AI導入のメリット・デメリットや手順を解説!活用できる補助金や事例も紹介

2025.09.08

AI導入のメリット・デメリットや手順を解説!活用できる補助金や事例も紹介

AI導入のメリット・デメリットや手順を解説!活用できる補助金や事例も紹介

AIは今や特定の業界だけでなく、製造業・金融業・小売業などあらゆる分野で活用が広がっています。

しかし、AIにできることは多様なため、自社にあったツール選定や導入方法を知ることが大切です。

本記事では、AI導入の最新動向や導入によって得られるメリット、導入に活用できる補助金制度まで解説します。

AI導入の基礎知識

AI(人工知能)とは、人間が行ってきた判断や分析といった知的作業をコンピューターに学習させ、自動化や効率化を実現する技術の総称です。

ここ数年で技術は大きく進化しており、特に機械学習や自然言語処理の分野が発展したことで、膨大なデータを活用した高精度な予測や意思決定が可能になりました。これにより、従来は人間の経験や直感に頼っていた場面でも、データにもとづく客観的で効率的な判断が行えるようになりました。

AIは単なる効率化のためのツールにとどまらず、企業の競争力を高める戦略的な手段として注目されています。適切に導入することでコスト削減や業務効率化だけでなく、新たな価値の創出にもつながるため、今後さらに導入が加速していくと予想されます。

企業のAI導入率と動向

国内企業のAI導入は、世界に比べると遅れがあるものの、着実に広がりつつあります。

総務省の「令和6年情報通信白書」によれば、生成AIを「すでに利用している」または「今後利用を検討している」と回答した日本企業は46.8%ですが、トライアル中まで含めると導入率は約70%に達しています。

一方で、アメリカ・ドイツ・中国では導入率が80%前後と先行しており、日本は国際的に見るとまだ遅れをとっている状況です。こうした背景には、AIを扱える専門人材の不足や社内体制の整備不足といった課題が存在しています。

今後はこれらの課題を解消し、戦略的に活用を進める企業が競争力を高めていくと考えられます。

AI導入のメリット

企業がAI導入によって得られる主なメリットは、以下のとおりです。

  • 業務効率化と生産性向上につながる
  • コスト削減につながる
  • 品質向上が期待できる

メリットを知っておくことで、自社の課題が解決できるかの判断ができます。

AIを導入するメリットのひとつが、業務の効率化と生産性の向上です。反復的な作業を自動化したり、大量のデータを高速で処理したりできるため、従来は多くの時間を要していた業務の作業時間を短縮できます。

具体的には、定型的な書類作成やデータの分類・整理といった作業をAIに任せることで、処理スピードを高めながら人的ミスの削減が可能です。その結果、従業員は単純作業から解放され、企画立案や問題解決といった付加価値の高い業務に集中できるようになります。

以上の取り組みにより、同じ人数でもより多くの案件やプロジェクトを同時に進められる体制が整い、納期の短縮や売上拡大といった成果が期待できます。

AIの導入は、人件費や運用コストの削減に効果的です。業務の一部を自動化することで、追加の人員を増やすことなく業務量の増加に対応できます。

また、需要予測や在庫管理にAIを活用すれば、過剰在庫や欠品によるムダを減らし、仕入れや物流コストの最適化も可能です。

年間の人件費を削減したり、在庫回転率を改善してキャッシュフローを向上させるなど、財務面での効果があがる可能性があります。

AIを導入することで、品質管理の精度を高められるのもメリットです。AIはあらかじめ設定された基準やルールに従って作業を繰り返し実行できるため、人間が担当する場合に生じやすい品質のバラツキを抑えられます。

人間による検査や顧客応対はスキルや経験の差に加えて、長時間の作業による「疲労」や「体調不良」といったコンディションにも左右されやすいです。しかし、AIはこうした影響を受けず、常に同じ基準で判断を続けられるため、品質を一定に保てます。

