AIエージェントとは?生成AIとの違いや仕組み・導入例についてわかりやすく解説

2025.09.08

AIエージェントとは?
生成AIとの違いや仕組み・導入例についてわかりやすく解説

AIエージェントとは?生成AIとの違いや仕組み・導入例についてわかりやすく解説

近年、ビジネス現場で注目を集めているAIエージェント。生成AIと同じ人工知能技術を活用しますが、自ら状況を判断し、計画・実行までを継続的に行える自律型AIであるのが特徴です。

会議の予定調整から資料作成、顧客対応までを自動でこなし、企業の業務効率化や生産性向上に貢献します。

本記事では、AIエージェントの意味や生成AIとの違い、導入メリットから注意点までをわかりやすく解説。カストマーサポート・営業支援・事務作業の自動化など、実際の導入事例も紹介します。

AIエージェントとは

AIエージェントとは何かについて、意味や生成AIとの違い、仕組みについて解説します。

AIエージェントとは、与えられた目標を達成するために状況を自ら把握し、計画を立てて実行まで行う自律型のAIシステムです。単なる情報処理ツールとは異なり、外部ツールやシステムと連携しながら継続的に学習し、業務を遂行するデジタルワーカーとしての役割を果たします。

AIエージェントの特徴は、人間の監督下で自律的にタスクを進められる点です。たとえば、営業会議の予定調整から会議室の予約、招待メールの送信まで複数のプロセスを自動で実行してくれます。

従来の生成AIでは対応が難しかった複雑な業務プロセスの自動化を実現し、企業の業務効率化や生産性向上に貢献しています。

生成AIとAIエージェントは、どちらも人工知能技術を活用していますが、その特徴や用途、運用方法には以下のような違いがあります。

項目 生成AI AIエージェント
目的 ユーザーの指示に応じて、文章・画像・動画・音声など新しいコンテンツを生成する 目標達成のために複数のタスクを自律的に計画・実行・評価する
用途 文章・画像・動画・音声などのコンテンツ生成に特化 データ分析・意思決定の支援・業務プロセスの自動化など幅広く対応
活用例 ・広告コピー作成
・記事執筆
・画像生成
・動画字幕作成 など
・営業スケジュール自動調整
・在庫監視と自動発注
・カストマーサポート自動化
・レポート自動生成 など
運用方法 人間が都度プロンプト(指示)を入力し、その都度結果を取得する 目標を設定すると、必要な情報収集・計画・実行を自動で継続的に行う

生成AIはコンテンツ生成に強みを持つ一方、AIエージェントは継続的なタスク遂行や意思決定支援など、より広範な業務に対応できるのが特徴です。

目的が明確で短期間の作業であれば生成AI、複数の工程や継続的な管理が必要な業務にはAIエージェントなど用途に応じて使い分けることを推奨します。

AIエージェントは、「知覚・推論・行動・学習」という4つの流れで動作する仕組みで動作します。

動作 概要
知覚 音声・映像・テキスト・画像・センサー(温度・位置・動きなど)といった多様なデータから、状況を認識する役割を担う
推論 得られた情報をもとに、最適な対応や行動手順を判断する。複雑な条件を整理しながら、目標達成のためにどのようなアクションが適切かを論理的に導き出す。
行動 推論によって導き出された計画に従い、実際のタスクを実行。予定の調整・データの処理・システム操作など、目的に応じて柔軟な動作を行う。
学習 行動の結果を振り返り、成功・失敗の要因を分析。フィードバックを通じて、次回以降の精度や効率を向上させていく。

この4つのサイクルを継続的に回すことで、AIエージェントは単なる作業ツールを超えた自律的なパートナーとして、より高度な業務遂行が可能になります。

AIエージェントの特徴

AIエージェントは、おもに以下3つの特徴があります。

  • 自律的に判断・行動できる
  • 継続的に学習し情報を最適化する
  • 外部ツールと連携できる

特徴を理解することで、AIエージェントにどのようなことができるのかがイメージしやすくなります。

AIエージェントは人間から細かい指示を受けなくても、自ら判断して行動を実行できるシステムです。入力データや外部から取得した情報を分析し、その内容にもとづいて最適な行動を導き出す機能を備えています。

たとえば、「来週、営業チームとの会議を設定して」という目標を与えると、関係者のスケジュール確認・会議室予約・招待送信・資料添付までを自律的に実行。人間の監視下で自律的に判断・行動できる能力により、従来の指示待ち型から能動的にタスクを進めるパートナー型へと進化します。

AIエージェントは、行動の結果や新しい情報をもとに継続的に学習を行い、時間の経過とともにタスクの精度や実行効率を向上させていきます。たとえば、過去の商談データや顧客の反応履歴をもとに学習を重ねることで、より効果的なアプローチ方法や提案内容を自動で最適化します。

