近年、企業の情報システムを狙うサイバー攻撃は高度化しており、その中でも注意が必要とされるのが「ゼロデイ攻撃」です。まだ修正されていないシステムの弱点を突くため、従来の対策だけでは防ぎにくい特徴があります。
本記事では、ゼロデイ攻撃の基本的な仕組みや特徴を整理し、企業が取るべき対策の考え方までわかりやすく解説します。
ゼロデイ攻撃とは
ゼロデイ攻撃とは、開発元が脆弱性を把握・修正する前(または修正プログラムが提供される前)に、その脆弱性を悪用して行われる攻撃です。
防御側が十分な対策を取る猶予がほとんどないことから「ゼロデイ」と呼ばれます。
たとえば、OSや業務アプリケーションに新しい脆弱性が見つかった場合、開発元が修正プログラムを提供するまでに時間がかかることがあります。その間に、攻撃者が脆弱性を利用して不正アクセスやマルウェア感染を引き起こすのです。
一般的なセキュリティーソフトは既知の攻撃パターンをもとに検知を行いますが、ゼロデイ攻撃は未知の脆弱性を利用するため検知が難しい場合があります。そのため、企業の情報セキュリティー対策において、特に注意すべき攻撃手法のひとつとされています。
ゼロデイ攻撃の特徴
ゼロデイ攻撃が企業にとって大きなリスクとなるのは、通常のサイバー攻撃とは異なる特徴を持つためです。
主な特徴として、以下の3点が挙げられます。
- 事前に防ぐのが難しい
- 発見が遅れやすい
- 被害が拡大しやすい
それぞれの特徴を理解しておくと、どのような対策を取るべきかが見えやすくなります。
ゼロデイ攻撃は、あらかじめ防御することが難しい攻撃として知られています。理由は、攻撃に利用される脆弱性がまだ公開されておらず、修正プログラムも提供されていないためです。
一般的なセキュリティーソフトは、過去に確認された攻撃パターンをもとに不審な動きを検知します。しかし、ゼロデイ攻撃ではそのパターン自体が存在しないため、従来の対策だけでは見逃されかねません。
たとえば、業務で利用しているソフトウェアの新しい脆弱性が攻撃者に先に見つかった場合、企業側が対策を取る前に侵入を許してしまうこともあります。こうしたリスクを減らすためには、ネットワーク監視やアクセス権限の管理など、複数の対策を組み合わせた運用が必要です。
ゼロデイ攻撃は、被害に気づくまで時間がかかりやすい点も特徴のひとつです。攻撃に使われる脆弱性が知られていないため、不審な動きがあってもすぐに原因を特定できない場合があります。
たとえば、社内の端末から外部サーバーへ不審な通信が続いていても、通常の業務通信と区別できず見逃されることがあります。このような状態が続くと、攻撃者は社内ネットワーク内で活動を広げ、複数のシステムへ侵入する可能性があります。被害を最小限に抑えるためには、こうした不審な動きの早期発見が重要です。
そのためには、ログ監視や異常な通信の検知など、日常的なセキュリティー監視を行う体制を整えることが欠かせません。
ゼロデイ攻撃は、被害が広がりやすい点にも注意が必要です。侵入に気づくまで時間がかかるため、攻撃者が長期間にわたりシステム内部で活動する可能性があります。
たとえば、最初はひとつの端末への侵入であっても、その後に別のサーバーやデータベースへアクセスされると、影響範囲は確実に大きくなります。顧客情報や機密情報が保存されているシステムにまで侵入されれば、大規模な情報漏えいにつながりかねません。
被害拡大を防ぐためには、ネットワークを分けて管理することや、アクセス権限を適切に設定する方法が有効です。
ゼロデイ攻撃の主な手法
ゼロデイ攻撃にはいくつかの手法がありますが、代表的なものとして以下の2つが挙げられます。どちらも未修正の脆弱性を利用する点は同じですが、攻撃の対象や目的が異なります。
- ばらまき型攻撃
- 標的型攻撃
ばらまき型攻撃とは、不特定多数の企業やユーザーに向けて広く攻撃を仕掛ける方法です。
攻撃者はメールやWebサイトなどを利用し、多くの利用者がアクセスする環境を通じてゼロデイ脆弱性を悪用します。たとえば、悪意のあるファイルを添付したメールを大量に送信したり、改ざんされたWebサイトにアクセスさせたりする手口が知られています。
企業の規模や業種に関係なく被害が発生する可能性があるため、基本的なセキュリティー対策を徹底することが欠かせません。日常的に不審なメールやファイルに注意を払い、組織全体で対策を行う必要があります。
標的型攻撃は、特定の企業や組織を狙って行われる攻撃です。攻撃者は事前に対象企業の情報を調べ、業務内容や関係者になりすましたメールを送るといった方法で侵入を試みます。
たとえば、取引先を装ったメールに不正なファイルを添付し、開封させることでシステムへ侵入するケースが挙げられます。
