基幹システムのクラウド化を進めると、メンテナンスやアップデートを自社で対応する必要がなくなり、システム管理者の負担を軽減できます。また、料金プランの変更やオプションの利用で、システムの容量を簡単に拡張できる点も魅力です。
本記事では、基幹システムのクラウド化によるメリット・デメリット、進め方などを紹介します。長年同じ基幹システムを使い続けている方、システム管理の負担・費用を減らしたい方は、最後までご覧ください。
基幹システムのクラウド化が必要な理由
導入から数十年以上が経過したオンプレミス型の基幹システムを使い続けるリスクには、主に以下の内容があげられます。
- システム内部の構造を理解している人が限られる
- 不具合が起きた際に素早く対応できない
- 機密情報の流出やデータ消失のリスクが高まる
- データを十分活用できない
- ランニングコストが年々高騰する
基幹システムの安定したパフォーマンスの維持や使い勝手を高めるには、定期的なメンテナンスやカスタマイズが欠かせません。ただし、回数が多くなるほどシステム内部の構造が複雑化し、最悪の場合は特定の担当者しか状態がわからなくなることもあります。
内部構造が不透明な状態に陥ると、不具合が起きた際に原因をすぐに特定できず、復旧までに多くの時間が必要です。
仮にシステムに精通した担当者が退職や人事異動で不在になった場合、引継ぎが不十分だと、不具合が起きた際に自社では対応できなくなる可能性が高まります。
また、システム内のデータを十分に活用するのが難しくなるため、顧客ニーズが変化した際に対応しきれず、収益が伸び悩むおそれがあります。
基幹システムのクラウド化によるメリット
基幹システムのクラウド化による主なメリットは以下の4つです。
- 移行時の費用や運用の手間を削減できる
- IT人材が不在でも運用しやすい
- 自動バックアップでデータ消失を避けられる
- 拡張性に優れる
クラウド型は、インターネットを経由してベンダーの保有するサーバーやシステムを利用する仕組みです。
オンプレミス型と異なり、サーバーの導入・運用を自社で対応する必要がなくなり、初期費用や移行期間を削減できます。
また、クラウド型へ移行すれば、メンテナンスやアップデート、障害復旧作業なども自社で対応する必要がありません。最小限の手間で常に最新のバージョンを利用できるだけでなく、。システム管理者の負担を大幅に軽減できます。
システムやセキュリティーなどに精通したIT人材が不在の企業でも、クラウド型の基幹システムは比較的運用しやすいといえます。
オンプレミス型の場合、サーバーの調達やネットワーク環境の構築など、導入・運用に関する多くの作業を自社で対応しなければなりません。
一方で、基幹システムに限らず、クラウド型のシステムは専門知識がない方でも運用しやすいよう、システム全体が設計されています。
また、ベンダー側にシステムのアップデートやメンテナンス、サーバーの運用など、各種作業を任せられるため、自社で対応すべき作業が少ない点もメリットです。
クラウド型の場合、多くの基幹システムが自動バックアップ機能を搭載しており、システム内のデータを効率的にコピーできます。オンプレミス型の場合、手作業でバックアップデータを取得しなければなりません。
仮にバックアップデータの取得を怠っていると、自然災害やサイバー攻撃の被害に遭った際、これまで培ってきた多くの情報やノウハウが失われるおそれがあります。
自動バックアップ機能を搭載した基幹システムに移行すれば、バックアップデータ取得の効率化に加え、データ消失のリスクを軽減できます。
また、ベンダーによっては、取得したバックアップデータを複数のデータセンターへ分散して保存しており、大規模な被害に遭ってもデータを失うリスクは低いでしょう。
クラウド型の基幹システムへ移行すると、組織拡大や事業成長などで負荷が大きくなった際も、簡単に容量を拡張できます。
容量拡張に必要な作業は、サービスサイトで料金プランの変更やオプション利用などの手続きを行うだけです。オンプレミス型と異なり、サーバーやHDDの増設など、新たに機器を購入する必要はありません。
クラウド化への移行で、手間や費用をかけずに容量を柔軟に拡張できる体制が整えられます。
基幹システムのクラウド化によるデメリット
基幹システムのクラウド化によるデメリットは以下の3つです。
- カスタマイズ性が低い
- インターネット環境への依存度が高まる
- 毎月一定のランニングコストが発生する
クラウド型の基幹システムはオンプレミス型と比べて、カスタマイズ性が低くなります。クラウド型は、専門知識がない方でも導入後すぐに利用できるように設計されている点が特徴です。
