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ホーム ソリューション 中堅・中小企業のDX推進コラム AIコラム:業界・業務別でのRAGの活用事例10選 | 仕組みや成功のポイントなども紹介

RAG(Retrieval Augmented Generation)とは、外部のデータベースなどから関連情報を検索して取得し、その情報を根拠として生成AIの回答に反映させる手法です。

RAGを活用すれば、モデル自体を追加学習しなくても、最新の社内情報や外部情報を参照した回答を提示しやすくなります。

カスタマーサポートやヘルプデスク、営業活動の支援など、問い合わせ対応が多い業務での活用が進んでいます。

本記事では、RAGの仕組みや運用を成功させるポイント、業界・業種別の活用事例などを紹介します。生成AIの回答・分析精度の向上や業務の自動化に取り組んでいる方は、最後までご覧ください。

RAGとは

RAGの仕組み

【業務別】RAGの主な活用事例5選

カスタマーサポート

RAGを活用して、自社商品や顧客情報、過去の問い合わせ履歴などを取得し、それらを生成AIに学習させ、顧客対応の自動化を実現する事例です。

問い合わせ頻度の高い内容や顧客の特徴に応じた回答事例を学んでおくと、生成AIの対応力や汎用性が高まります。RAGの活用によって、多くのデータを分析したうえで回答文を提示するため、生成AIが従来よりも正確な回答を提示できるようになる点がメリットです。

また、顧客対応の自動化で、営業時間外に寄せられた問い合わせにも素早く対応できるようになり、従業員の業務負担や対応漏れの件数を減らせます。

チャットボット

社内外のチャットボットにRAGを活用し、ユーザーや従業員からの問い合わせに対する回答精度の向上に努める事例です。社内向けでは業務マニュアルや社内ルール、過去の案件資料などから必要な情報を収集し、問い合わせ頻度が多い内容をデータベースへ登録しておきます。

チャットボットが回答する際は、RAGが収集した情報と事前学習の内容を照らし合わせて回答を提示するため、ユーザーは正確な情報を素早く入手できます。従業員数や文書などが多く、情報収集に時間がかかりやすい大企業向けの活用方法です。

一方、社外向けには、サービスサイトやECサイトなどにチャットボットを実装し、問い合わせ対応を効率化する使い方です。商品の使い方や機能、購入までの流れなど、サイトに関連する情報を事前にチャットボットへ学習させます。

RAGを活用し、顧客の購入履歴やサイトの閲覧履歴などのデータを集めておくと、顧客の購買傾向を反映した回答を提示できる可能性が高まります。

ヘルプデスク

ヘルプデスクとは、パソコンの不具合対応やセットアップの手順、基幹システムの使い方など、従業員から寄せられるIT関連の質問に対応する仕事です。RAGを活用すれば、業務プロセスやマニュアルの内容を踏まえた回答が可能です。

また、RAGが収集した情報をもとに、よくある質問やFAQなどを設けておけば、従業員が必要な情報を自ら収集できるため、問い合わせ件数を削減できます。

マーケティング

RAGを活用して、過去の購買履歴や閲覧履歴などから顧客ニーズを把握し、新商品開発やターゲットの選定など、マーケティング戦略の策定に活かす事例です。

RAGが収集した以下の情報をAIに学習させると、顧客がどのような情報や商材を求めているか、購買傾向を可視化できます。

  • 過去の取引実績
  • 過去の採用商品
  • ECサイトでの購入実績や購入頻度
  • ECサイトの閲覧ページ
  • 実店舗での購入実績と来店頻度

顧客情報を多く集められるほどデータ分析の精度が高まり、顧客ニーズを反映したマーケティング戦略の策定が可能です。市場のトレンドや研究データなどの内容も反映すると、新たな顧客層と接点をもてる確率も生じます。

また、RAGが収集した情報をECサイトでも活用すると、顧客の興味や好みに応じた商品を提案できるようになり、成約率やリピート率、購入単価の改善が期待できます。

営業活動の支援

資料作成や顧客分析の効率化にRAGを活用する事例です。RAGを活用して社内のCRMやSFAにアクセスし、過去の案件内容や成功事例、提案資料など、営業活動に関する情報を収集します。

