富士フイルムビジネスイノベーション
ホーム ソリューション 中堅・中小企業のDX推進コラム ITセキュリティーコラム:VDIとは?仕組みやメリット、導入時の注意点もわかりやすく解説

テレワークの普及やセキュリティー強化の必要性が高まるなか、VDI(仮想デスクトップインフラ)への注目が集まっています。VDIは、パソコンの作業環境をサーバー上で管理し、利用者が場所や端末を問わず同じ業務環境にアクセスできる仕組みです。

本記事では、VDIの基本的な仕組みや種類、導入によるメリットを整理しながら、検討時に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。

VDIとは

VDIの仕組み

VDIでは、データセンターやクラウド上のサーバーに仮想的なデスクトップ環境を作成し、利用者はネットワークを通じてその環境に接続します。端末側で処理を行うのではなく、サーバー側でアプリケーションやデータ処理を実行します。その結果として表示される画面のみが、ユーザーの端末へ送信されます。

この仕組みにより、端末の性能に依存しにくい業務環境の実現が可能です。また、データはサーバー側に保存されるため、端末紛失時の情報漏えいリスクを抑えやすくなります。

IT管理者は仮想デスクトップの設定や更新をサーバー側からまとめて実施できるため、管理負荷の軽減にもつながります。

VDIとリモートデスクトップの違い

VDIとよく混同されるのが「リモートデスクトップ」です。VDIとリモートデスクトップはどちらも遠隔からデスクトップ環境に接続する仕組みですが、システムの構成や運用方法が異なります。

リモートデスクトップは既存のPCやサーバーに遠隔接続して操作する方法であり、基本的には特定の端末にログインして作業します。

一方VDIは、利用者ごとに仮想デスクトップ環境を用意し、サーバー上で業務環境を提供する仕組みです。接続先が特定の物理PCではなく、サーバー上の仮想環境である点が大きな違いです。

この構造の違いにより、VDIでは複数の利用者がそれぞれ独立したデスクトップ環境を利用できます。仮想デスクトップをサーバー側でまとめて管理できるため、個別PCに遠隔接続する運用と比べて、セキュリティ管理や環境の拡張を行いやすい仕組みといえます。

VDIの3つの種類

オンプレミス型

オンプレミス型とは、サーバーや関連機器を自社のデータセンターや社内に設置し、自社で管理・運用するVDIの形態です。

すべての機器とデータが自社の管理下に置かれるため、セキュリティーポリシーを細かくコントロールしやすく、金融・医療・官公庁など高い機密性が求められる業界で採用されやすい傾向にあります。

一方で、サーバーや仮想化ソフトウェアの初期費用が必要であり、設計・構築には専門的な知識を持つ担当者が必要です。また、システムの拡張時には追加機器の調達や設定作業が発生するため、柔軟なスケールアップが難しい面もあります。

自社でインフラをコントロールしたい企業や、法令・規制上クラウドへのデータ移行が制限されている業種に向いているといえます。

クラウド型

クラウド型は、AWSやMicrosoft Azureなどのパブリッククラウド上にVDI環境を構築する形態です。自社でサーバー機器を購入・管理する必要がなく、利用した分だけ費用を支払う方式が主流なため、初期投資を大幅に抑えられます。

また、ユーザー数の増減に応じて仮想マシンの台数を柔軟に調整できる点もメリットです。

ただし、長期的に使い続けると月々の利用料が積み上がりやすく、オンプレミス型と比較してトータルコストが高くなるケースもあります。加えて、インターネット回線の品質が作業のしやすさに直結するため、接続環境の整備も検討が必要です。

テレワーク導入を急ぎたい企業や、社員数の増減が多いスタートアップ企業などに向いているといえます。

ハイブリッド型

ハイブリッド型は、オンプレミス型とクラウド型を組み合わせて運用する形態です。たとえば、機密性の高い基幹業務システムは自社のサーバーで管理しながら、一般的な事務作業用の仮想マシンはクラウドで提供するといった使い分けができます。