ゼロデイ脆弱性が利用されると、通常のセキュリティー対策では不審な動きを検知できません。そのため、企業ではメール対策やアクセス権限の管理、ネットワーク監視などを組み合わせた多層的な防御を行い、侵入のリスクを減らす取り組みが必要になります。
ゼロデイ攻撃による主な被害内容
ゼロデイ攻撃を受けた場合、企業にはさまざまな被害が発生する可能性があります。代表的なものとして、次のような被害が挙げられます。
- 不正アクセス・マルウェア感染による情報流出
- 金銭的損害
- 企業の社会的信用の低下
特に多く見られるのが、不正アクセスやマルウェア感染による情報流出です。攻撃者がシステムへ侵入すると、顧客情報や社内の機密データが外部へ持ち出されるおそれがあります。
また、被害の調査や復旧対応には多くの費用が発生するため、企業にとって大きな金銭的負担となる場合があります。さらに、情報漏えいなどの事故が公表されると、取引先や顧客からの信頼低下につながりかねません。
このような影響は長期的に企業活動へ影響することもあるため、事前のセキュリティー対策と早期対応の体制を整えておくことが重要です。
ゼロデイ攻撃に狙われやすい企業の特徴
ゼロデイ攻撃は、あらゆる企業が標的になりえますが、攻撃者が特に狙いやすい企業にはいくつかの共通した特徴があります。主な特徴として、以下の4つが挙げられます。
- 財務や知的財産の価値が高い企業
- OSSを多く運用している企業
- 大規模なサプライチェーンに関連する中小企業
- 大量の個人情報や決済情報を保有する企業
自社がいずれかに該当する場合は、優先的なセキュリティー体制の見直しが必要です。
財務情報や研究開発データなど、価値の高い情報を保有する企業はゼロデイ攻撃の対象になりやすいといわれているため注意が必要です。
攻撃者は不正アクセスによって企業の機密情報を入手し、それを売買したり競争優位を得るために利用したりする場合があります。
特に製造業や研究機関などでは、技術資料や設計データが流出すると企業活動に大きな影響を及ぼします。
こうしたリスクを抑えるためには、機密情報へのアクセス権限を適切に管理し、重要なデータを保護する仕組みを整えることが重要です。
OSS(オープンソースソフトウェア)を多く利用している企業も、ゼロデイ攻撃の影響を受けやすい可能性があります。OSSは、プログラムの設計情報が公開されており、誰でも利用や改良ができるソフトウェアのことです。
OSSは多くの企業が業務システムやWebサービスで利用しており、利便性の高いソフトウェアですが、新たな脆弱性が見つかることもあります。
もしその脆弱性が公開される前に攻撃者に悪用されると、システムへの侵入につながるおそれがあります。OSSを安全に運用するためには、利用しているソフトウェアの更新情報を定期的に確認し、修正プログラムが公開された場合には速やかに適用するなど、継続的な管理が必要です。
大企業と取引関係にある中小企業も、ゼロデイ攻撃の対象になることがあります。
攻撃者は直接大企業を狙うのではなく、セキュリティー対策が比較的手薄と考えられる取引先企業を経由して侵入を試みる場合があるため注意が必要です。こうした手口は「サプライチェーン攻撃」と呼ばれ、取引先のシステムを通じて大企業へ影響を及ぼしてしまいます。
そのため、中小企業であっても自社のセキュリティー対策を見直し、取引先へ被害が及ばないようにする取り組みが求められます。
顧客の個人情報や決済情報を多く扱う企業も、ゼロデイ攻撃の標的になりやすいとされています。攻撃者にとって個人情報は価値が高く、不正に取得したデータが売買されるケースもあるためです。
特にECサイトやオンラインサービスを提供する企業では、顧客情報が集中して保存されている場合が多く、侵入されると被害が大きくなる可能性があります。
このようなリスクを防ぐためには、データの暗号化やアクセス管理の強化など、情報を保護する仕組みを整えることが重要です。
ゼロデイ攻撃を受けた場合の対応手順
ゼロデイ攻撃の疑いが生じた際は、初動の速さと手順の正確さが被害の最小化を左右します。対応は、以下の4つのステップに沿って進めるとスムーズです。
1.初動対応(感染が疑われる端末のネットワーク遮断、該当アカウントの停止など)
2.証拠保全と原因調査
3.マルウェアの除去や設定変更などの根絶対応
4.再発防止の検討
まずは、感染が疑われる端末やサーバーをネットワークから切り離し、被害の拡大を防ぎます。この際、電源を落とすとメモリ上の情報が失われる可能性があるため、可能な限り電源を入れたままの状態でログを取得・保存します。
