マルチモーダルAIとは、テキスト・画像・音声・動画など、種類の異なる複数のデータを統合して処理し、分析や予測に活用するAIです。多くのデータを分析したうえで結果を出力するため、高精度な分析・予測が期待できます。
本記事では、マルチモーダルAIの導入メリットや注意点、活用事例などを紹介します。業務の自動化や人手不足解消に取り組んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
マルチモーダルAIとは
マルチモーダルAIとはテキストや画像、音声データなど、2つ以上の異なるデータ(モダリティ)を収集・統合し、データ分析や予測に活用するAIです。
データの質と量が高まるほど、AIが提示する分析や予測の精度は高まります。
また、複数のデータを素早く処理できることから、従来型AIよりも複雑で難しいタスクにも対応可能です。
たとえば、マンションでの防犯強化に取り組んでいたとしましょう。マルチモーダルAIを導入すれば、防犯カメラの映像と音声データを同時に解析するため、解析結果から不審者や暴力行為の有無などを把握できます。
上記以外にもマルチモーダルAIは、さまざまな業界・業種での活用が期待されています。
マルチモーダルAIとシングルモーダルAIの違いは、データ処理の際に扱えるデータの種類です。シングルモーダルAIとは1種類のデータのみを活用し、データ分析や予測を行うAIです。
たとえば、テキストデータのみを扱う場合、結果を出力する際に画像や動画、音声データなどは扱えません。異なる種類のデータを扱うことで相互補完ができないため、マルチモーダルAIと比べると、分析・予測の精度に限界が生じるおそれがあります。
一方、マルチモーダルAIの場合は、異なる種類のデータをまとめて処理することで、分析・予測の精度が高まるだけでなく、表現の幅も広げられます。
マルチモーダルAIの導入でできること
マルチモーダルAIが対応できる主な機能と、その用途は以下のとおりです。
対応可能な内容 | 主な用途 |
2種類のデータを組み合わせた処理 | ・テキストから画像と音声データを生成 ・テキストと画像データから多言語翻訳 |
動画または音声データの出力 | ・テキストと音声データを活用し、人間の声色に近い音声を生成 ・画像と音声データを活用し、架空の人物が動く動画を生成 |
音声と動画の同時処理 | ・防犯カメラで音声と動画を同時に解析・店舗での接客AI |
行動認識 | ・人間や動物の動きを認識 ・車両の動きを認識 |
異常検知 | ・不良品や不純物混入を検知・設備の故障や不具合を検知 |
マルチモーダルAIの活用事例
マルチモーダルAIが実際に活用されている事例を 5 つ紹介します。
● 品質管理や異常検知
● 自動運転技術
● 患者への診断支援
● 防犯強化
● 一人ひとりに合わせた接客
品質管理や異常検知にマルチモーダルAIを活用することで、通常業務への影響や損害の発生を抑えられます。
マルチモーダルAIが、センサーで取得したデータと映像データを同時に解析するため、通常よりも早く不良品の混入や設備の故障などを発見できます。
光電センサーや画像センサー、超音波センサーなど、工場や物流ラインに設置した複数のセンサーから、振動や温度、湿度などの情報を収集します。
また、IoT機器や監視カメラなどから、工場や物流ラインで稼働する設備の様子をモニタリングします。センサーで取得したデータと映像データをマルチモーダルAIが統合し、通常 時と比べて異変が起きていないか、解析する流れです。
製造業や物流業界では、品質管理や異常検知にマルチモーダルAIを活用している企業も増えており、生産性向上や人手不足解消の手段として期待されています。
自動運転はセンサーで取得したデータと映像データをもとに、車両の走行状況や周辺環境をリアルタイムで認識し、状況判断に反映する仕組みです。マルチモーダルAIは自動運転の安全性と精度、快適性の向上に大きな役割を果たしています。
マルチモーダルAIの活用で、周辺環境や天候を踏まえた状況判断が下せるためです。 LiDAR センサーが人間や車両、障害物などを検知し、取得したデータは車載カメラからの映像とともに、マルチモーダルAIが解析します。
解析結果をもとにマルチモーダルAIが状況判断を下し、ほかの車両や歩行者との衝突を回避する仕組みです。
また、車載カメラの映像から交通事故や渋滞、工事の有無などを把握し、走行途中で別ルートも提案してもらえるため、目的地まで快適かつスムーズな走行が期待できます。
LiDARセンサーとは物体にレーザー光を照射し、反射光が戻ってくる時間や光の周波数から、物体までの距離や方向などを算出するセンサーです。
レーザー光は物体の位置や形状を正確に把握できるだけでなく、検出精度が天候や時間帯で左右されにくい点も魅力です。
数百メートル先の物体も高精度で検出できるため、自動運転技術で必要不可欠な要素といえます。
マルチモーダルAIの導入で、CTやMRIなどの画像診断データと電子カルテから患者の体調を分析できるため、病気を早期に発見できる確率が高まります。
患者にがんの疑いがある場合には、過去に診察したがん患者の電子カルテや血液検査、CTスキャンの結果と照らし合わせることで、
