工程管理とは?目的や重要性、管理方法、進捗管理との違いを徹底解説

2023.07.10

工程管理とは?目的や重要性、管理方法、進捗管理との違いを徹底解説

工程管理とは?目的や重要性、管理方法、進捗管理との違いを徹底解説

工程管理は納期をしっかりと守るために重要な役割を持つ業務です。生産管理の一部として機能する工程管理は、品質管理と並んで取引先の信頼に直結する管理といえます。そのため、客先の信頼を低下させないためにも、工程管理は正しい方法で取り組んでいく必要があるでしょう。

そこで当記事では、工程管理を行う目的や重要性と合わせて、方法などについても解説していきます。工程管理にすでに取り組んでいる方でも、再認識の意味を込めてぜひ確認してみてください。

工程管理とは、製品の製造過程における工程全般を管理することです。効率よく管理運営することを目的としており、生産性の向上など現場効率を高めて納期を遵守することに努めます。工程管理の具体的な取り組みとしては、主に以下の3つがあります。

工程管理の基本業務

  • 製造工程の設定
  • 工程計画の立案と調整
  • 工程の進捗管理

基本的には製造工程の立案から、工程が終わるまでの管理が主な業務です。それぞれの業務について以降で解説していきます。

工程の設定

工程の設定とは、「製品の作り方」を決めることを意味しており、作業手順などの工程を最も効率の良い方法で取り組めるように設定します。そのために、まずは「手順・使用機械・作業場所」などの工程を具体的に明確化していくことが大切です。この際、あまり細かく分けていきすぎると工程管理の手間が増えるだけでなく、製造現場の効率も低下する可能性が高まるので注意してください。

工程の設定が完了したら、各工程の着手(スタート)と完了(エンド)を定めて工程ごとに実績を記録していけるようにしましょう。そうすることで各工程の進捗が把握しやすくなり、工程管理の負担が軽減します。

工程計画と負荷調整

工程計画と負荷調整では、各工程の生産計画を立てて、工程ごとの負荷度合いが適切かどうかを調整していきます。これらを行うことで、安定した製造能力を維持することができ、納期を確実に守れるような製造が実現するでしょう。

負荷調整では負荷度合いが大きいものを分散していくことが大切で、負荷が少ない工程への分散をすることで各工程の作業に対する安定化を図ります。分散をするためには負荷の状況を明確化・可視化することが重要になってくるため、各工程の生産能力をしっかりと把握することが重要です。そのためにも、工程管理に携わる方はしっかりと各工程の機械能力や人材の能力を知る努力が必要となってきます。

工程の進捗管理

工程の進捗管理は、「工程の設定」「工程の計画と負荷調整」によって立てた工程計画に基づいて、問題なく作業が進んでいるかを管理する業務です。基本的には、工程の設定で決めた「着手と完了」の実績報告に基づいて滞りなく進んでいるかを把握して管理します。

もし、進捗管理で製造工程が遅れていると発覚した場合は、指定の納期に間に合うかを確認したうえで、最善の修正を行っていくことが大切になってくるでしょう。最善の修正は、人材の補充であったり取引先との納期交渉であったりと様々ですので、取引先との関係性を加味しながら修正していくことが重要です。

製品を製造していく過程で行なう管理業務は色々とあります。そのため、工程管理は他の管理業務と混同されてしまうことも少なくありません。特に工程管理・生産管理・進捗管理は混同されやすいので、以下の内容を参考に違いを確認しておきましょう。

工程管理・生産管理・進捗管理の違い

  • 工程管理
    └製品の製造に関わる工程部分を全て管理する業務。資材の有無や在庫の有無など工程に関わる部分は全て管理します。

     

  • 生産管理
    └生産に関わる業務(資材調達から納品まで)の全てを管理する業務。工程管理は生産管理の一部に含まれており、管理する範囲が生産管理の方が広いです。

     

  • 進捗管理
    └工程が滞りなく進んでいるかを管理する業務。主にスケジュール管理がメインとなっており、工程管理の一部として考えられています。

     

以上のことから、工程管理・生産管理・進捗管理の管理範囲は「生産管理>工程管理>進捗管理」の順番で広いです。この担当範囲の関係性を知っておくことで、各管理担当との区分を明確化できるので、お互いの業務を妨げないきっかけにもなります。

工程管理は製造工程が円滑に進むように管理をするのが業務内容です。基本的には、この業務に取り組んでいくことで以下3つの目的を達成することが求められます。

工程管理の目的

  • 品質管理
  • 生産性の向上
  • 負荷調整

以上の3つが目的となっており、工程管理の業務は3つの目的を達成することを主として管理業務に取り組まなくてはいけません。それぞれの目的が具体的にどういった意味を持ち合わせるのか、以降で解説していきます。

品質管理

品質管理とは、製品の品質を管理することを指します。品質管理では、品質に関わる全ての工程を管理することを意味しており、検査工程だけを把握するだけではないことに注意が必要です。

例えば、業務負担の偏りは作業者の負担が増えて検品ミスのきっかけになりますし、納期設定がタイトな工程管理を組むと、「ミスができない」といったように作業者の焦りを生んでヒューマンミスを発生させるきっかけにもなります。そのため、作業者が安定して作業を行えるように業務負担を適切なものとしたり、作業ミスが発生しないような作業手順を組んだりするのも品質管理の業務となってきます。

