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ホーム ソリューション 中堅・中小企業のDX推進コラム ITセキュリティーコラム:マルチクラウドとは?企業が導入するメリットや課題、流れを解説

クラウド活用が進むなか、企業のIT戦略は「ひとつのクラウドを使い続ける」段階から次のフェーズへと移行しています。​

​​近年注目されているのが、複数のクラウドサービスを柔軟に使い分けるマルチクラウドという考え方です。​

​​本記事では、マルチクラウドの基本的な概念から、企業が導入するメリット・課題、導入までの流れやセキュリティー対策までをわかりやすく解説します。

​​マルチクラウドとは

​​​​ハイブリッドクラウドとの違い​

マルチクラウドとハイブリッドクラウドは混同されがちですが、定義と設計に違いがあります。​

​​マルチクラウドは、複数のクラウドサービスを併用する構成を指します。​

​​一方、ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドと自社所有のオンプレミス(物理サーバー)や、プライベートクラウドを組み合わせる構成です。​

シングルクラウドとの違い​

シングルクラウドとマルチクラウドの違いは、利用するサービスの数にあります。​

​​シングルクラウドは、ひとつのクラウドサービスのみを使用する形態のことです。運用コストを抑えつつ、スピーディーに導入したい企業に適しています。

​​しかし、万が一利用しているサービスが停止すると、すべてのシステムが利用できない可能性があります。​

​​これに対しマルチクラウドは複数のサービスを利用するため、ひとつのサービスが停止した場合でも​他​のサービスでカバー​でき、事業継続性を高めることができます​。

​​企業がマルチクラウドを導入するメリット5選​

​​ベンダーロックイン(特定の事業者への依存)を防げる​

マルチクラウドを採用することで、特定のクラウドベンダーに依存する、ベンダーロックインを回避できます。​

​​単一のクラウドに依存しすぎると、将来的な利用料の大幅な値上げやサービスの突然の仕様変更、サポート品質の低下などに影響されやすくなるのが課題です。​

​​複数のクラウドで稼働できる体制を整えることで、ビジネスの要件変化に合わせて最適なプラットフォームを自由に選択できる経営環境が整います。

​​システム障害の際にもリスクを分散できる

マルチクラウドを採用した場合、万が一システム障害が発生した場合にもリスクを分散できます。​

​​ひとつのクラウドシステムのみを利用している場合、そのシステムが停止すると、業務全体に影響をおよぼします。

​​システム障害による経済的損失や社会的信用のリスクを最小限に抑えるためにも、複数のクラウドを利用する対策は有効です。​

​​目的に応じて最適なサービスを選択できる​

​​各クラウドベンダーが得意とする機能を使い分けることで、システムのパフォーマンスと開発効率を向上できる点もメリットです。​

​​たとえば、既存のオフィス製品との親和性が高いものや、データ分析や機械学習の処理能力に優れたものなど、各サービスの強みと特色があります。​

​​これらを組み合わせることで、機能軸での適材適所な配置が可能です。

​​結果的に、既存の体制を残しつつも、最新技術の恩恵をいち早くビジネスに還元できるようになります。

コストを最適化できる

マルチクラウド環境は、自社でサーバーを買ったりデータセンターを用意したりする必要がなく、初期費用を抑えやすい点が特徴です。​

また、​従量課金制で提供される場合、他のクラウドを利用し始める際もスモールスタートでの展開が可能です。​

​​たとえば、新しいプロジェクトで別のクラウドが提供する最新の生成人工知能機能を試したい場合、既存の契約プランに縛られることなく、少額から環境を構築してプロトタイプ(試作モデル)を動かせます。

事業やプロジェクトを拡大しやすい​

​​ビジネスの急激な変化に対して迅速かつ柔軟に対応できる拡張性を確保できる点も、マルチクラウドのメリットです。​

​​たとえば買収した企業が自社とは異なるクラウドを使用している場合でも、マルチクラウドを前提とした管理体制が整っていれば、インフラ統合のハードルを下げられます。​

​​結果的に、スムーズな事業展開が可能です。

​​将来の不確実性に備え、どのクラウドでも迅速に受け入れられる体制を整えておくことが重要です。

企業がマルチクラウドを導入する際の課題・デメリット4選​

運用体制が複雑になりやすい​

​​マルチクラウド環境では、クラウドごとに仕様が大きく異なるため、運用や管理が複雑になることが課題です。​

​​監視方法やパッチ適用、バックアップの手順など、クラウドごとに個別に実行しなければなりません。​

​​こうした運用の分断は、障害発生時に「どこで何が起きているか」が把握しにくく、復旧までに時間を要します。​

​​運用を属人化させないためにも、複数クラウドを横断して一元管理できるクラウド管理プラットフォームの導入が不可欠です。​

全体のコストを把握するのが難しい

全体のコストを把握することが難しい点も、マルチクラウドの課題のひとつです。

​​各社で課金体系がバラバラであることに加え、クラウド間での通信にともなうデータ転送料などの隠れたコストも発生します。そのため、予算管理が複雑です。​

​​また、どの部門がどれくらいのリソースを消費しているかという正確な実態の把握が難しいといえます。

​​コストの可視化は、マルチクラウドを運用するうえで重要です。

ノウハウのある人材を確保できない

複数のクラウド基盤を使いこなし、横断的に設計・運用できる人材を確保することは、現代の労働市場において困難です。

​​ひとつのクラウドサービスを使いこなすにも、多くの学習時間を要します。そのため、マルチクラウドに対応できる人材を育成するためには、教育コストと時間がかかります。