また、多くのユーザーと同じシステムを共同で利用するため、自社の個別要求に応じてもらえる可能性は低いといえます。
仮に要求に応じてもらえたとしても、カスタマイズの範囲が広いほど多額の追加費用を支払わなければなりません。カスタマイズ費用の高騰を防ぐためには、システム選定の際に課題解決に必要な機能が搭載されているか、慎重な見極めが求められます。
基幹システムをクラウド化へ移行する際は、必要に応じてインターネット環境の見直しも必要です。クラウド型はインターネット経由で利用するため、利用環境によっては通信障害や速度遅延が頻繁に発生する可能性があります。
不具合が頻繁に起きると業務の進捗に多大な支障を及ぼすだけでなく、最新のデータが保存できないおそれも生じます。
従業員から通信障害や速度遅延の発生に関して多数あがっている場合は、インターネット環境の見直しも進めましょう。
クラウド型の基幹システムは、毎月一定の月額料金がかかります。月額料金には、ライセンス使用料やネットワーク環境の使用料金が含まれています。
ただし、クラウド型は月額料金の支払いが発生するものの、メンテナンスやアップデートなど、各種作業をベンダーに依頼できる点がメリットです。
月額料金は「システムを運用していくうえで必要な費用」と捉えると、デメリットを必要以上に気にせずに済みます。
基幹システムのクラウド化を進める手順
基幹システムのクラウド化は以下の流れで進めていきます。
- クラウド化へ移行する目的を明確化する
- プロジェクトチームを立ち上げる
- 業務プロセスを見直す
- クラウド型基幹システムの選定を始める
- 移行計画を作成する
- 移行に向けてテストを実施する
- 新しいシステムを運用する
「維持費を減らしたい」「ペーパーレス化を推進したい」など、クラウド化への移行で解決したい課題を明確化しておくことが重要です。
導入目的が曖昧な状態だと、新しいシステムの導入後に「必要な機能が足りない」「不要な機能が多い」など、ミスマッチを招くおそれが高まります。
無駄な支払いを避けるには、基幹システムのクラウド化でどのような課題を解決したいか、事前に整理しておかなければなりません。
また、課題が複数見つかった場合は優先順位付けを行い、優先度の高い課題から段階的に解決していく姿勢が求められます。優先度の高い課題から1つ1つ対処していくことで、従業員への負担増大や通常業務への支障を避けやすくなります。
クラウド化への移行に中心的な役割を担うプロジェクトチームを立ち上げます。チームメンバーにはシステム管理者に加え、決裁権をもつ管理職や経営層を交えることが大切です。
決裁者をプロジェクトチームに加えれば、金額や影響度の大きい判断も素早く下せるようになり、クラウド化への移行作業を進めやすくなります。
クラウドへの移行に合わせて、新しい基幹システムを導入する部署の業務プロセスを見直します。ムダな業務が残っていると、新システムを導入しても業務効率は十分に向上しません。
複雑な手順も簡素化して業務の標準化に努めると、ミスの削減によって業務の正確性も高められます。
また、見直すべきプロセスが多い場合は部分的な見直しではなく、新たな業務プロセスを構築する方向性も検討が必要です。新しい基幹システムに合ったプロセスを構築しやすくなるだけでなく、見直しの手間も省けます。
基幹システムを選定する際は機能性や費用、サポート体制など、多くの点に気を配らなければなりません。
システムごとに搭載機能や費用が異なるため、課題解決に必要な機能が搭載されているか、予算内で導入・運用できるかなど、慎重な見極めが大切です。
また、チャットや電話、Web会議など、ベンダー側の担当者とさまざまな手段で連絡が取れると、トラブルが起きても早期解決が望めます。
ただし、判断に迷うケースも考えられるため、事前に基幹システムの選定で重視する点を決めておくのがおすすめです。「機能性よりもコスト」や「操作性を重視」など、優先順位を明確化しておくと、自社の条件に見合うシステムを選べる確率が高まります。
基幹システムのクラウド化では、あらかじめ移行計画を作成しておくことで、プロジェクトメンバー間の認識をそろえ、作業を円滑に進められます。
移行計画には以下のような内容を整理して記載します。
- 移行の目的や担当体制
- 業務への影響範囲
- データのバックアップ方法
- テストや本番切り替えの時期
特に重要なのは、通常業務への影響を最小限に抑える視点です。そのため、切り替え時期や手順を明確にし、必要に応じて段階的な移行や並行運用を検討します。
あわせて、運用開始時期の周知や操作マニュアルの整備、問い合わせ窓口の設置など、現場が新システムに対応しやすい環境を整えておくことも欠かせません。