具体例としては、製品の合否判定やマニュアルにもとづく顧客応対をAIに任せることで、担当者ごとの判断差や対応ムラの防止が可能です。さらに、画像や音声データを解析して欠陥や異常を高精度に検出する技術も進化しており、検査や品質チェックの精度向上にもつながっています。

AIは人間が行う品質管理を補完・強化する役割を果たし、企業にとっては信頼性の高い製品やサービスを安定的に提供できる基盤を築く手段になります。

AI導入のデメリット

企業がAI導入を検討する際に認識しておくべき主なデメリットは、以下のとおりです。

  • 情報漏えいのリスクがある
  • データ品質にバラツキがある
  • 導入コストがかかる

デメリットを理解しておくことで、事前に対策を考えながらAIの導入を検討できます。

AIを導入する際には、情報漏えいや機密データの流出といったセキュリティーリスクに十分注意する必要があります。

実際に海外では、従業員が生成AIに社内コードや顧客データを入力した結果、外部に情報が流出し、多額の損害賠償や信用失墜につながった事例も報告されています。日本企業においても同様のリスクは決して例外ではなく、適切な対策が欠かせません。

情報漏えいのリスクを防ぐためには、「AIに入力してはいけない情報」を明確にルール化し、社内全体で共有することが重要です。また、従業員に対して「AIの正しい活用方法」や「セキュリティーの基本知識」を定期的に教育するのも効果的です。

さらに、AIの利用履歴を記録・確認できる仕組みや、アクセス権限を必要最低限に制限する設定を導入することで、安全性を高められます。

AIは強力なツールである一方、運用方法を誤ると企業の信頼を揺るがしかねません。リスクを理解したうえで適切な管理体制を整えることが、安心してAIを導入・活用するための第一歩になります。

AIは大量のデータをもとに学習や判断を行うため、データの品質が成果を大きく左右します。古い情報や欠損データが混ざっていると、AIは誤った出力をしてしまう可能性が高くなります。

たとえば、誤った売上データをもとに需要予測を行えば、在庫過多や欠品といった問題を引き起こし、結果的に経営判断を誤らせかねません。また、顧客対応に活用するチャットボットが誤情報を回答してしまうと、クレームや企業への信頼低下につながる恐れもあります。

以上のリスクを防ぐには、AI導入前に自社データの更新頻度や正確性、形式の統一度を確認し、不備があれば削除・補完・修正といった前処理を徹底することが重要です。さらに、導入後も定期的に品質チェックを行い、入力ルールやフォーマットを標準化することで、AIの精度を長期的に維持・向上させられます。

AIを導入する際には、システムの開発や設定にかかる初期費用だけでなく、運用・保守にともなう維持費や従業員への教育コストなど、継続的な負担が発生します。これらの費用を十分に見積もらずに導入を進めると、予想以上のコストが重なり、最終的には運用を断念せざるを得ないリスクもあります。

導入コストに関するリスクを回避するために、まずは限定的な業務や小規模プロジェクトから導入し、効果を検証しながら段階的に範囲を広げていく方法が有効です。また、日本国内ではIT導入補助金をはじめとする公的支援制度も整備されており、これらを活用することで初期負担を軽減できる可能性があります。

AI導入の具体的な手順

企業がAIを導入するための具体的な手順は、以下のとおりです。

  • 導入目的の明確化と課題設定
  • AIツールの選定と比較
  • 試験運用と効果検証
  • 本格導入と運用開始

導入ステップを理解することで、運用開始までのイメージがしやすくなります。

AIは活用できる領域が幅広いため、導入目的が曖昧なまま進めてしまうと「どのAIを導入すべきか」を正しく判断できず、課題解決につながらないケースがあります。目的が不明確な状態では、導入後に成果が見えにくくなり、計画そのものが停滞してしまうリスクも少なくありません。