次に通信履歴やログを確認し、侵入経路や影響範囲の調査が必要です。必要に応じて外部のセキュリティー専門機関へ相談する方法も有効です。
復旧後は同様の侵入を防ぐための設定変更を行い、社内関係者や必要に応じて関係機関へ報告します。
ゼロデイ攻撃への対策
ゼロデイ攻撃は未知の脆弱性を利用するため、単一の対策だけで防ぐことは難しいとされています。そのため、複数のセキュリティー対策を組み合わせて被害のリスクを下げることが重要です。
企業では、自社のシステム環境や運用体制に合わせて対策を整える必要があります。代表的な対策として、次の5つが挙げられます。
- 基本的なセキュリティー対策の徹底
- 第三者による脆弱性診断の実施
- サンドボックス環境の活用
- 重要情報の暗号化とネットワーク分離
- EDRの導入
これらの対策を組み合わせることで、攻撃の侵入や被害拡大のリスクを抑えやすくなります。
ゼロデイ攻撃への備えとして、まず取り組みたいのが基本的なセキュリティー対策の徹底です。
OSや業務ソフトウェアの更新を定期的に確認し、修正プログラムが公開された場合には速やかに適用します。また、強固なパスワード設定や多要素認証を導入することで、不正アクセスのリスクを減らせます。
さらに、不要なアカウントや権限を整理し、システムへのアクセス範囲を適切に管理する方法も有効です。日常的な運用の中でこうした対策を継続することで、攻撃の被害を最小限に抑えやすくなります。
自社のシステムにどのような脆弱性があるのかを把握するためには、第三者のセキュリティー企業へ脆弱性診断を依頼するのもひとつの方法です。
専門の調査会社は、システム設定やソフトウェアの状態を確認し、不正アクセスにつながる可能性がある問題点を洗い出します。社内の担当者だけでは見つけにくい脆弱性を把握できるため、攻撃を受ける前に対策を進めやすくなります。
診断結果をもとにシステム設定の見直しやソフトウェアの更新を行うことで、ゼロデイ攻撃を含むさまざまなサイバー攻撃への対策強化が可能です。
サンドボックス環境とは、不審なファイルやプログラムを安全な環境で実行し、その動きを確認する仕組みです。通常の業務システムとは隔離された場所で動作を検証するため、悪意のあるプログラムが含まれていた場合でも本番環境へ影響を与えにくくなります。
たとえば、メールに添付されたファイルをサンドボックスで解析することで、不正なプログラムが含まれているかどうかの確認が可能です。その結果、マルウェアの感染を事前に防げる場合があります。
未知の攻撃に対しても一定の効果が期待できるため、企業のセキュリティー対策として導入されるケースが増えています。
企業が保有する重要な情報を守るためには、データの暗号化やネットワーク分離といった対策も有効です。
暗号化を行うことで、万が一データが外部へ持ち出された場合でも内容を読み取られにくくなります。
また、ネットワーク分離と呼ばれる方法も有効です。これは社内ネットワークを用途ごとに分けて管理する仕組みで、攻撃者が侵入した場合でも被害の範囲を限定できます。顧客情報や機密データを扱うシステムを他のシステムと分離して運用することで、情報漏えいリスクの低減につながります。
EDRとは、パソコンやサーバーなどの端末の動作を継続的に監視し、不審な挙動を検知するセキュリティー対策です。
従来のウイルス対策ソフトでは検知が難しい攻撃であっても、EDRは端末の異常な動きを監視することで早期発見につながる場合があります。
たとえば、不審なプログラムの実行や通常とは異なる外部通信が確認された場合、管理者へ通知が行われます。こうした仕組みにより、被害が広がる前に調査や対処が可能です。
ゼロデイ攻撃のように未知の脆弱性を悪用した攻撃に対しても、監視体制の強化として役立つ仕組みといえます。
まとめ
ゼロデイ攻撃とは、まだ修正されていないソフトウェアの脆弱性を突いて行われるサイバー攻撃です。
未知の脆弱性を悪用するため、従来のセキュリティー対策だけでは検知が難しい場合が多いのが特徴です。被害が発生すると、情報漏えいや業務停止などにつながる可能性があります。
こうしたリスクに備えるには、基本的なセキュリティー対策を継続することに加え、脆弱性診断やEDRなど複数の対策を組み合わせて運用することが有効です。
自社のシステム環境や保有している情報を把握し、継続的にセキュリティー体制を見直すことで、ゼロデイ攻撃による被害を抑えやすくなります。
セキュリティー対策に関するご相談がある場合には、富士フイルムビジネスイノベーションジャパンまでお気軽にお問い合わせください。
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