がんの有無や進行度を把握できます。病気の早期発見によって、患者や家族の不安、治療費を削減できる点がメリットです。
また、診断を下す際に遺伝子情報や投薬履歴も参考にすると、個々の患者に合った治療法を提示し、投薬治療や副作用で生じる身体への負担も軽減できます。
防犯カメラにマルチモーダルAIを搭載すると、オフィスやマンション、店舗周辺などに不審者や脅威が迫っていないか、正確に把握できます。
マルチモーダルAIの活用で、人間の叫び声、家具が倒れる音など、映像データだけでは把握しきれない情報も可視化できます。
解析結果をもとに対策を強化することで、犯罪や被害の発生を未然に防げます。
また、マルチモーダルAIは指紋認証や静脈認証、顔認証などとも連携しており、利便性を確保しつつ高度な防犯体制の整備が可能です。
病院やオフィスビル、マンションなどで利用すると、利用者や居住者に安心感を与えられます。
マルチモーダルAIの活用で、顧客一人ひとりの購買傾向を踏まえた製品・サービスを提案でき、良質な顧客体験につなげられます。
防犯カメラの映像で顧客を認識し、マルチモーダルAIが実店舗の購入履歴やECサイトでの閲覧ページなど、顧客分析を行います。
顧客分析の結果を提案内容に反映することで、従業員の能力や経験を問わず提案の質を一定水準以上に保てる点がメリットです。
顧客ニーズを反映した提案によって、商材購入や単価アップを実現できる確率が高まります。
また、ECサイトで活用する場合も、会話の流れや顧客の感情を読み取ったうえで、一人ひとりに合った商材提案や情報発信を行えます。
マルチモーダルAIの導入メリット
マルチモーダルAIを導入するメリットは以下の3つです。
● 高精度な分析・予測が期待できる
● 高度なタスク処理を任せられる
● 早期発見で損失を防げる
メリットの内容を詳しく見ていきます。
マルチモーダルAIはシングルモーダルAIと比べて、分析・予測の精度が高い点がメリットです。
特定のタスクに関する結果を出力する際、マルチモーダルAIは種類の異なる複数のデータを扱います。
AIは機械学習の働きで、高品質なデータを多く学習するほど、分析・予測の精度が高まる点が特徴です。
マルチモーダルAIはテキストや画像、音声など、複数のデータを分析するため、実情に見合った予測結果や問い合わせへの回答を得られる確率が高まります。
マルチモーダルAIは動画や音声、テキストデータなどをまとめて処理することで、複雑で難易度の高いタスクも処理できます。
動画では視覚情報、音声からは聴覚情報、テキストデータからは言語情報を得られるため、人間に近い感覚で状況を判断できるためです。
個々の情報から得られる具体的な内容は以下のとおりです。
情報の種類 | 取得できる具体的な情報 |
視覚情報 | ・相手の表情 ・感情の変化 ・言葉に対する反応 ・姿勢 |
聴覚情報 | ・声のボリューム ・声のトーン ・話すスピード ・言葉遣い |
言語情報 | ・文書に書かれている内容 ・相手に強調したい内容 |
マルチモーダルAIはあらゆる情報を素早く統合・分析するため、周囲の環境や業務の優先度などを考慮した判断が下せます。
人間と同等の情報処理や状況判断が期待できることから、異常検知や自動運転、個々に応じた接客など、高度なタスクも任せられます。
製造・物流ラインの異常検知や品質管理にマルチモーダルAIを活用すると、不良品の混入や設備の故障を早期に検知するため、損失額を抑えられます。
温度や湿度、振動など、センサーが取得した情報に映像と音声データを組み合わせて分析するため、従来よりも不良品の有無や設備の故障兆候を正確に検知できるためです。
また、医療機関でマルチモーダルAIを活用した際は、CTや超音波画像、電子カルテなど、複数の情報から患者の状態を判断できます。
がんの有無や進行状況、病状の特定などを素早く正確に把握できるようになり、治療費や家族の精神的な負担軽減につなげられます。
マルチモーダルAIを活用する際の注意点
マルチモーダルAIを活用する際の注意点は以下の4点です。
- データ処理で生じる負担と時間が増える
- 結論の根拠がわかりにくい
- 著作権をはじめ権利侵害に注意する
- 情報漏えいに注意する
マルチモーダルAIは、複数のデータをまとめて処理するため、シングルモーダルAIと比べて扱うデータの量が増えます。その分、データ処理に多くの時間と負荷がかかり、場合によってはパソコンやネットワーク機器、分析ツールの買い替えが必要です。
2.は異なる種類のデータを統合・分析したうえで回答を提示するため、情報源の確認に時間がかかります。ただし、情報源と回答の中身は人間の目で確認が必要です。マルチモーダルAIの提示する出力結果が常に正しいとは限りません。
仮にマルチモーダルAIの回答をそのまま活用し、外部に公開したあとに誤情報が含まれていると判明した場合、顧客からの信用やブランドイメージが低下します。最悪の場合は損害賠償請求に発展するおそれもあるため、注意が必要です。
また、3.と4.はマルチモーダルAIに限った内容ではないものの、AIを利用する際は著作権侵害や機密情報の流出リスクを常に抱えています。損害を防ぐには、商用利用の可否や著作権の事前確認、ログデータの取得など、さまざまな対策を講じなければなりません。
マルチモーダルAIを導入した生成AI
