富士フイルムは、よりよい医療の実現に向けた診断支援や診療業務の効率化など、AI技術を活用し医療現場を支援するソリューションの開発を行っています。医療AI領域を担当する山本に、自身のアスピレーション(志/こうしたい、こうなりたいという思い)と業務内容を語ってもらいました。
- 医療ITシステムの商品企画。
- 人種・性別・年齢関係なく、人々の幸せの基盤である医療を支えたい。
私は医療ITシステムの商品企画を担当しており、営業部門や、共同研究先の医療従事者の方々、AI開発を担う研究部門などと連携しながら、世の中にとってよりよい医療ITシステムを生み出していくプロジェクトを推進しています。
入社した時は、ちょうど富士フイルムが医療ビッグデータを用いたAI研究を本格化させるタイミングで、私の業務はすべてに前例がなく手探りの状態でした。大学では英米学を専攻していたので、医療もAIもビジネスもまったく未知の分野です。当時は「私にどんな貢献ができるんだろう」と考える日々でしたが、上司の存在が大きな助けになりました。「初めての取り組みばかりで大変だけど、今自分たちががんばって道をつくれば、いつかきっと新しい人がこの道を歩いてきてくれる」。その言葉が今も心に残っています。
私は「こうあるべき」にとらわれず、挑戦することが好きな性格です。小学生のころは、兄に憧れ少年野球チームに入りました。唯一の女子でしたが、4年間卒業までやり遂げました。
高校時代にはアメリカに行ってみたいと決意するや、夏休みにアルバイトでお金を貯めて、2週間の海外体験を満喫したこともありました。社会人になってからも「好きなことには、とことんまっすぐ!」という気持ちで、一歩一歩進んできたように思います。
就活中から一貫して「医療分野の仕事をしたい」というのが希望でした。その背景には私にとって、忘れがたい2つの出来事があります。
大学時代、母にごく初期の乳がんが見つかったんです。平穏だった日常が一変して不安に包まれたことを鮮明に覚えています。実家は地方だったので、「もし都会に住んでいたら、医療機関や治療法にもっと選択肢があって、もっと手厚い医療が受けられるのではないか」と、もどかしく思ったりもしました。幸い、母は順調に回復しましたが、その経験から、健康の尊さを強く意識するようになりました。
同じく大学のころ、1年間休学して、アメリカに留学をした経験も進路選びに大きく影響しています。アメリカの医療制度は日本とは違い、国民皆保険ではありません。加入している保険の種類によって受けられる治療の幅が大きく異なったり、罹患に伴う高額な治療費のために経済的に困窮したりすることが珍しくなく、まさに「病気をきっかけに生活が一変していく人たち」を、アメリカでも目の当たりにしました。
どこに住んでいても、どのような環境にあっても、人間にとって一番の財産は健康です。優れた医療が世界に等しく行き渡ることの大切さを実感し、「人種・性別・年齢関係なく、人々の幸せの基盤である医療を支えたい」というアスピレーション(志)が自分の中で生まれました。
私が商品企画として携わっているAI技術を活用した医療ITシステムは、医療の質や安全の向上に加え、医療従事者の負担軽減を目指しています。高齢化社会や労働人口の不足といった社会課題は、医療業界においても大きな影響を及ぼしており、日本の医療を取り巻く環境は深刻で、特に医療従事者の業務負荷軽減は重要な課題です。
医療従事者の方々が少しでも長く患者さんの目を見て、笑顔で会話ができるようになる─。人間にしかできない、あたたかいコミュニケーションをより多く実現するために、AIによるサポートが一つの解決策になると考えています。
私が所属するチームで取り組んだ「外来患者向け転倒リスク予測技術」について、開発段階で技術発表のニュースリリースを出したとき、家族がとても喜んでくれたんです。それはとてもうれしい経験でした。
転倒事故は、国内の医療現場において高い頻度で発生しています。転倒は骨折や頭部外傷などの大けがにつながり、患者の生命予後(生きられる期間)やQOL(生活の質)に対して深刻な影響を及ぼす可能性があります。そのため、多くの医療機関では入院患者さんを対象として、転倒防止策を講じています。一方、外来患者さんは、入院患者さんに比べて患者数が多く、また医療機関における限られた滞在時間では患者の状態を把握することが困難であるため、十分に対応することが難しい状況にあります。そういった課題を解決するために、AI技術を用いて外来患者さんの転倒リスクを予測し、個々にあったサポートにつなげるという取り組みなのですが、医療従事者である姉は「こういうシステムがある病院でぜひ働いてみたい」、通院をしている母は「年を重ねてくると転倒は本当に大きな問題だから、こういうサポートはありがたい」と言っていて、この言葉に本当に励まされました。
私たちが企画開発した技術が誰かに届き、その人を笑顔にできたら、私はもっと笑顔になれるはず。アスピレーション(志)の実現を通じて、患者さんやその家族に、医療従事者に、そして社会全体に笑顔を増やしていく。それが私の仕事のモチベーションです。
医療AIというと、手術や大きな病気の診療に使われるものだと思われがちですが、転倒防止のように生活の質に深く関わることへの対応にも可能性を広げています。外来に診察に来てケガなく帰れるというのは、一見当たり前のことです。その「当たり前」を、患者さんが気づかないほど自然に実現できたらと思っています。
将来の目標は、海外にもっと私たちの医療AI・ITシステムを届けることです。大学時代の留学体験も生かせるような、英語を使う仕事はかねてからの希望でしたし、日本と海外の架け橋になれるような役割を担ってみたいです。現地で協力先を探しながら、ゼロから仕組みをつくっていく業務にもチャレンジしたいですね!

休日の過ごしかた/趣味
趣味は海外旅行。休暇が近づくと「どの国に行こう」とわくわくしてきます。観光も好きですが、そこに住む人々の生活を感じることが好きですね。
一緒に働いている人たちはジム好きが多く、感化されてジム通いをスタート。体をたくさん動かすと、頭がスッキリしてよく眠れます。"心と体はつながっているんだな"と実感中。
インテリアも趣味の1つ。北欧の素朴でかわいいスタイルに憧れて、少しずつコレクションを増やしています。