営業担当者は担当案件と関連性の高い情報のみを流用することで、資料作成を効率化しつつ完成度の高い資料作成が可能です。

また、RAGが収集したデータを分析することで、顧客ごとの購買傾向やニーズが可視化され、自身の担当顧客と共通点がないか、比較が可能です。

共通点があった顧客には、過去の成功事例や採用商品を参考に提案ができるため、顧客の課題につながる確率が高まります。

【業界別】RAGの主な活用事例5選

金融機関

金融機関では主に投資や融資などで正確な判断を下せるよう、RAGが活用されています。RAGの活用でリアルタイムでの市場の動きに加え、以下の主な経済指標に関するデータを収集し、投資の判断に役立てられます。

  • 物価
  • 失業率
  • 消費者物価指数
  • 生産者物価指数
  • 小売売上高
  • ISM製造業景況指数

さまざまなデータを使って市場分析や為替変動を予測できるため、投資額の上積みや継続可否の正確な判断が可能です。

また、融資の際は顧客の経営状況や融資実績、銀行内の規定などを考慮したうえで、融資の判断を下せます。RAGで集めた情報をもとに、生成AIに稟議書の作成を任せれば、担当者が書類作成を行う必要はありません。

融資の際に集めた情報は、金融商品の提案や顧客ニーズの把握などにも役立てられます。

製造業

製造業ではベテラン従業員の知識や経験、技術など、ナレッジの伝承にRAGを活用しています。手書きのメモや画像、CAD図面をRAGに学習させることで、ベテラン従業員がこれまで培ってきた技術やノウハウを組織の資産として活用が可能です。

技術伝承によって若手従業員のスキルアップを促し、人材育成や組織力の維持、業務の属人化防止など、さまざまなメリットを得られます。

また、設備の不具合が発生した際の対処法や流れをRAGに学習させると、不具合が実際に起きた際、従業員がチャットボットへの質問を通じて対応の流れを把握できます。

小売業

小売業では顧客体験の質や需要予測の精度を高める目的に、RAGが活用されています。ECサイトでの購入履歴や閲覧履歴などを分析すると、顧客ごとに購買傾向の可視化が可能です。

顧客ニーズを反映した商品やサービスの提案で良質な顧客体験を提供し、成約率やリピート率、購買単価を高められます。

また、過去の販売実績や天候、イベントの有無など、RAGが収集した情報と過去の販売実績を組み合わせた分析で、正確な需要予測が可能です。商品ごとにどのくらいの量を発注すべきかが明確になり、欠品や在庫過多による損失の発生を防げる確率が高まります。

教育

学習塾での指導力向上や教材作成の効率化などにRAGが活用されています。RAGの活用で、学習理解度や進捗状況、学習方法などを分析し、学生一人ひとりの学習履歴を可視化します。

分析結果をもとに、学生一人ひとりに対して教材と学習プランを提案するかたちです。RAGの活用で、生徒が自身のペースで学べる環境を整えられ、集中力の向上や成績アップが期待できます。

また、過去の教科書や問題集、模擬試験などの内容をRAGに学習させ、生成AIに教材作成を命じれば、講師が一から教材を作成する必要がありません。教材作成の効率化で、生徒の個別指導や補習授業の実施、進路相談への対応などに浮いた時間を充てられます。

RAGを活用する際の注意点

一定のコストとリソースが必要になる

RAGの導入・運用には、一定の費用と専門知識をもつ人材の確保が必要です。RAGは生成AIやデータベース、検索エンジンなど、複数のツールと組み合わせて利用するのが一般的です。

連携するツールが多くなるほど、扱うデータ量が増えるため、データ処理や運用に多くのリソースが必要になります。
ほかのシステムやWebアプリケーションの動作に影響が出ないよう、ストレージ容量の確保やデータ処理能力に優れたアルゴリズムの開発が必要です。

ただし、大量のデータを効率的に処理する仕組みの構築には、複雑な統計処理や分散処理、クエリの最適化など、データ分析に精通した人材が欠かせません。

また、ほかのツールと連携するには、AIやクラウドなどに関する知識も必要です。多大な費用と開発経験が豊富な人材を確保できない限り、RAGの開発・導入を自社だけで対応するのは、ハードルが高いといえます。

自社対応に不安を抱える場合は、AI開発・導入支援の実績が豊富な企業に相談するのが、無難な選択といえます。

正確で最新のデータが求められる

情報の重複や入力漏れ、古い内容などが混じっていると、RAGの検索精度が低下します。

RAGの検索精度を高めるには、データベースやシステムなどに保存した情報を常に新しく正確な内容に保たなければなりません。

また、外部のデータベースやWebサイトなどから情報を収集した際は、情報源の確認が必要です。RAGを活用する際、ユーザーの質問内容に見合った情報を毎回正確に収集できるとは限りません。

