日本

導入事例

がん研究会有明病院/江東区保健所(東京都江東区)

対策型内視鏡検診を支える東京都23区初のクラウド導入

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2019年7月、東京都23区でクラウドサービス「ASSISTA Medical checkup-ES」の運用を開始した東京都江東区。読影の効率化と個人情報保護を両立するシステムを活用し、胃がん死亡率の減少に向けて着実に歩みを進めている。

  • * 本記事は取材日時点の情報であり、記事の内容や、施設名、所属、役職などは最新の情報とは異なる場合があります。

公益財団法人 がん研究会有明病院
上部消化管内科 副部長
平澤 俊明 先生

胃内視鏡検診の有用性は。

平澤先生 日本では、胃癌の対策型検診は長い間、胃X線検診が行われていましたが、2015年に国立がん研究センターによるガイドライン(有効性評価に基づくがん検診ガイドライン)で対策型検診に胃内視鏡検診が推奨されました。胃内視鏡検診による胃癌死亡率減少効果のエビデンスが複数教示されたためです。死亡率減少効果以外にも、内視鏡治療で切除できる状態で見つかる胃癌の割合が胃X線検診よりも高いことは、術後のQOLを考えるうえで大きな利点です。このようなメリットは医療者側のみならず、受診者にも広く知られており、今後は一層、内視鏡検診が高まると考えています。

対策型胃内視鏡検診におけるダブルチェック体制の意義は。

平澤先生 一次読影の見落としを防ぐだけでなく、一次読影医が胃内をくまなく検診しているか、胃内をしっかり洗浄しているかなど”内視鏡の質”をチェックできる意義は大きいです。また、開業医の先生は他の先生の内視鏡画像を目にする機会がどうしても少なくなります。二次読影医として多くの読影作業に携わり結果を共有することは、地域全体の検診技術の底上げ・均てん化につながると考えています。

「ASSISTA Medical checkup-ES」を導入システムとして推薦した理由は。

平澤先生 内視鏡運営委員会で導入する画像データ共有システムについて協議した際、内視鏡画像データの物理的なやり取りは運搬事故のリスクがあり、医師会内でのデータ入力に時間がかかることから、パソコンで読影データを登録できるクラウドシステムが望ましいという総意になりました。富士フイルムの「ASSISTA Medical checkup-ES」は、東京都八王子市、京都府京都市、香川県三豊市・観音寺市など複数地域で運用実績があったことから信頼できると感じました。また、内視鏡検診領域のスペシャリストであり、三豊市の内視鏡検診で「ASSISTA Medical checkup-ES」を導入している今川内科医院の今川敦院長からも、使いやすく、システム改善の要望に対するレスポンスも迅速で、導入当初よりもシステムの機能性は格段に向上しているとのお墨付きをいただいたことも心強かったです。さらに、今川先生には直接江東区にお越しいただき、医師会で講演を行ってもらったことにより、「ASSISTA Medical checkup-ES」への理解が深まりました。

江東区(行政)に「ASSISTA Medical checkup-ES」を推薦する際に留意したことは。

平澤先生 対策型胃がん検診の目的である胃がん死亡率減少に対し、限られた検診施設で効率的な読影をサポートするクラウドシステムの有用性を説明しました。また、江東区が重視する情報保護についても、医療情報安全管理関連ガイドラインに準拠した高セキュリティ下で読影データを保管することから、機能面とセキュリティ面を兼ね備えたクラウドシステムとして自信をもって推薦しました。「ASSISTA Medical checkup-ES」は先鋭システムゆえに前例が限られているなか、江東区(行政)には医師会の総意に賛同してもらい大変感謝しています。23区初の導入事例として、他区にも対策型胃がん検診をサポートするために有効なシステムとして広まれば何よりです。