代表的なマルチモーダル対応の生成AIには、以下が挙げられます。
- ChatGPT(GPT‑4o)
- Gemini
- Copilot
個々の特徴を紹介します。
ChatGPTとは、OpenAI社が開発・提供しているマルチモーダルAIです。視覚情報と聴覚情報の理解力、画像生成能力に優れている点が特徴です。たとえば、手書きで書いた図を撮影して画像を添付すると、PowerPointをはじめ希望の形態に出力されます。
CSVファイルの読み込みとグラフの要望を入力すれば、円グラフや棒グラフなど、視覚情報が効果的に織り交ぜられたレポートの作成が可能です。
また、音声入力した際の応答速度は平均320ミリ秒で、人間の応答速度と同等の速さです。ChatGPT(GPT‑4o)では声のトーンやボリュームに加えて、相手の表情も分析するため、質問の意図や感情の変化を反映した回答の提示が期待できます。
英語やスペイン語、中国語など、20か国以上の多言語能力も改善されており、外国人からの問い合わせにもスムーズな対応が望めます。
開発元 | OpenAI |
サービス URL | https://openai.com/ja-JP/index/hello-gpt-4o/ |
主な特徴 | ・優れた視覚情報と聴覚情報の理解力 ・音声入力への対応は人間と同等のスピード ・多言語理解能力も高水準 |
主な活用シーン | ・資料作成 ・メディア掲載用の素材制作 ・チャットボット ・翻訳 |
GeminiはGoogle社が開発・提供しているマルチモーダルAIです。テキストや画像、動画など、異なる種類のデータをスムーズに処理できるため、幅広い業務に活用されています。主な活用事例は以下のとおりです。
- テキストデータをもとに画像を生成
- 文書や画像の解析
- 文書や画像の改善案を提案
- 音声データをもとに、議事録や日報を作成
- 動画編集
上記に加えて、ソースコードの作成やデータ分析などにも対応可能です。また、GeminiはGoogleアカウントとの連携に対応しており、Google Workspaceを活用している企業にとって導入しやすい点も魅力です。
Googleドキュメントやスプレッドシートなど、各種ツールとのスムーズな連携が望めるためです。既存の業務プロセスを見直す必要性が低く、Google Workspaceの使用頻度が高い企業に適したマルチモーダルAIといえます。
開発元 | |
サービス URL | https://gemini.google.com/app?hl=ja |
主な特徴 | ・幅広いタスク処理に対応 ・Google Workspaceとの親和性の高さ・ソースコードの作成や改善能力の高さ |
主な活用シーン | ・資料作成 ・メディア掲載用の素材制作 ・データ分析 ・ソースコードの作成 |
Microsoft CopilotはMicrosoftが開発・提供する生成AIで、テキスト・画像・音声などを扱うマルチモーダルAIです。従来は「Bing Chat」「Bing AI」などの名称で、検索と連動した対話型AIとして提供されていました。
OpenAI社のGPTシリーズをベースに、Microsoft社の独自技術(検索連携やMicrosoft 365との統合など)を組み合わせ、機能性を高めています。現在では、テキストからの画像生成や音声での質疑応答、文章作成、データ分析など、幅広いタスクに対応可能です。
Web検索を伴う回答では参照元が提示されるため、情報確認がしやすく、誤情報のリスク低減にも寄与します。ただし、業務利用においては最終的な内容確認が重要です。
また、CopilotはWord、Excel、PowerPointなどのMicrosoft 365アプリとシームレスに連携できる点も大きな特長です。ブラウザやデスクトップ、モバイルなど多様な利用環境に対応しており、Microsoft 365を日常的に業務で利用している企業に特に適したAIといえます。
開発元 | Microsoft社 |
サービスURL | https://copilot.microsoft.com/ |
主な特徴 | ・データ分析では情報源が提示 ・誤情報の発信リスクを削減 ・Microsoft 365との親和性の高さ |
活用シーン | ・資料作成 ・データ分析 ・画像生成 ・問い合わせ対応 |
まとめ
マルチモーダルAIは、複数の異なるデータを統合的に扱うことで、従来のAIでは難しかった高度な分析や判断を可能にします。ユーザーからの質問に対して、複数のデータを分析したうえで結果を出力できるため、従来よりも分析・予測の精度を高められます。
ただし、従来よりも多くのデータを扱うため、データ分析には多くの時間と手間がかかります。また、著作権侵害や情報漏えいが起きないよう、細心の注意を払わなければなりません。
マルチモーダルAIの運用には一定の専門知識が求められるため、自社での対応に不安を抱えるケースも考えられます。自社だけで対応が難しい場合は、外部の企業へ相談するのがおすすめです。富士フイルムビジネスイノベーションジャパンでは、さまざまなAIソリューションをご提案可能です。ぜひお気軽にご相談ください。
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