最終的な移行の判断を下す前に、無料トライアルを利用して自社との相性を確認します。
クラウド型の基幹システムを提供する多くのベンダーが、無料トライアルを用意しており、利用した場合は費用をかけずに操作性や機能性などを確認することが可能です。
無料トライアルで問題なければ、料金プランの選択や現行システムからのデータ移行など、新しいシステムの運用に向けた準備を進めます。
運用体制が整ったら、新しい基幹システムを実際の業務で運用します。導入当初は不具合が発生していないか、業務効率は高まっているかなど、安定したパフォーマンスが発揮できているか、定期的に確認が必要です。
仮に従業員から「業務が進めにくい」との声が多く聞かれた場合、業務プロセスやマニュアル、システムの設定内容を見直すなど、早急な対策が必要です。
また、移行方法に段階的移行か並行運用を選んだ場合は従業員の反応を見ながら、新しい基幹システムの適用範囲を徐々に増やしていきます。
従業員が操作に慣れていない状態で適用範囲を広げると、業務の効率性や正確性が低下するおそれがあるため、慎重に進めることが大切です。
基幹システムのクラウド化を成功させるポイント
以下3点を意識すると、クラウド化への移行が成功する可能性が高まります。
- オンプレミスの再現にこだわりすぎない
- セキュリティー対策を確認する
- 段階的に移行を進める
クラウド型とオンプレミス型は特徴が異なるため、現行システムの再現に必要以上にこだわらないことが重要です。
クラウド型とオンプレミス型は特徴や強みが異なるため、現行システムの再現に固執しない姿勢が求められます。機能追加やユーザーインターフェースの変更など、大規模なカスタマイズを実施した場合、多額の追加費用が発生します。
カスタマイズの範囲が広いほど導入期間も長期化し、クラウド移行によるメリットを十分得られません。
クラウド化を進める際は、オンプレミスとは別の視点でシステムを選定する必要があります。導入後にカスタマイズで対応するのではなく、システム選定の際から「必要な機能を搭載しているか」「操作しやすいか」など、自社との相性を見極めることが重要です。
さらに、新しい基幹システムが運用しやすいよう、必要に応じて業務プロセスを変更するといった柔軟な対応も求められます。
基幹システムには多くの機密情報を保存するため、システム選定の際はセキュリティー対策を確認することが重要です。仮にセキュリティー対策が低い場合、サイバー攻撃やマルウェア感染の被害に遭い、機密情報が流出するリスクが高まります。
仮に顧客情報が流出した場合は顧客からの信用を失い、取引停止や損害賠償請求によって多大な損失を被るおそれが生じます。
機密情報の流出を防ぐには多要素認証やログデータの取得など、セキュリティー対策が充実した基幹システムを選ぶことが大切です。
また、国際規格であるISMS「情報セキュリティーマネジメントシステム」を取得しているベンダーを選ぶのも1つの選択肢です。ISMS取得済みの企業は第三者機関から、セキュリティー対策に関して一定の評価を得ていると認識できます。
基幹システムの移行を進める際は、段階的に移行することが大切です。
一括移行は時間と手間を抑えられるものの、移行作業を実施している間は基幹システムを利用できません。データ量やシステムの規模が大きくなるほど、移行作業に時間がかかるだけでなく、失敗のリスクも高まります。
また、自社だけで対応が不安な場合、クラウド移行支援サービスを利用するのも1つの選択肢です。クラウド移行支援サービスを利用すれば、スケジュールの策定やテストの実施、データ移行など、多くの業務を任せられるため、スムーズな移行を実現できます。
まとめ:必要性を理解してから基幹システムのクラウド化を進めよう
基幹システムのクラウド化を進めると、サーバー管理やメンテナンス、アップデートなどをベンダー側が対応するため、システム管理者の負担を軽減できます。
システムごとに搭載機能や費用、セキュリティー対策などが異なるため、事前にさまざまな点を比較してから、導入するシステムを決めることが重要です。また、システム選定後は通常業務に支障をきたさないよう、段階的な移行が必要です。
ただし、システムに精通した人材が自社におらず、対応に不安を抱えるケースも考えられます。自社だけで対応が難しい場合は、ベンダーへ相談するのがおすすめです。
豊富なノウハウや経験を兼ね備えた人材が多数在籍しており、自社の課題に見合った提案を受けられる可能性が高まります。
富士フイルムビジネスイノベーションジャパンでは、クラウド型基幹システムの選定~導入、または周辺業務のクラウド化のご相談を承っております。ぜひお気軽にご相談ください。
検索条件を変えていただき、もう一度お試しください。