​​また、担当者にすべてのクラウドサービスの習熟を求めるのは、現実的ではありません。

​​対策として、マルチクラウドに精通した外部パートナーを戦略的に活用するのがおすすめです。​

​​セキュリティー面での不安がある

セキュリティー面での不安は、マルチクラウド環境においても課題のひとつです。

​​クラウドごとに仕様が異なるため、統一的なセキュリティーポリシーの適用が難しいといえます。

​​これにより、設定の不備による情報漏えいリスクが高い点がデメリットです。

​​たとえば特定のクラウドだけ権限設定が甘くなったり、監査ログの保持期間が不足したりといった統制の穴が生じやすくなります。​

​​対策として、全クラウドのログを一元的に監視・監査できる体制を構築することが不可欠です。

自社でマルチクラウドを導入するまでの流れ

​​1.マルチクラウドの導入目的を明確化する​

まずは、「なぜ複数のクラウドが必要なのか」の理由を言語化し、マルチクラウドの導入目的を明確化することが大切です。

​​たとえば、特定のベンダーへの依存を回避したい場合、各クラウドの共通機能のみを使うシンプルな設計を重視するなどの方針が考えられます。​

​​自社で優先すべき課題が、ビジネス継続計画の強化なのか、コスト交渉力の確保なのか、あるいは技術的な差別化なのかを最初に定義することが重要です。

​​2.目的に応じてサービスを選ぶ​

​​続いて、マルチクラウドの導入目的に応じて、クラウドサービスを選定します。ここでは、自社で実施する業務と、クラウドサービスごとの強みをマッチさせることが大切です。​

​​適材適所の配置ルールをあらかじめ策定することで、マルチクラウドのメリットを最大化できます。

​​サービス選定の際は機能面だけでなく、自社のエンジニアがもつスキルや、ベンダーによるサポート体制の充実度まで含めて、客観的に評価することが求められます。​

​​3.運用およびセキュリティー体制を整える

クラウドサービスを選んだ後は、運用やセキュリティー体制を整えます。

​​クラウドサービスごとに、分断された運用を避けるのがポイントです。設定ミスによる情報漏えいや、監視の分断によるシステム障害への対応の遅れなどを防止します。

​​また、全クラウドの操作ログや脆弱性情報をひとつのセキュリティーダッシュボードに集約し、​構成ドリフト​を即座に検知できる体制が必要です。

​​4.データ移行のスケジュールを決める​

続いて、データ移行のスケジュールを立てます。一度に大量のデータを異なるクラウド間へ移動させると、膨大なデータ転送料が発生し、連携に支障が出るおそれがあります。​

​​まずは災害復旧用のバックアップデータなど、リアルタイム性の要求が低いものから別クラウドへ転送しましょう。​

​​次に、参照系のデータベース同期、最後にアプリケーション本体の切り替えという順序でリスクを段階的に抑えていく手法が有効です。​

​​5.継続的に運用体制を整える​

​​システムを構築して終わりにするのではなく、運用負荷をできるだけ少なくし、継続的に運用できる体制を整えます。​

​​クラウドの利用状況は常に変化するため、自社の情況をモニタリングすることが大切です。​

​​さらに、機械学習を用いた最新技術を積極的に活用し、クラウド間の仕様の違いを抽象化することで、運用チームが個別のインフラ差異を意識せずに済む状態を目指します。​

​​こうした自動化と標準化の積み重ねが、継続的な運用につながります。​

​​6.改善点を分析して次回に活かす​

​​マルチクラウドの導入効果や改善点などを分析して、運用に活かすことも大切です。

​​マルチクラウドの効果はベンダー依存の低下やリスク分散といった目に見えにくい性質をもつため、成果を客観的に証明し続けることが求められます。

​​実際の運用過程で得られた「特定のクラウドでのトラブル事例」や「コスト最適化の成功パターン」を蓄積しておくと安心です。​

​​改善点を次回のプロジェクトに活かし、組織全体のクラウド活用能力を高めます。​

​​マルチクラウド環境で実施すべきセキュリティー対策​

管理ツールを活用する​

マルチクラウド環境では、クラウドごとに管理方法や設定画面が異なるため、運用が煩雑になりがちです。そこで、複数のクラウドを一元的に可視化・管理できる統合管理ツールを活用することが重要です。​

​​設定ミスや権限の過剰付与を防ぎ、セキュリティー状況を横断的に把握できます。

​​また、ログ監視やポリシーの自動適用により、インシデントの早期発見や対応力の向上にもつながります。​

​​アクセス権限を管理する​

​​マルチクラウドの場合、利用するクラウドごとにアカウントや権限管理の仕組みが異なるため、アクセス権限の整理が不可欠です。​

アクセス権限を管理する​

​​マルチクラウドの場合、利用するクラウドごとにアカウントや権限管理の仕組みが異なるため、アクセス権限の整理が不可欠です。

​​必要最小限の権限のみを付与する原則を徹底し、不要なアカウントや権限は定期的に見直します。​

​​加えて、多要素認証の導入や操作ログの管理により、不正アクセスや内部不正のリスクを低減し、セキュリティーレベルの維持・向上をはかることが重要です。

データ転送時には暗号化する​

​マルチクラウド環境では、クラウド間や外部システムとのデータ転送が発生するため、通信内容の盗聴や改ざん対策が欠かせません。​

​​データの転送時にはSSL・TLSなどの暗号化通信を必ず使用し、安全性を確保します。暗号化により、万が一通信が傍受されても内容を読み取られるリスクを抑えられます。​

​​また、暗号化方式や証明書の有効期限を定期的に確認し、常に適切な設定を維持することも重要です。

まとめ