日本

内視鏡医の声

除菌後・未感染胃がんに対するLCI診断

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

順天堂大学医学部 消化器内科学講座 教授 永原 章仁先生

世界に先駆けて胃底腺型胃がんを提唱するなど、 先進的な研究・診療を数多く実施している順天堂大学医学部消化器内科学講座。

教授の永原章仁先生にLCIの臨床的有用性や 除菌後・未感染胃がんの特徴などについてお話をうかがった。

当科は消化管、肝臓、胆膵、肝がんというグループに分かれているものの、臨床ではグループ横断的に診療を行っており、若手医局員はすべての領域について深く学び、多臓器にわたる疾患でも迅速に対応しています。そして、多忙ではありますが、日々研究・臨床に全力を注ぎ、学会発表、論文執筆なども精力的に行う、活気に満ちた診療科だと感じています。

①当院が最初に提唱し、世界でも中心となって研究を進めている胃底腺型胃がんの研究・解析、②富士フイルムの拡大内視鏡を用いた胃がんの血流に関する研究、③胃拡大内視鏡におけるAIを活用したリアルタイム内視鏡診断支援システムの開発のほか、胃食道逆流症や食道運動障害に対する24時間多チャンネルインピーダンスpHモニタリング検査や、潰瘍性大腸炎に対する糞便移植なども行っています。

上部スクリーニング検査における画像強調の使用方法は。

食道はBLI*1で観察し、食道胃接合部はBLI、白色光、LCI*2と切り替えて観察します。その後はLCIで胃から十二指腸、再び胃から食道を観察して終了します。食道においては、BLIで観察するとスコープがコンタクトした箇所がブラウニッシュのように見えるため、行きにBLIを使用しています。

  • *1 BLI(Blue LASER Imaging):狭帯域光観察機能
  • *2 LCI(Linked Color Imaging):特殊光色彩強調機能

LCI画像の特徴は。

LCIは、白色光の色味を変えずに赤味、青味、黄味などの色味の違いを強調し、決して別の色になるわけではありません。すなわち、我々がこれまでに培ってきた白色光の内視鏡観察の考え方をそのまま用いることができるのです。
ただ、LCIを観察に用いるには多少の目の慣れが必要ですので、慣れるまでは白色光とLCIを交互にモード変更して、ターゲット領域の白色光での色味とLCIでの色味の違いを確認していくと良いでしょう。LCIでの観察に慣れると、白色光の内視鏡画像が、あたかもオレンジ色に着色された白黒画像のように見え、従来の内視鏡所見は色味の差がわずかであることが分かります。

LCIの活用が期待される内視鏡診断の使用場面は。

内視鏡専門医が検査を行えば、白色光でもLCIでも早期胃がんの診断は可能です。しかし、LCIを用いると色味が強調され、病変がパッと視界に入ってくるので拾い上げが容易になります。
近年、内視鏡検診が積極的に導入され、検査件数も増加の一途をたどっています。中でも健康診断においては経鼻内視鏡を導入する施設が増加している一方で、短時間で、高い精度で、多くの受検者の内視鏡検査行うことが求められています。LCIは経鼻内視鏡でも経口内視鏡と見え方に変わりがないので、経鼻内視鏡でのLCIは健康診断における胃がんの拾い上げに最も適していると思います。

ピロリ菌感染の有無、胃炎所見を見極める上でのLCIの有用性は。

LCIによって京都分類の胃炎診断での視認性の向上を検証したところ、LCIは色味の差を強調することから、点状発赤、斑状発赤、びまん性発赤、地図上発赤、稜線状発赤、腸上皮化生、いずれも白色光と比較してLCIでは視認性の向上が明らかでした。

H.pylori 除菌2年後の症例で斑状発赤が前庭部に見られており、LCIで強調されている。

除菌後は炎症がなくなるのでがんの凹凸が目立たなくなる

除菌後胃がんで注意すべき点は。

2013年にピロリ感染胃炎に保険適用が拡大され、除菌治療が普及する一方で、「除菌すれば胃がんにはならない」と思っている患者さんが相当数いらっしゃいます。しかし、除菌することで発がんリスクは半減しますがゼロにはならないこと、除菌後10年以上経っても胃がんは発生することから、除菌後は生涯胃がん検診を続けることが肝要です。
診断においては、除菌治療を行うと胃の炎症がなくなって粘液がクリアになり、胃がんが見やすくなるので、除菌前に見逃されたがんが見つかる可能性があります。また、除菌前に萎縮や炎症が強かった症例は、除菌後も胃がんのリスクが高いので、注意深く観察する必要があります。

除菌後胃がんの特徴は。

除菌後は炎症がなくなるので凹凸が目立たなくなり、加えてがんの辺縁が不明瞭になることから、診断困難例が約1割に見られます。また、除菌後に多く見られる斑状発赤と除菌後胃がんを内視鏡所見のみで鑑別するのは困難です。
他方で、LCIを用いることで、腸上皮化生に囲まれた胃がんは周囲の紫色と対比して明瞭なオレンジ色に見えるとの報告があり、LCIによる新たな胃がん診断の可能性が示されています。

胃癌・胃腺腫 白色光とLCI画像

0-Ⅱc、tub1、H.pylori 除菌後。LCIで色調変化が強鯛されている。

未感染胃がんの特徴は。

未感染胃がんは、胃底腺型胃がん、分化型がん、未分化型がんなどが見られ、胃底腺型胃がんは、発赤または白色調の隆起・陥凹として見られます。また、未分化型がんは腺境界領域、すなわち胃角近傍の退色胃粘膜として見られます。LCIを用いると、これらの色調の変化が強調されるので、拾い上げ診断に有用だと考えられます。
除菌治療の普及が進む中で、今後は除菌後胃がんと同様に未感染胃がんの比率も増えていくと考えられます。特に未分化型がんのように色味の違いでしか判断できないがんは、胃透視検査では発見が困難なため、内視鏡検査でしっかりと診断していく必要があると考えています。

0-Ⅱa、胃底腺型胃癌、H.pylori 未感染。背景粘膜に萎縮は認めず、腫瘍部に樹枝状の拡張血管を認める。LCIでは拡張血管と正常粘膜の色鯛変化が強調されている。

今後、内視鏡診断でのLCI に期待することは。

LCIでの色味の差は色相差ではグラフ化できていますが、なぜその色が構成されているかは分かっていません。今後、その点が解明されれば、より精度の高い拾い上げ診断が可能になるのではないかと期待しています。