さらに、新たに登場した競合商品や市場トレンドの変化にも柔軟に対応。過去の成功パターンと最新のデータを組み合わせて戦略をアップデートすることで、商談成立率の向上や提案スピードの短縮といった成果が期待できる場合もあります。

AIエージェントの適応力により、変化の激しい市場や複雑な業務環境にもスムースに対応できるのが強みです。

AIエージェントは、外部ツールやデータベース、さらには他のAIエージェントとも連携可能です。そのため、単体では取得できない情報や機能を活用し、より高度な業務処理を実現できます。

たとえば、営業支援を行うAIエージェントがCRM(顧客管理システム)から最新の顧客データを取得し、結果を分析エージェントに連携。分析結果をもとに、プレゼン資料作成ツールにデータを渡して提案書を自動生成するといった、一連のプロセスをシームレスに実行します。

このように、AIエージェント同士や外部システムとの連携を組み合わせることで、単体では実現できない複雑な業務プロセスの完全自動化が可能です。結果、企業の業務効率や提案力の向上に貢献します。

AIエージェントの導入メリット

AIエージェントには、以下4つの導入メリットがあります。

  • 業務効率化と生産性向上
  • 人件費削減
  • 24時間365日の稼働
  • ヒューマンエラーの削減

メリットを理解することで、自社が持つ課題を解決できるか判断しやすくなります。

AIエージェントは、繰り返し発生する定型業務や時間のかかる処理を自動化し、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を実現します。複雑な手順を含む業務でも、一貫して処理できるため、作業のスピードと正確性が向上します。

たとえば、複数のデータベースから情報を収集・統合し、リアルタイムで最新の分析結果を提示することも可能です。これにより、人間が手作業で行えば数時間かかる業務を、わずか数秒で完了できます。

意思決定までの時間が短縮されることで、結果的に業務全体の効率化や生産性の向上につながります。

人が行っていた定型作業をAIエージェントに置き換えることで、採用・研修・管理といった人材関連コストや業務委託費を削減できます。また、複数の業務を同時並行で処理できるため、同じ成果をより少ない人員で実現可能です。

たとえば、カストマーサポートの一次対応・請求書の自動処理・送付などをAIに任せることで、人的リソースを抑えつつ業務を滞りなく進められます。

AIエージェントの導入には、初期投資や運用コストがかかるものの、限られた人員でより多くの業務をカバーできるようになり、長期的なコスト削減が期待できます。

AIエージェントは、時間や曜日に左右されず常時稼働できるため、営業時間外の対応や突発的なトラブルにも即座に対応可能です。これにより、休業日や深夜帯でもサービスを止めることなく提供でき、業務の中断や顧客対応の遅れを防げます。

また、製造現場では24時間体制で設備の稼働状況を監視し、異常を検知すると同時にアラートを発するシステムに活用可能です。金融や医療の分野では、取引や緊急対応の受け付けを止めず、常に最新情報をもとに判断・処理を行えます。

24時間365日の稼働体制により、機会損失を防ぎつつ、顧客満足度の向上と信頼関係の強化が期待できる場合があります。

AIエージェントは、事前に定義されたルールにもとづき、一貫した品質で業務を遂行します。疲労や感情の影響を受けず、常に同じ基準で判断できるため、人間の疲れや注意不足によるミスの削減が可能です。

大量データや複雑な計算も高速かつ正確に処理できるため、手作業では発生しやすい入力ミスや見落としも防ぎます。また、監査業務や品質検査では、人間では気づきにくいパターンや異常を自動で検出するのにも活用されています。

AIエージェントの導入により、ヒューマンエラーによる不具合発生などを低減し、成果物の品質を安定して維持できる点がメリットです。

ただし同時に、AI特有のリスクにも注意が必要です。学習データの偏りや文脈の誤解、想定外の入力に対する誤応答など、人間とは異なる形でエラーが発生する可能性があります。

そのため、AI固有のエラーを想定したチェック体制や、人間による最終確認を組み合わせることが大切です。

AIエージェント活用の注意点

メリットだけではなく、AIエージェントの活用には以下のように注意すべき点もあります。

  • 誤回答や倫理面への配慮
  • セキュリティー対策の重要性
  • 導入・運用の初期コストと設計の複雑さ

活用の注意点を理解して具体的な対策を考えたうえで、自社への導入を進めることが大切です。

AIエージェントは自律性を持ちますが、事実にもとづかない情報をもっともらしく出力してしまうハルシネーションや、学習データに含まれる偏りを引き継いだ判断を下すことがあります。

そのため、AIが出した結果をそのまま使うのではなく、必ず人間による最終確認が必要です。とくに医療診断や金融審査、採用判断や契約審査など重要性の高い業務では、最終判断を人間が行うことで重大な誤りや不公平な判断を防げます。

AIエージェントは業務を自動化するために、社内システムや顧客情報などの重要データを事前に読み込んで処理します。そのため、不正アクセスや設定ミスがあれば、機密情報が外部に漏えいするリスクがある点に注意が必要です。