これにより、セキュリティーと拡張性の両方を考慮した環境を構築できます。

ただし、この方式はそれぞれの長所を活かせる反面、2つの環境を同時に管理するため、運用の複雑さが増す点に注意が必要です。設計段階でどの業務をどちらの環境に置くかを明確にしておかなければ、管理コストが想定以上に膨らむ可能性があります。

すでにオンプレミス環境を持つ企業が、段階的にクラウドへ移行していく際の運用形態としても選ばれやすく、自社の既存資産を活かしながら柔軟性を高めたい場合に適した構成といえます。

VDIの提供方式の違い

VDI方式:仮想PC方式

VDI方式は、サーバー上に利用者ごとに専用の仮想マシンを作成し、個別の環境を提供する方式です。各ユーザーが独立した仮想PCを持つため、アプリケーションの設定やデスクトップ環境を自由にカスタマイズできます。

他のユーザーの操作が自分の環境に影響を与えることがなく、安定した動作が期待できる点が強みです。一方で、ユーザー数分の仮想マシンを用意する必要があるため、サーバーリソースの消費が多くなりやすく、管理・運用のコストも大きくなる傾向があります。

個人ごとに異なる業務環境が必要な場合や、専門的なアプリケーションを使う技術職やクリエイター職の方に向いている方式といえます。

SBC方式:サーバーデスクトップ共有方式

SBC(Server Based Computing)方式は、1台のサーバー上で複数のユーザーが同じOSやアプリケーションを同時に共有して使う方式です。利用者ごとに仮想PCを用意するのではなく、サーバーOS上のデスクトップをセッション単位で分けて利用します。

1台のサーバーリソースを効率よく分け合えるため、VDI方式と比べてコストを抑えやすい点が特長です。

ただし、あるユーザーが処理の重い作業を行うと、同じサーバーを使う他のユーザーの動作に影響が出ることがあります。また、個別のカスタマイズには制限があるため、全員が同じアプリケーションを使う一般事務作業といった業務内容が統一された組織に適しているといえます。

HDI方式:ホスト型デスクトップインフラ方式

HDI(Hosted Desktop Infrastructure)方式は、サーバー側に配置された専用のマシンをユーザーごとに1台割り当て、ネットワーク経由で利用する仕組みです。仮想化基盤を用いて複数環境を共有する方式とは異なり、利用者ごとに専用のリソースを占有できる点が特徴です。

そのため、CPUやGPUの性能を活かしやすく、高い処理性能が求められる業務にも対応しやすい環境を構築できます。

また、利用者ごとに独立した環境が割り当てられるため、他のユーザーの影響を受けにくく、安定した操作性を維持しやすい点もメリットです。設計によっては環境の初期化や設定管理を一元化することも可能で、運用方針に応じた柔軟な環境構築が行えます。

DaaS方式:パブリッククラウド方式

DaaS(Desktop as a Service)方式は、クラウドサービスプロバイダーが提供する仮想デスクトップ環境を利用する方式です。自社でサーバーを購入・管理する必要がなく、インターネット環境さえあればどこからでも同じデスクトップにアクセスできます。

利用するユーザー数に応じて契約台数を増減できるため、人員の変動が多い組織や、短期間でのシステム展開が求められる場面に向いています。

クラウド事業者がインフラのメンテナンスを担うため、自社のIT担当者の運用負荷を減らしやすい点も利点です。一方で、長期間の利用では月額費用が積み上がるため、導入前に総コストの試算を行うことをおすすめします。

VDIのメリット

端末管理・運用負荷を削減できる

VDIでは、OSやアプリケーションをサーバー上で一元管理するため、各端末に個別でソフトウェアをインストールしたり、設定変更を行ったりする作業が不要になります。その結果、IT管理者が行う業務の効率化が可能です。

たとえば、100台のパソコンにセキュリティーパッチを適用する場合、従来は1台ずつ対応が必要でしたが、VDIならサーバー側の仮想マシンを更新するだけで全員に反映されます。