こうした失敗を避けるには、まず「問い合わせ対応の一次解決率を85%に引き上げる」など、数値で測定可能な目標を設定することが重要です。数値化されたゴールがあれば、導入効果を客観的に評価でき、改善の方向性も明確になります。

さらに、AI導入は一部の部署だけで進めるのではなく、関係部署が集まり現場の課題や優先度を共有することが欠かせません。社内全体で共通認識を持ち、導入方針を合意形成することで、プロジェクトの実行力が高まり、成果へとつながりやすくなります。

AIツールには、文章を自動で作成する文章生成AI・イラストや写真をつくる画像生成AI・映像や音声を編集・制作する動画生成AIなど、さまざまな種類があります。用途によって求められる機能や精度が異なるため、「どの業務で何を達成したいのか」を明確にして選ぶことが重要です。

ツールを選定する際の主なチェックポイントは、以下のとおりです。

  • 精度・処理速度
  • 使いやすさ
  • 既存システムとの連携性
  • セキュリティー面
  • 費用面
  • 将来的な拡張性

上記を比較検討することで、長期的に効果を発揮できる最適なツールが選べます。

AI導入を成功させるには、本格稼働の前に小規模で試験運用を行い、その効果を検証するプロセスが欠かせません。試験運用では、期間・範囲・予算をあらかじめ限定することで、過剰なリスクや無駄な投資を回避できます。

たとえば、いきなり全社導入すると、以下のような問題が発生する恐れがあります。

  • 想定以上にコストが膨らむ
  • 従業員の負担が増える
  • 誤った出力が原因で業務トラブルが発生する

上記のリスクも、試験運用の段階で事前に洗い出せます。

試験中は「一定の精度を満たしているか」「既存の業務フローに無理なく組み込めるか」など、事前に定めた評価基準に沿って効果を検証することが重要です。結果を踏まえて改善点を明確化し、必要な調整を加えてから本格導入に進めることで、成功率を高められます。

試験運用で効果が確認できたら、いよいよ本格導入の段階へ進みます。このとき重要なのは、単にシステムを導入・設定するだけでなく、社内で効果的に使いこなすための体制を整えることです。

具体的には、従業員向けの研修や操作マニュアルの整備を行い、誰もが迷わずAIを活用できる環境をつくることが欠かせません。また、導入後は利用状況をモニタリングし、現場での課題や改善点を継続的にフィードバックしていく仕組みも必要です。

AIの導入は、ゴールではなくスタートです。運用を重ねながら改善を繰り返すことで、現場での定着が進み、実際の業務成果へとつながります。

AI導入で活用できる補助金

企業がAI導入コストを軽減するために活用できる、4つの補助金制度について紹介します。

  • IT導入補助金
  • ものづくり補助金
  • 中小企業新事業進出促進事業
  • 人材開発支援助成金

自社のプロジェクトに該当する補助金制度があれば、活用を検討ください。

なお、記載している内容は2025年8月15日時点での情報です。制度の詳細は都度変更の可能性があるため、最新情報をご確認ください。

補助金制度名 IT導入補助金
概要 中小企業のITツール導入による業務効率化・DX推進を支援
対象者 中小企業・小規模事業者等
補助額上限 5万円~3,000万円

IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性の向上を図ることを目的とした制度で、条件を満たすAIツールの導入にも活用できる場合があります。たとえば、会計ソフトや販売管理システムなど、既存業務を効率化するためのAIツール導入が主な対象です。

対象となるツールは「IT導入支援事業者」が事前に登録したものに限られるため、導入を検討しているAIツールが対象かどうかは、公式サイトで確認する必要があります。

補助金制度名 ものづくり補助金
概要 中小企業の革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のための設備投資を支援
対象者 中小企業・小規模事業者等
補助額上限 750万円~2,500万円

ものづくり補助金は、中小企業等の革新的な製品・サービス開発や生産プロセスの改善を支援する制度で、要件を満たすAI関連設備への投資にも対応しています。新商品や新サービスの開発、海外への投資や市場開拓などが対象です。

