えていく感覚が純粋に面白さを感じている部分です。

田村 私は大きな戦略の実現を担う立場として、他部門からの信頼を得ながら一緒に働いて、ひとつの成果物を協力して作り上げるプロセス自体にモチベーションを感じます。技術部門には固有の難しさがあって、それを営業や企画の人たちへ的確に伝えるのは簡単ではありませんが、そのギャップをすり合わせながら、ひとつのものを形にしていくのが大きなやりがいだと思いますね。

技術部門と他部門の認識を合わせるうえで、言葉だけで説明すると“空中戦”になりがちですが、小さなプロトタイプやポンチ絵を見せながらイメージを共有することで、お互いの理解を深めながら次のステップへ進みやすくなります。水﨑さんと鈴木さんは最初に小さなモックを作って見せて、そこからブラッシュアップしていくのが得意で、そのおかげでプロジェクトが着実に前に進んでいると感じます。

個人の「やりたい」や「考え」をまず受け止める。
若手が主役になれる組織づくり

インタビューに答える田村さん

── 若手でも裁量を持ってプロジェクトに取り組める組織風土を作るために心がけていることは何かありますか。

田村 まずはメンバーの意見をきちんと集めることを意識しています。メンバーが思っていることを言えない雰囲気だと組織はうまく回らないので、「何を考えているのか」をしっかりと吸い上げることを心がけていますね。

また、チームのメンバーはそれぞれ個性や考え方、バックボーンが違うので、「最初から前に出すぎないようにすること」を基本スタンスとし、多様性を尊重しながら一度受け止めるようにしています。そのうえで、状況によって方向性がずれてしまいそうなときは、自分がしっかり軌道修正をかけるように留意しています。

例えるなら、飛行機の目的地がハワイなのに、間違えてバンコクやグアムに向かいそうなときに、正しい航路に戻すフライトコントロールのような役割です。「プロジェクトや議論が今どの方向に向かっているか」を常に意識し、その軌道を適切に調整することを心がけていますね。

自分はもともと人間観察が好きで、メンバーそれぞれの思考プロセスや行動パターンを見ながら、その人に合った形で受け答えするようにしているんですよ。なので場合によっては、伝える内容が人によって変わることもあるんですね。

例えば、「水﨑さんならこう考えるだろう」と想像してアドバイスを工夫したり、鈴木さんを「太一くん」と呼んで親近感を持ちやすくするなど、必要に応じて一歩踏み込んだ関わり方を意識しています。

田村さんについて語る鈴木さん

── お二人にとってグループ長の田村さんはどのような存在に映っているのでしょうか。

鈴木 まさに田村さんは、パイロットのような役割を果たれていると感じます。私が初めてコアテクノロジーラボへ入った際に、田村さんはメンバーの意見に真摯に耳を傾けてくださる方という印象でした。

個々のやりたいことや意見を尊重してくれる風土があるなか、田村さんは会社全体の技術戦略を頭の中でしっかり描きつつ、メンバーそれぞれの希望や目標をその戦略にうまく組み込んでくれる方だと思います。

水﨑 自分が「Plism活動※」の活動に自主的に参加していたときに、小学生向け生成AIコンテンツを作っていたのですが、通常業務と並行しての活動だったため、業務量や内容などを相談させていただいていました。

先ほどのフライトの例で考えると、マネージャーによってスタイルは違うと思うんですが、田村さんの場合はしっかりと舵取りしながら、正しい方向に導く操縦士のようなイメージですね。特にAI時代ではアウトプットが膨大に生まれるため、「何を出すか」よりも「どう正しい方向に試行を導くか」が重要になります。

その点で、田村さんはまさにその役割を確実に担ってくれていると感じています。

業務の10%を使ってスキル向上やキャリア開発を促す社内制度

個人の「興味」を「組織のテーマ」に変換し主体性を引き出す

和やかな雰囲気の田村さん

── 田村さんと一緒に仕事をするなかで、「これは非常に参考になった」と感じた点について教えてください。

鈴木 田村さんは戦略を描いたうえで、「それをどう現場のテーマや活動に落とし込むか」をいつも意識されていて、その姿勢から非常に学ぶことが多いですね。私が担当するテーマの中に、他社技術との比較・調査があるのですが、これは私自身が興味を持ち、価値のあるものだと感じたものを田村さんに提案したところ、正式なテーマとして扱っていただけたのは嬉しく思いました。

ミーティングでも、「このテーマがコアテクノロジーラボとして取り組むべきAI技術の全体像の中でどういう位置づけなのか」を一緒に考えてくれるなど、とても勉強になっています。

どうしても自分一人で技術を追っていると、細かい技術の要素に入り込みがちですが、田村さんからは全体を俯瞰して見る視点を学べるので、将来的には自分も広い視野で技術を位置づけられるようになりたいと思っています。

田村さんについて語る水﨑さん

水﨑 田村さんから学んだのは、舵取りの上手さだけでなく、技術面における知見の深さです。自分が異動してきたタイミングで、その頃は最先端だったマルチエージェント技術について調べ、田村さんに報告したんですね。そうしたら、すでにその内容を把握されていて、技術に対するアンテナの高さと造詣の深さに驚かされました。

普段の業務でも、ボトムアップで提案したアイデアを組織としての仕事・テーマに変換してくれますし、逆に田村さんから技術のトピックを持ってきて、「こういうのをやってみよう」と渡してくれることもあります。さらに、成果につながりにくいものは、他のテーマと組み合わせるか、そもそも実施しないかなどの見極めが非常にうまく、仕事が進めやすい環境を整えてくれているなと感じています。

二人について語る田村さん

── 逆に田村さんがお二人から学ぶことはありますか?

