富士フイルムは創業以来、すべての事業活動が自然環境から恩恵を受け、また自然環境に影響を与えていることを認識し、環境や生物多様性の保全を重視しています。事業活動を通じサステナブル社会の実現に貢献していく上で、ネイチャーポジティブ(自然生態系の損失を食い止め、回復させること)を重要な社会課題の一つとしてとらえており、この考えの根拠となる方針を制定し、それに基づきさまざまな活動を推進しています。
当社は国際目標 30by30(2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する)に貢献するため、環境省「30by30アライアンス」に賛同し、自然共生サイトへの登録を進めるなど各事業拠点での生物多様性保全の取り組みを進めています。
2025年12月時点で、2サイトが環境省より自然共生サイトとして認定されています。
(神奈川県 南足柄市)
神奈川県南足柄市の当社神奈川事業所足柄サイトの近隣にある当社社有林を中心とする森林で、複数の湧水が存在し、豊かな水資源に支えられ多様な生物種が存在しています。
当社は1934年の創業時から、これらの湧水を写真フィルムやディスプレイ材料などの製造に使用してきました。地域のステークホルダーとともに森林や湧水の保全活動を継続し、また自然環境に大きな負荷をかけない操業を継続したことにより、現在は樹木が大きく育ち、それを住処にするフクロウなどの肉食性動物を頂点とする生態系ピラミッドが構成されています。

森林の中の湧水
また、第二水源地「清左衛門地獄池」は箱根「箱根ジオパーク」の「ジオサイト」に位置付けられ、その湧水は「平成の名水百選」に選定されています。地域のために水を探し求めた清左衛門の伝承が伝わり、中の島の「狩野厳島神社」や池の畔の「弁財寺」とともに地域住民により大切にされてきた場所です。当社は地域住民を筆頭とするステークホルダーの方々とともに周辺環境の保全活動を行い、夏祭りなどの自然の中で催される伝統行事にも協賛してきました。
上述の生態系を維持する保全活動を継続しながら、地域の伝統行事を通じた文化的サービスへの協賛も行っていきます。

第二水源池「清左衛門地獄池」
「湧水の森林(もり)」は、二次林や植林で構成される森林の中に複数の湧水が存在し、豊かな水資源に支えられ多様な生物種が存在しています。
湧水池の水辺、林床や樹木までさまざまな場所において里地里山に生息する動植物が生息し、樹洞を巣とするフクロウなどの肉食性動物を頂点とする生態系ピラミッドが構成されています。

シラカシ、ケヤキなどの大径木

エビネ

キセキレイ

スナヤツメ

アズマヒキガエル

ゲンジボタル

タマムシ

サガミラン

タンスイベニマダラ
(静岡県富士宮市)
当社富士宮事業場内では、富士山を源とする清涼な湧水が複数か所から湧き出ており、準用河川 清水川に合流しています。清涼な湧水のみに生息するカワヂシャやバイカモなどの水草を育み、カジカ、カワヨシノボリ等の魚類、カモ類、サギ類等の鳥類からなる河川を中心とした豊かな生態系が形成されています。また、緑地の一部は常緑広葉樹のスダジイやアラカシなど自然林に近い景観を示しており、林床には希少なキンランやエビネ等の植物が確認されています。

湧水が合流する清水川
当社は2006年に清水川に沿って遊歩道を整備し、2016年に「癒しの小径」と命名しました。
当社の従業員は、これらの自然を楽しみレクリエーションに活用すると同時に、有志による清掃活動や希少な植物を保全するための外来植物の駆除による保全を行っています。
「癒しの小径(こみち)」では、これ等の保全活動を継続するとともに、工場見学者などに地域の自然の大切さを経験していただく機会の提供も行っていきます。

従業員有志による清掃活動
- * 「癒しの小径(こみち)」は、清涼な湧水が合流し豊かな水を湛える清水川を中心とした生態系の中にある。水中や川沿いの樹林の林床にさまざまな生物種が生息しており、それを捕食しに近隣から飛来するサギなどの肉食性動物が生態系ピラミッドの頂点に立っています。

ミクリ

タシロラン

カジカ

ニホンヤモリ

バイカモ

ヒメアナンデールヨコエビ

カワヨシノボリ

スジダイ、アラカシなど常緑広葉樹林

コサギ
1社が内閣官房水循環政策本部より「水循環ACTIVE企業」に認証されています。
(富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング第8製造本部/熊本)
ディスプレイ材料や半導体材料の製造を行う、富士フイルムマテリアルマニュファクチャリング第8製造本部(熊本)の所在地である熊本県菊陽町を含む熊本地域(熊本市とその周辺市町村)と呼ばれる地域には豊富な水資源があり、本地域では生活用水のほとんどを地下水で賄っています。豊かな地下水が保持できた理由のひとつが、阿蘇山麓から菊陽町に広がる白川中流域の水田であり、この水田に大量の水が浸透し、地下水に供給されています。昨今、シリコンアイランドと言われる九州に半導体関連企業の進出が加速し、地下水採取量の増加が見込まれることから、熊本県においても生活や産業を支える地下水保全の重要性がますます高まっています。
同事業場ではこの地下水を守る活動として地下水かん養林の植林・整備や、かん養田の保全の活動を進めており、従業員やその家族が植林活動や田植え、稲刈りに参加しています。
また同事業場では、生産工程での雨水の再利用などにも取り組んでいます。具体的には、光学フィルムの製造において冷却水、蒸気製造、工程洗浄用などに使用する水(地下水)の内、使用量が特に多い冷却水には、滅菌ろ過した雨水を活用し、地下水の採取量の削減を図っています。また、使用した地下水や雨水の再利用にも力を入れており、再利用率は6割近くに達しています(2023年度実績)。
継続して実施している地下水かん養の活動などが評価され、富士フイルムマテリアルマニュファクチャリングは2024年に内閣官房水循環政策本部事務局が創設した「水循環企業登録・認証制度」*1において、水循環に関する取り組みを積極的に実施している「水循環ACTIVE企業」に認証されました。
今後も限りある水資源を保全し、豊かな自然環境の維持に貢献していきます。

地下水かん養田での田植えの活動

事業場内の雨水の再利用のための設備
- *1 内閣官房リリース「99社を「水循環企業」に登録・認証しました!」



















