富士フイルムビジネスイノベーション

課題は与えられるものではなく、自ら見出すもの。
CTOと人事が語るAI時代の組織変革

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笑顔の三人

AIをはじめとする技術の進化によって、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。変化のスピードが加速する中で、求められるのは与えられた課題を解く力だけではありません。自ら問いを立て、新たな価値につながる課題を見出す力がますます重要になっています。富士フイルムビジネスイノベーションでは、こうした力を「課題形成力」と捉え、2026年5月から若手ソフトウェアエンジニア向けプログラム「Edge Talks」を開始しました。なぜ今、課題形成が必要なのか。そして、AI時代に求められる人材とはどのような存在なのか。取締役 常務執行役員 CTO 鍋田氏と人事部の伊熊氏、佐々木氏に話を聞きました。

鍋田 敏之さん

鍋田 敏之

Toshiyuki Nabeta

富士フイルムビジネスイノベーション 取締役 常務執行役員 CTO

1994年に富士フイルムに入社。写真フィルムの材料開発を経た後、医療IT・AIを活用した医療機器やサービス開発を牽引し、2022年に執行役員に就任。2024年より富士フイルムビジネスイノベーション株式会社の取締役常務執行役員CTOとして技術開発全般を管掌。2026年にAI技術ブランド「REiLI Business」を立ち上げ、事業横断でAI戦略と技術開発を推進。

伊熊 邦彦さん

伊熊 邦彦

Kunihiko Ikuma

富士フイルムビジネスイノベーション 人事部
人事グループ長兼 教育グループ長

1998年に富士ゼロックス(旧社名)に入社。営業職としてIT商材を扱う営業部門に配属。2010年から教育部で営業教育、IT教育を担当。2012年からシンガポール拠点に出向し、海外出向者管理、リソース計画、リスク管理等を担当。2016年から人事部に異動となり、現在は人事グループ長と教育グループ長を兼務し、人事企画機能、人材開発機能を統括。

佐々木 隆彰さん

佐々木 隆彰

Takaakira Sasaki

富士フイルムビジネスイノベーション 人事部 教育グループ

2016年に富士ゼロックス(旧社名)へ入社。複合機内部の化学系の部材の開発部門に配属され、2023年まで新規感光体の設計、感光体の製造プロセス設計等を担当。2023年に人事部教育Gへ異動し、新入社員研修等の企画・運営に携わる。現在は主に若手育成プログラム、「Edge Talks」 を担当。

コラム:「Edge Talks」とは? 

「Edge Talks」のプログラム風景

「Edge Talks」は、富士フイルムビジネスイノベーションが2026年5月に開始した若手ソフトウェアエンジニア向けの人材育成プログラムです。
AIやIT技術の進化が加速する中、自ら課題を見出し、提案や挑戦につなげる「課題形成力」の向上を目的としています。役員や社内外の有識者との対話を通じて、多様な価値観や考え方に触れる機会を提供していることが特徴です。

2030年に向けて、求められる人材像が変わっている

話し始める鍋田さん

鍋田 もともとは取締役執行役員CINO(Chief Innovation Officer)としてビジネスソリューション事業を統括している井上さんから、「ソリューション開発を担うメンバーが、自ら課題設定できるようになる必要があるのではないか」という相談を受けたことがきっかけでした。私たちは今、AIやITを含めたソリューションサービスを成長させていかなければならないフェーズにあります。2030年にはソリューションサービス事業で7,000億円規模を目指していますが、その実現に必要なのは、与えられたテーマを確実に遂行する人材だけではありません。

「今何が起きているのか」「お客様は何に困っているのか」「これからどんな価値が求められるのか」。そうした変化を自ら捉え、自分たちで課題を見つけ、提案し、行動に移せる人材が必要だと思っています。そのためには、日常業務だけでは得られない刺激や対話の機会が必要です。社外の最先端の知見を持つ有識者と率直に議論したり、自分の担当業務の枠を超えた知識や情報に触れたりすることで、新たな視点や発想が生まれるからです。役員や社内外の有識者と率直に話し、エンジニアひとりひとりの視野を広げる場をつくりたい。そんな思いから「Edge Talks」が始まりました。