田村 2人とも若いのに非常に優秀で、むしろ若手の方が最先端の技術をキャッチアップしている印象があります。そこに対して、ベテラン層である私たちがどう追いつくかは正直なところ課題ですけれど、風通しの良い風土があるからこそ、年齢や役職にかかわらずに、メンバー同士が相互に学び合える関係が成り立っていると思っています。

あとは技術面だけでなく、仕事の進め方についても学ぶことが多いですね。

水﨑さんがリーダーとして成長していく過程を見ていると、その進め方から学ばされる場面がたくさんありますし、鈴木さんは技術面での創意工夫が光るので、将来的にマネジメントとして後輩を育てていく立場になるんだろうなと感じています。

こうして2人が成長していく過程を見ることで、自分自身も取り入れるべき姿勢や考え方に気づかされることが多いなと思います。

「自分の軸」や「尖った強み」を持つ人と、より良いものを創りたい

プロジェクトについて語る二人

── 自分の専門領域にこだわらず幅広い分野にチャレンジできるからこそ、今後はどのようなプロジェクトに関わってみたいですか?

水﨑 今後は技術の発信にも注力していきたいと思っています。これまで、社内向けには技術の共有をしたりしていましたが、それ以外にもブログのような形で情報発信を行い、自分たちが仕事で得た知見を外部にも整理して伝えていくことで、自社の技術ブランディングを確立できると考えています。

また、仕事としての成果物だけでなく、自分の頭の中にある考えや知識を外に発信していくことも大事だと思っているので、そうしたアウトプットの機会をもっと増やしていけるようにしていきたいですね。

鈴木 コアテクノロジーラボとして、今はまだAI技術やモデルを世の中に出していく初期のフェーズだと考えています。もちろん、技術そのものも重要ですが、それ以上に「ビジネスとして価値はあるのか」「社会に役立つものか」を前提に考える必要があります。そういう観点でも、世界でも通用するレベルの優れた技術を作り上げ、それを世の中に伝えていくアピールもしていきたいと思っています。

── 生成AIの登場でスピード感が求められるなか、どういう人と一緒に働きたいとお考えですか。

水﨑 個人的には、自分の意見をしっかり言える人に入ってきてもらいたいなと思っています。お互いに意見を交わしながら、建設的な議論ができるような人が増えると嬉しいです。側から見たら生意気に思えても、物腰は柔らかく、場の雰囲気を壊さずに意見を言える方だとさらに良いですね。そういう人が増えると、コミュニケーションも活発になり、チームとしての質も高まるのではないでしょうか。

鈴木 水﨑さんと同じで、自分の軸を持ち、何かしら“尖ったもの”を持つ人がいると、たとえ意見が衝突しても、それを乗り越えて良い方向に進めていけると感じます。

その尖り方は技術力やリーダーシップ、業界の知識など色々とありますが、そういう強みを持った人たちが集まると、より良いものが生まれると思っています。

時代に合わせて存在意義を変化させ、持続的な価値を生み出し続ける組織を目指す

インタビューの最後で談笑する三人

── 最後に、コアテクノロジーラボとして今後取り組んでいきたいことをお聞かせください。

田村 社内外を問わず「コアテクノロジーラボで働きたい」と思ってもらえるようにしていきたいと考えています。そのためには、「個人のキャリア形成や成長を実現できる環境」と「会社の業績への貢献」を両立させていくことが大事になるでしょう。

富士フイルムBIの全事業領域に関われることは大きな強みで、私たちの技術が会社全体に広く展開できるのは大きな意義を感じています。だからこそ、自分たちが生み出したサービス、商品を家族や子どもに誇れる形で世の中に届け、「この会社で働けてよかった」という充足感を持って、定年を迎えられることを目指しています。

水﨑 数十年後にはAIが完全にチームや組織に組み込まれ、当たり前の存在になっていると思います。そうした意味ではAIに限らず、その時代ごとの“最先端”を捉え続けられる組織を作っていきたいですね。

実際に1年前は先進的だった技術が、今では当たり前になるほどAIの変化・進化は速くなっています。そのため、コアテクノロジーラボ自体が持続的な価値を生み出し、存続できる体制を構築していくべきですし、組織の存在意義もその時代に合わせて、常に最先端に挑み続けるための“舞台”としてアップデートさせていくことが重要なのではないでしょうか。

鈴木 お二人と重なる部分もありますが、事業的価値と技術的価値の両方を追求し続けられる組織でありたいなと思っています。世の中の技術変化のスピードを捉えつつ、コアテクノロジーラボだからこそできるコア技術をたくさん生み出していけるようになりたいですね。「富士フイルムBIといえばこの技術が強い」という認知を築き、それを事業にしっかり落とし込んでいければ理想的だと感じています。

写真
山野一真
古田島大介
編集
ヤスダツバサ(Number X)