補助対象となるかは個別の事業計画により判断されるため、事前の相談をおすすめします。

補助金制度名 中小企業新事業進出促進事業
概要 新市場・高付加価値事業への進出を支援
対象者 中小企業・小規模事業者等
補助額上限 750万円~9,000万円

中小企業新事業進出補助金は、2025年に新設された制度で、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援します。一般的な普及率・認知度が低い事業や、付加価値が高いと判断された製品などが補助対象です。

AI活用による事業転換や新規事業立ち上げに対応しています。

補助金制度名 人材開発支援助成金
コース 事業展開等リスキリング支援コース
概要 新たな事業展開等に伴い、必要になる知識や技術を習得させるための訓練の助成
対象者 大企業・中小企業・小規模事業者等
補助額上限 【経費助成率】中小企業:75%/大企業:60%
【賃金助成額(1人1時間)】中小企業:960円/大企業:480円

人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」は、企業が新規事業や業態転換に必要なスキルを、従業員に習得させる際に利用できる助成金制度です。

外部研修や専門講座の受講費用、訓練中の賃金の一部が助成されるため、人材育成コストを抑えつつリスキリングを進められます。

AI活用やデジタル分野のスキル習得にも適用でき、AI人材の教育・育成を推進する場面でも有効です。

AI導入を成功させるポイント

AI導入を成功させるポイントは以下のとおりです。

  • 専門人材の確保と育成
  • 段階的な導入アプローチ
  • 社内体制とルールの整備

成功ポイントを理解することで、導入後のさまざまなリスクや失敗の可能性を低減できます。

AI導入を成功させるには、社内に必要な知識やスキルを持つ人材を確保・育成する体制づくりが重要です。

外部から専門人材を採用する方法もありますが、コストや採用競争の面で課題があるため、既存社員の育成による内製化が現実的な手段になります。

たとえば、全社員向けのAIリテラシー研修や、エンジニア向けの機械学習講座などを段階的に整備することで、各部門での活用がスムースに進みます。実務と組み合わせた研修を通じて、現場で即戦力となる人材の育成が効果的です。

AIは一度に大規模展開するよりも、小さな成功を積み重ねるスモールスタートが効果的です。いきなり全社導入に踏み切ると、想定以上のコスト増や、現場が使いこなせず運用が滞るといったリスクが高まります。

まずは期間・範囲・予算を限定した試験運用から着手し、技術面の有効性と業務への適合性を検証します。たとえば「3か月以内に特定業務の一部で導入し、一定の成果が確認できたら他部門へ段階的に展開する」といった流れが有効です。

そして、各フェーズごとにKPIを設定し、進捗を定点観測します。

AIを継続的に活用するためには、技術面だけでなく組織としての体制整備も欠かせません。AI導入を担当する責任者や、データの管理ルールを明確にしないまま進めてしまうと、情報漏えいや業務の混乱につながる可能性があります。

役割ごとの責任範囲を整理したうえで、ガバナンス体制の構築が大切です。また、データの取り扱いについても、アクセス権限や品質基準などのルールを明確にしておくことで、安全かつ効果的な運用が可能になります。

ai導入まとめ

AI導入の導入によって、チャットボットによる顧客の対応時間を短縮や、検品作業における人為的ミスの削減が可能です。

まずは自社の課題を整理し、効果を測定できる範囲から小さく始めることを推奨します。そのうえで、自社に合ったツールや導入方法を選び、段階的に運用体制を整えていくとスムースに進められます。

専門人材の育成や社内ルールの整備も含め、全体を見据えた導入戦略を立てることが、AI導入の成功につながる鍵です。

富士フイルムビジネスイノベーションでは、さまざまな業界のDX推進をサポートしています。AIの導入によって、業務効率化やDXを推進したい方は、ぜひ以下よりご相談ください。