手ぶりを交えて語る伊熊さん

伊熊 人事としても非常に共感する問題意識でした。これまでも課題形成を重視した人材育成には取り組んできましたが、不確実性が高まる中で、その重要性はさらに増していると感じています。今後はさらに自ら情報を取りに行き、自ら考え、自ら提案することが求められていくと思います。

私たちが育てたいのは、単に優秀な実行者ではありません。外部の技術トレンドや経営の期待も踏まえながら、自身の役割を超えた視点で、「今、会社として何に取り組むべきか」「どのような価値を生み出すべきか」を考え、提案できる人材です。「Edge Talks」は、そのためのきっかけになる取り組みだと考えています。

窓を背に話す佐々木さん

佐々木 私自身は研究開発部門から人事へ異動してきた立場ですが、今回の企画は従来の研修とはかなり違います。従来の一般的な研修は、あらかじめ決められた内容を講師が説明し、受講者が知識をインプットする形式が中心です。一方で「Edge Talks」は、参加者自身が考え、対話を通じて新たな気づきを得ることを重視しています。役員と若手社員が直接語り合い、普段は接点の少ない人同士が交流すことで、新しい発想や課題意識を育むことを目指しています。

課題は与えられるものではなく、自ら見出すもの

鍋田さんの話に耳を傾ける伊熊さん

── 鍋田さんはインタビューの中で、「課題形成」という言葉を何度も使われていました。

鍋田 私は富士フイルムで、写真フィルムから医療、そしてAIへと事業が変化していく過程を経験してきました。その中で強く感じるのは、時代によって求められる人材が変わるということです。写真フィルム時代は、与えられた課題を深く掘り下げることが重要でした。実際、そのやり方で世界トップレベルの技術を生み出してきました。しかし2000年頃から状況が大きく変わります。写真フィルム市場が縮小し、会社としても新しい事業を創り出していかなければならなくなった。その時に必要だったのは、「与えられた課題を解く力」ではありませんでした。

経営が何を求めているのか。市場はどこへ向かうのか。その中で自分は何を提案できるのか。
そうしたことを考える力です。だから私は「課題設定」よりも「課題形成」という言葉の方がしっくりきます。課題というのは最初から存在しているわけではありません。世の中の変化やお客様の声、技術の進歩を見ながら、自ら見出していくものだと思っています。

答える伊熊さん

伊熊 人事としても、まさにその「課題形成」を重視しています。これまでは、与えられた課題に対して成果を出す力を高めることが中心だったかもしれません。しかし、変化が激しく正解が見えにくい時代では、自ら問いを立てる力の重要性が高まっています。

だからこそ「Edge Talks」でも、知識やノウハウを一方的に学ぶのではなく、役員や社内外の有識者との対話を通じて、自分なりの問いや気づきを持ち帰ってほしいと考えています。
私たちが目指しているのは、答えを教えることではありません。参加者一人ひとりが、自分自身で課題を見つけ、考え、行動につなげていくきっかけをつくることです。

鍋田 私は写真フィルムの開発を経て、その後まったく異なる領域である医療分野へと関わることになりました。その中で、異なる業界の人、異なる文化を持つ人、海外で活躍する人たちにたくさん会いました。そうした人たちと話していると、ある瞬間に今までつながっていなかった知識や経験が結びつき、新たな気づきや発想が生まれる瞬間があります。
私はそれをよく「シナプスが発火する」と表現しています。

プログラムの様子

「Edge Talks」初回の様子

新しいアイデアや課題意識というのは、一人で会議室にこもっていてもなかなか生まれません。むしろ、自分とは違う価値観や考え方に触れた時に生まれることが多いんです。
だからこそ、若手社員には外に出てほしいし、多くの人と話してほしいと思っています。
いろいろな人と出会い、さまざまな考え方に触れることで、自分の中に新しい視点が生まれる。その積み重ねが、課題形成につながっていくのだと思っています。