また、手元の端末が故障した場合も、別の端末から同じ仮想環境にログインすれば、すぐに業務の再開が可能です。

管理作業を集約することで、限られたIT人員でも多くの端末を効率よく運用できる体制が整い、端末管理にかかる運用負担の軽減が期待できます。

セキュリティー統制を強化できる

VDIは、データをすべてサーバー側で保持し、手元の端末にはデータが残らない構造です。そのため、端末の紛失や盗難が発生しても、社内の重要情報が外部に漏えいするリスクを下げられます。

また、VDI環境ではUSB接続や外部ストレージへのアクセスを仮想環境の設定でまとめて制限できるため、意図しないデータの持ち出しを防ぐ仕組みを作りやすくなります。アクセス権限もユーザーごとに細かく設定でき、特定のファイルや機能を閲覧・操作できる人を絞ることも可能です。

こうした設定をサーバー側で一括管理できる点は、運用のバラツキを抑えながらセキュリティー統制を維持しやすい仕組みといえます。

テレワークや災害時に強いBCP対策ができる

VDIは、インターネット環境があればどこからでも社内と同じデスクトップ環境にアクセスできるため、在宅勤務や外出先での業務にもスムーズに対応できます。

たとえば、自宅や外出先からでも会社と同じ業務環境にアクセスできるため、テレワークの推進にも効果的です。さらに、災害や感染症などにより出社が難しい状況でも、従業員が自宅から業務を継続できる環境を整えやすくなります。こうした仕組みは、BCP対策(事業継続計画)の観点でも有効です。

拠点が複数ある企業や、緊急時の業務継続を強化したい組織に特に向いているといえます。

VDIの導入の際の注意点

VDIの導入を成功させるためのポイント

導入の目的を明確にする

VDIを導入する前に、「何のために導入するのか」を社内で明確にしておくことが大切です。

たとえば「テレワーク環境の整備」「情報漏えいリスクの低減」「IT部門の運用負荷削減」など、目的によって選ぶべき方式や機能が変わってきます。

目的が曖昧なまま導入を進めると、現場のニーズと実際のシステムがかみ合わず、使われないまま費用だけがかさむ結果になりかねません。導入前に経営層・IT担当者・現場担当者の三者で要件をすり合わせておくことが重要です。解決すべき課題を言語化することで、導入計画を立てやすくなります。

目的を起点に方式・規模・優先順位を決めることで、ベンダーへの要件定義もスムーズに進められます。

事前に運用設計を策定する

VDIは導入して終わりではなく、稼働後の運用設計まで見越して準備を進めることが求められます。具体的には、障害が発生した際の対応フローや定期的なシステムアップデートの手順、ユーザーアカウントの追加・削除ルールなどを事前に文書化しておくことが欠かせません。

また、小規模なグループでPoC(試験導入)を実施し、実際の使い勝手や課題を確認してから全社展開に移行するステップも効果的です。いきなり全社に展開すると、想定外の問題が一斉に表面化して対応が追いつかなくなるおそれがあります。

現場からのフィードバックを段階的に取り込みながら進めると、定着率を高めやすくなります。

運用後のコストを算出しておく

VDIの費用は、初期構築費用だけでなく、月々の運用コストも含めて試算することが欠かせません。具体的には、サーバーの保守費やライセンス更新料、ネットワーク回線費用といった複数の要素が継続的に発生します。

特にライセンス費用は見落とされやすいため、注意が必要です。WindowsのVDA(仮想デスクトップアクセス)ライセンスやRDS CAL(リモートデスクトップサービスのアクセス権)など、必要なライセンスが構成や利用形態によって異なるため、事前に条件を整理したうえで確認することが重要です。

導入前にはベンダーへ詳細な見積りを依頼し、3〜5年分のトータルコストを算出しておくことで、社内での検討や比較を進めやすくなります。

まとめ