他にも、品質を安定させるために画像検知システムの導入を提案するといったことも、品質管理で検討すべき内容と言えます。その時の状況に応じて、品質を安定化させる最善の方法を模索し続けることが品質管理には求められるでしょう。

生産性の向上

工程管理では生産性の向上も目的の一つとなっています。生産性が向上すれば自然と製造にかかる時間が短くなるため、納期を確実に守ることに繋がります。

また、生産効率が上がると作業員が作業に携わる時間を減らすことにも繋がり、ヒューマンミスの発生確率を低下させるとともに、人材にかかるコストの低下も図れます。これにより、企業の利益率向上にも貢献できるため、企業全体に対して良い影響を与えるでしょう。

負荷調整

負荷調整とは、各工程にかかる負担を均していくことを指します。負荷調整を実現するためには、工程に携わる従業員の能力や作業に対する負担を明確にすることが求められ、全体を正確に把握しなくてはいけません。全体を把握することができたら、従業員の能力や作業の負担度合いを踏まえて負荷調整を行いましょう。

工程管理は取引先との納期を守るうえで欠かせない管理業務です。納期に基づいた工程管理を組めば、品質の安定や作業員の負担軽減も見込めるでしょう。つまり、工程管理は納期を守るだけでなく、従業員の負担軽減や品質の安定化など、製造工程全般の運営を健全化するためにも重要な役割を果たします。

また、工程管理の質が向上することで、具体的に以下のような効果も見込めます。

  • コスト削減
  • 顧客満足度の向上
  • 生産工程における業務の標準化
  • 生産効率の向上

工程管理は業務の範囲が広い分、管理の質が向上すればするほど上記のような効果が期待できます。対外的にも対内的にも良い効果を生み出すのが工程管理業務であると言えるでしょう。

工程管理は業務範囲が広いため、管理方法を知ったうえで自社に最適な方法を実施する必要があります。自社に合わない管理方法を選択してしまうと、逆に効率が落ちてしまうことも考えられるので、自社の状況を踏まえて選ぶようにしましょう。

工程管理の方法

  • 紙で管理する
  • Excelで管理する
  • システムで管理する

仮にシステムを導入したとしても、自社で扱える人材がいなければ逆に効率を落とす可能性もあります。便利だからといってExcelやシステムを導入するのではなく、それぞれの特徴を把握したうえで自社が最も効率よく行なえる方法を導入しましょう。

紙で管理する

紙で管理する方法はアナログな手段ではありますが、紙(もしくはホワイトボード)とペンさえあれば行えます。修正等も簡単にできるため、手軽さだけで言えば3つの方法の中で一番と言えるでしょう。また、システム導入と比べるとコスト的にもかなり抑えられますし、PCの使い方などを管理担当者に教育する必要もありません。

しかし、工程管理の状況を全体に共有するのが難しい点が課題となりやすく、社外にいる担当者とのコミュニケーションが必要となってきてしまうでしょう。そのため、口頭で管理状況を把握しあったり、管理担当者が少数であったりする場合のみ最適な方法であると言えます。

Excelで管理する

Excelの管理方法は、主にスプレッドシートを活用して管理するケースがほとんどです。紙での管理と違って、ファイルの共有さえしてしまえば、パソコンを利用する担当者全員に対して迅速に共有できます。また、関数などをうまく活用すれば一部を自動化することもできるため、管理業務の効率化にも繋がるでしょう。

ただ、1つのファイルを複数人で共有するため、担当者以外が誤って編集してしまわないように権限の設定が必要となる点には注意が必要です。さらに、共有しているファイルは外部に流出する可能性もゼロではないため、情報の重要度合いによってはセキュリティ面の対策も求められます。

システムで管理する

システムでの管理は、工程管理システムを導入することで実現する方法です。工程管理システムの場合、工程管理だけでなく他の部門の管理も同時に連携することができたりもするため、製造に関わる部門全体の管理効率が向上します。利用方法を覚えるのに時間がかかってしまう、人材教育に時間がかかってしまう、といった課題点はありますが、使いこなせれば管理効率の向上だけでなく取引先からの信頼向上にも繋がるでしょう。

ただ、コスト面では大幅な初期投資が必要となるため、資金繰りに余裕がない場合はあまりおすすめできない方法と言えます。そのため、管理業務が多くて設備投資ができるくらいの資金的な余裕がある企業に最適な方法です。

工程管理は、製品の製造過程における工程全般を管理する業務です。工程管理の基本業務には、「工程の設定・工程計画と負荷調整・工程の進捗管理」があり、これらに取り組むことで効率よく管理運営を進められます。

また、工程管理は納期を守ることだけが目的ではなく、品質管理や生産性の向上、負荷調整などを目的に取り組まれます。これら3つの目的達成を目指して取り組めば、取引先の満足度向上にも繋がるでしょう。

工程管理の方法には「紙・Excel・システム」の3種類があります。自社の環境などに合わせて最適な方法を選択するようにしましょう。適さない方法を選んでしまうと管理効率が低下することも考えられるので注意してください。