若手育成は、若手だけでは実現できない

質問に答える伊熊さんと佐々木さん

── 今回、若手社員だけでなく上司も参加対象にした理由は何でしょうか。

伊熊 理由は二つあります。一つは、上司自身も学び続ける必要があるからです。AIや新しい技術に関しては、若手も管理職も関係ありません。全員が学び続けなければいけない時代です。若手だけを育成するという発想ではなく、組織全体で学び続けることが重要だと考えています。

もう一つは、若手の挑戦を支える存在が必要だからです。若手が新しい提案をしたとしても、それを受け止め、実行につなげる環境がなければ意味がありません。若手に「もっと主体的に動いてほしい」と期待するのであれば、それを支える側も同じ問題意識を持つ必要があります。だからこそ、上司にも同じ場で学んでもらい、同じ景色を見てもらいたいと考えました。

佐々木 実際、初回開催では想像以上に上司層の現地参加が多かったことが印象的でした。組織によってはマネジャーであっても役員と直接話す機会はほとんどありません。そのため、参加者からは「画面越しではなく直接話したことで、役員の人柄や考え方がよく分かった」「井上さんと実際に対話してみて、心理的な距離がぐっと縮まったように感じた」といった声も寄せられました。役職を超えて率直に対話できることも、「Edge Talks」ならではの価値だと感じています。

役員との距離は、皆さんが思うよりずっと近い

懇親会でのにこやかな様子

「Edge Talks」初回後の懇親会で若手と談笑する鍋田と井上

── 若手社員に一番伝えたいことは何でしょうか。

鍋田 まず伝えたいのは、役員との距離は皆さんが思っているよりずっと近いということです。私たちも若手社員と話したいですし、皆さんが何を考えているのかを知りたいと思っています。私は医療事業の頃から、できるだけ現場の人たちと直接話すことを大切にしてきました。なぜかというと、新しい課題は現場にあるからです。経営層だけで見えている世界には限界があります。現場の人たちが感じている違和感や気づきの中に、新しいビジネスの種があるんです。

私はよく「相手より3年早く気づけば、3年早く開発できる」と言っています。この差は非常に大きいんです。だからこそ外に出て、社内だけでなくお客様も含めた社外の人とも話してほしい。いろいろな情報に触れ、自分なりの視点を持ってほしいと思っています。そうした経験の中から新しい課題が生まれ、新しい価値が生まれます。そしてそれが、次のイノベーションにつながっていくのだと思います。

目指しているのは、人材育成ではなく組織変革

最後に統括する三人

── 最後に、「Edge Talks」を通じて実現したいことを教えてください。

佐々木 私たちは学びの場を提供すること自体を目的にはしていません。参加者が自ら情報を取りに行き、自分で考え、行動を起こすきっかけになることを期待しています。今回参加した人たちが、次は自分で情報を集めたり、社内外の人とつながったり、新しいことに挑戦したりする。その連鎖が生まれるとうれしいですね。

伊熊 若手だけでなく、上司や組織も一緒に変わっていく。そんな変化の起点になればと思っています。これからの時代は、一人のスーパーマンを育てるのではなく、挑戦を後押しできる組織をつくることが重要です。「Edge Talks」が、その文化づくりにつながっていけばうれしいですね。

鍋田 新しいイノベーションは現場から生まれます。現場で課題を見つけ、提案し、仲間を巻き込みながら形にしていく。そういう文化をもっと広げていきたいと思っています。
「Edge Talks」は、そのための一つのきっかけです。ぜひ外に出て、人と会い、自分自身で問いを立ててほしい。そして自ら課題を形成し、新しい価値を生み出す人材になってほしいですね。

「Edge Talks」第1回 CINOとCTO対談はこちら

CINOとCTO対談の様子

富士フイルムBI 取締役執行役員 CINOの井上氏と、取締役 常務執行役員CTOの鍋田氏が対談しました。 組織変革の難しさやオープンイノベーションの本質、そしてAI時代に求められる技術者像について語り合いました。