情報漏えいした場合、顧客の個人情報や取引先との契約内容、社内の重要な計画が第三者に知られるなど、企業の信用失墜や金銭的損失につながるおそれがあります。

セキュリティーリスクを防ぐためには、利用できる情報や操作範囲を必要最低限に制限し、誰がいつどの操作を行ったかを記録・監視するなど、日常的なセキュリティー管理が重要です。

AIエージェントを導入するには、高度な仕組みづくりと安定運用のための体制が必要で、そのための初期投資や継続的な費用が発生します。外部サービス利用料や高性能な計算機器の使用料に加え、専門知識を持つ人材の採用・育成も必要です。

さらに、AIエージェントが扱うデータやタスクの規模が大きい場合、セキュリティー対策や保守運用のための追加費用もかかります。必要な費用を事前に見積り、段階的な投資計画を立てることが、予算オーバーや運用停止のリスクを避けるポイントです。

AIエージェントの設計段階では、システムの安定稼働と将来の拡張を見据えた複雑な検討が必要です。

具体的には、以下の点を検討する必要があります。

  • 仕組みやツールの選定基準
  • データや処理の状態を適切に管理する方法
  • エラー発生時の対応方法
  • 将来の利用拡大に備えた拡張性

これらの要素を十分に考慮せず導入を進めると、運用中にシステム障害やパフォーマンス低下が発生するリスクがあります。そのため、全面導入の前に小規模な試験運用を行い、設計の妥当性と安全性を検証することが重要です。

検証結果をもとに改善を重ねながら、段階的に適用範囲を拡大していくことで、リスクを最小限に抑えた導入が可能になります。

AIエージェントの導入例

最後に、AIエージェントの具体的な導入例について紹介します。

  • カストマーサポートでの自動応答
  • 営業支援とマーケティング
  • 事務作業の効率化

以下で紹介する事例から、自社の業務やサービスにどのようにAIエージェントを取り入れられるかを検討してみてください。

AIエージェントは、カストマーサポート業務の24時間365日体制での自動化に活用されています。

たとえば、オンラインショップではチャットボットが注文状況の確認や返品手続きを即座に案内し、必要な場合は自動で申請処理まで完了できるようになりました。

音声対応型のAIエージェントは顧客の発話を理解し、契約内容の照会や証明書の再発行手続きの自動化に活用されています。必要な情報を社内システムから取得し、その場で回答や手続きを完了させるため、オペレーターにつながるまで待つ必要がなくなりました。

顧客からの問い合わせに即時対応できるため、待ち時間を減らし、満足度向上と運用コスト削減を同時に実現しています。

営業やマーケティング領域では、AIエージェントが見込み顧客の発掘からアプローチ、商談設定、効果分析までの流れを自動化するために活用されています。営業担当者は時間のかかる事務作業から解放され、成約率を高めるための戦略的な活動に集中できるようになりました。

たとえば、AIエージェントが過去の商談履歴やウェブサイトの閲覧データを分析し、購入意欲の高い顧客を抽出。そして、顧客に合わせた提案メールを自動作成して送信します。

さらに、キャンペーンの反応率をリアルタイムで分析し、成果の高い施策に予算やリソースを即時再配分することも可能です。こうした仕組みにより、営業効率とマーケティング効果を同時に高められます。

AIエージェントを社内業務に活用したことで、繰り返し発生する定型作業を自動化し、社員がより付加価値の高い業務に集中できるようになりました。

たとえば、タスク管理ではAIエージェントが各メンバーの進捗や期限を把握し、優先順位を自動で入れ替えたり、必要なリマインドを送信したりします。担当者は進捗確認や調整に時間を取られず、企画立案や顧客対応、品質改善などの本来注力すべき作業に集中できるようになりました。

人事業務では、応募者情報の整理から面接日程の調整、必要書類の送付までの自動化に活用されています。応募者とのやり取りや社内関係者との調整もAIが担うため、採用担当者は候補者との面接や選考判断といったメイン業務に専念できるようになりました。

事務作業の自動化により、費やしていた時間を削減し、組織全体の生産性を向上させられます。

まとめ

AIエージェントは生成AIとは異なり、与えられた目標を達成するために自律的に判断し、行動を継続できる次世代のAI技術です。カストマーサポート・営業支援・事務作業など幅広い分野で活用が可能になり、ヒューマンエラーの削減や顧客満足度の向上にもつながります。

一方で、誤回答や情報漏えいといったリスクもあるため、適切な監視体制やセキュリティー設計が欠かせません。戦略的に活用すれば、AIエージェントは企業の競争力を高め、長期的な成長を支える存在になります。

富士フイルムビジネスイノベーションでは、AIエージェントを活用したDX推進をサポートするソリューションを提供しています。DX推進にお悩みの方はぜひ、お問い合わせください。