「ASSISTA Medical checkup-ES」に今後期待していることは。

平澤先生 統一された検診フォーマットに記入し、クラウド上に読影データを登録するというシンプルな作業フローが、読影の効率化につながると信じています。また、過去の読影データの蓄積についても、個人情報保護に課題がありますが、プロセス指数などの検診データの効率的な作成や過去の内視鏡画像の比較などにおいて必要であると考えています。この点に関しては、江東区(行政)や富士フイルムと実現の可能性を探っていきたいです。将来的には、一次読影にAI技術を導入することも考えられます。富士フイルムではAI技術「REiLI(レイリ)」の研究が進んでおり、「ASSISTA Medical checkup-ES」と連動して胃がんの早期発見、診断スピードの向上を支援してくれることも期待しています。

江東区保健所 健康推進課 健康づくり係 主任
江口 友昭 氏

対策型胃内視鏡検診の実施経緯は。

江口氏 2016年2月に厚生労働省の「がん予防重点教育及びがん検診実施のための指針」が改正され、対策型胃がん検診として胃内視鏡検診が推奨されました。胃がんの早期発見・治療を目指す当区においても、厳しい基準を設けた二次読影を導入する必要性を感じ、同年に「胃内視鏡検診実施検討会」を設立。医師会や医療機関とともに、当区独自の胃内視鏡検診マニュアルと検診体制の構築に取り組み始めました。

対策型胃内視鏡検診に向けた準備プロセスは。

江口氏 まず、当区の人口と受診率をもとに想定受診者数を算出した結果、区内医療機関による実施可能数を上回る見込みとなり、効率的に読影を行うシステムの構築が必要だとわかりました。加えて、区民の個人情報である検診データを取り扱う以上、情報漏洩を防ぐセキュリティの確保は必須です。そのため、胃内視鏡検診実施検討会では、「効率性」と「セキュリティ」を両立するシステムの選定が課題となりました。

江東区としては、解決策の提案について読影作業を担う医師会に一任。その結果、提案を受けたのが富士フイルムの「ASSISTA Medical checkup-ES」でした。読影効率化とセキュリティ確保が期待でき、医師会の総意として強く推薦されたことから、胃内視鏡検診実施検討会で導入に向けた検討を開始しました。特にセキュリティ面においては、当区のシステム担当部署や個人情報保護担当部署、有識者に助言いただきながら、独自のセキュリティポリシー案を策定。十分なセキュリティ対策を施した上で、個人情報保護審議会に諮問し承認いただきました。

「ASSISTA Medical checkup-ES」を導入した決め手は。

江口氏 全国各地の自治体で運用実績があり、信頼して任せられると感じたからです。クラウドを使用した対策型胃内視鏡検診システムの導入は当区が23区では最初であり、地域特性が近い運用事例を参考にできない不安がありました。そこで、18年に「ASSISTA Medical checkup-ES」を先行して導入した東京都八王子市の担当者様に相談したところ、同ソフトは医師会のニーズに合わせて運用を構築していくタイプだとご紹介いただきました。当区の課題であるセキュリティ面を重視した読影体制の構築を独自に進められる可能性は大きな魅力でした。

システムを導入するうえで、医師会・医療施設との調整で注力したことは。

江口氏 自治体はセキュリティ面、医師会・医療施設は読影の効率化など、それぞれが重視する点は異なります。そこで胃内視鏡検診実施検討会を毎月開催し、計20回にわたり意見をすり合わせました。対策型胃内視鏡検診を通じて地域医療に貢献するという目標は同じであり、自治体・医師会・医療機関が一体となり、あるべき方向性を見出すことが重要だと思います。

「ASSISTA Medical checkup-ES」に今後期待することは。

江口氏 当区の胃内視鏡検診は安全管理体制、二次読影体制などに厳しい基準を設けて実施することから、安全面を最優先に担保するシステムであり続けてほしいです。初年度は、CD-Rなどによる搬送運用も併用しますが、課題を精査した上で、より運用しやすい検診実施体制の構築を模索していきます。富士フイルムには日頃の施設への支援だけでなく、効率的な読影会の実施までサポートしていただければと思います。

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