情報源によっては、古い情報が掲載されているケースも考えられるため、人間の目で確認する体制の整備が求められます。

強固なセキュリティー対策が求められる

RAGは多くのデータを扱うため、強固なセキュリティー対策を講じておかなければなりません。仮にセキュリティー対策の不備が原因で、機密情報が流出した場合、顧客からの信用低下や企業イメージのダウンなどに見舞われます。

流出した情報の内容や規模によっては、損害賠償を請求される可能性も生じます。情報漏えいが原因での多大な損失を防ぐには、通信の暗号化や多要素認証の導入、定期的な脆弱性診断の実施など、セキュリティー対策の強化が必要です。

また、特定の従業員だけがRAGや生成AIを操作できるよう、アクセス権の付与は最小限に留めなければなりません。アクセス権を過剰に付与すると、内部不正や不正アクセスのリスクが高まります。

RAGの活用を成功させるポイント

スモールスタートから始める

RAGを導入する際は、特定の部署や業務で活用するといった、スモールスタートから始めるのが無難な選択です。いきなり全社の業務でRAGを活用しようとした場合、従業員への負担や失敗のリスクが増え、通常業務に支障が及ぶ可能性も考えられます。

また、RAGの検索精度を高めるには、膨大なデータを確保したうえで、何度も検証を重ねなければなりません。外部のデータベースやWebサイトなどからデータを取得できるよう、RAGを設定するには専門知識も必要です。

上記の理由から、RAGの実用化には多くの時間と人員、費用を投じて、運用体制を整える必要があります。スモールスタートから始め、課題抽出と改善策の実施を繰り返しながら、徐々に適用範囲を広げていくことで、失敗のリスクを減らして安定した運用が可能になります。

データの整理と更新を定期的に行う

RAGの検索精度やLLMの回答精度は、データの品質と量に大きく左右されます。基幹システムやデータベースなど、RAGの情報源として活用予定のツールについては、定期的にデータを整理し、情報の更新を行う必要があります。

誤字や脱字、古い内容が混じったデータが多い場合、RAGの検索精度を高めるのは困難です。

また、データの入力や古いファイルの扱いなど、データ運用のルールを決めておくことも必要です。「最初に日付を入力する」「最終更新から5年以上の文書は削除する」など、ルールを明確化しておくことで、入力や更新漏れを避けやすくなります。

さらに、スタッフとstaff、ホテルとhotelなど、カタカナと英語表記のどちらに統一するかを決めておくと、重複の発生も減らせます。

質問文(プロンプト)の内容を工夫する

質問文の指示内容が曖昧で、LLMにどのような回答を提示してほしいかわかりにくい場合、ユーザーが望む出力結果を得られない可能性が高まります。

質問文に関連したデータをRAGが社内外の情報源から取得し、LLMが事前学習のデータとともに分析し、質問への回答を提示する仕組みです。

質問の意図や希望する出力形式など、LLMは質問文からユーザーの考えを読み取れるわけではありません。以下のように質問文に役割や出力形式、注意事項などを記載すると、自身の望む回答を得られる確率が高まります。

 

具体的な質問文の内容

役割

・あなたは経営コンサルタント

・人手不足解消に関するノウハウが豊富

・中小企業への支援実績が豊富

出力形式

・結論から記載

・具体的な方法は箇条書きで記載

・Googleドキュメントに記載

注意事項

・1文は80字以内

・活用するのは社内に保存されているデータのみ

・分析結果は極力グラフで表現

また、データ量が少ないと、LLMの分析・回答の精度も低下するため、事前情報の提供が必要です。たとえば、「自動車部品を製造するメーカー」「人手不足を解消するITツールを知りたい」などの情報提供で、LLMが回答を提示しやすくなります。

ただし、一度のやりとりで望む結果が得られるとは限りません。最初の回答が質問の意図とズレている場合、回答の精度を高めるには「ツールの特徴を具体的に教えて」「必要な費用はどのくらい」など、追加の質問が必要です。

外注する際は複数の企業から絞り込む

RAGの開発・導入を開発会社に依頼する際は、事前に複数の企業に問い合わせを行い、見積を取得しておく必要があります。仮に1社からしか見積を取得しなかった場合、費用や提案内容をほかの企業と比較できません。

場合によっては相場以上の費用を支払う可能性が生じます。無駄な費用の支払いを避けるため、事前に3~5社の候補を挙げ、見積金額と提案内容を比較してから、依頼先を絞り込みます。

まとめ:RAGの活用事例や注意点を参考にして導入を判断しよう