このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
院長 千葉 恭一 先生
岩手県内では数少ない訪問診療専門クリニックとして地域医療を支えるとともに、医療・介護を通じた地域づくりにも注力しているホームケアクリニックえんの千葉恭一先生。
携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair」とワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」の活用方法や有用性についてお話をうかがった。
携帯型X線撮影装置「CALNEO Xair」
ワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」
ホームケアクリニックえんの概要は。
当院は、常勤医2名、非常勤医2名を含むスタッフ数15名、診療エリアは半径16km程度、今年で開業9年目を迎えた訪問診療専門クリニックです。私自身は医師1年目から在宅医療に携わっており、一時は大病院にも勤務していましたが、日々の診療の中で「もっと患者さんやご家族のそばにいたい」という想いを強くして、本格的に在宅医療の道に進むことを決め、現在に至ります。
診療の中で大切にしていることは。
さまざまな病気や障害を抱えながら生活している患者さんやご家族の全体を診ていく上では、診療を提供するだけでなく、地域を変えていかなければいけないと考えています。そこで、開院と同時に声をかけていただいた北上医師会の理事として在宅医療を推進するとともに、立ち上げに協力した北上市在宅医療介護連携支援センターの支援や、勉強会・講習会・多職種交流会の開催などの地域活動にも力を入れています。
CALNEO Xairを導入した経緯は。
携帯型のX線装置は、前職の在宅クリニック時代から使用していましたが、装置の重さや組み立ての大変さに苦労していました。そうした中、日本在宅医学会でCALNEO Xairの展示を見て、装置の軽さやコンパクトさ、カセッテDRシステムを用いることで、撮影した画像をその場で確認できる点に魅力を感じて導入を決めました。
CALNEO Xairの使用シーンは。
主に、誤嚥性肺炎や骨折、腸閉塞を疑う症例などで使用しています。その場で画像が確認でき、患者さんやご家族にも見せられるので説得力がありますし、骨折を疑うケースでは病院に連れて行くべきか否かの判断がしやすくなったと感じています。
画質に対する評価は。
CALNEO Xairで撮影し、カセッテDRシステムを用いることで撮影したその場で自分の見たいように画質調整ができるので、特に微細な骨折を撮影できているかを確認する場合などで非常に使いやすいと思っています。
CALNEO Xairに対する患者さんの反応は。
X線撮影というと“病院で行うもの”というイメージが根強くありますので、ご自宅でX線撮影ができ、その場で画像が確認できることに驚かれる方が多いですね。
iViz airを導入した経緯は。
従来から使用していたポータブルエコーにケーブル接合部の不具合が発生したため、医療機器商社に数種類のポータブルエコーのデモをお願いし、iViz air コンベックスの軽量・コンパクトさやワイヤレスであることに魅力を感じて導入しました。そして、日々の診療でiViz airの画質や使い勝手の良さを実感したため、常勤医が1名増えるタイミングで2台目を購入しました。
iViz airの使用シーンは。
主に、お腹が痛いと言われる方やお腹が張っている方に使用し、腹水穿刺でも使用しています。また、膀胱尿量自動計測機能は、特に認知症で症状がうまく伝えられない方の残尿確認に有用で、数値が表示されるため、正確な診療につながるだけでなく、患者さんやご家族に分かりやすく説明できると感じています。
ワイヤレスの使用感は。
患者さんのご自宅やベッドサイドの状況は、実にさまざまです。エコーにケーブルがあると、ベッドサイドのものに絡んでしまうこともありますし、モニター部分を置く場所に苦労することもあるため、ワイヤレスエコーは在宅医療において非常に有用だと感じています。また、患者さんやご家族に画面を見せながらスキャンしやすいところも良いと思います。
どのような症例があったか。
直腸がんの骨盤内再発で自宅療養していた患者さんについて、看護師から「お腹が大きく膨れている」と連絡があり、訪問した事例です。認知症もある方だったため問診が思うようにできず、身体所見でも腸閉塞なのか、腹水なのか、それ以外なのかが判断できませんでした。
その中で、がん性腹膜炎がある方なので腹水を確認しようとエコーを当てると、腹水はなかったのですが、尿が出ているにもかかわらず尿閉になっていることが分かりました。そこで、尿道カテーテルを入れて尿閉を解除し、浣腸を行ったところ、その後数日程度で腸閉塞も解除されました。この患者さんには転移による膀胱直腸障害もあったのだと思いますが、おそらくエコーを当てていなければ尿閉だと分からなかったと思います。
CALNEO XairとiViz airの使い分けは。
例えば、腸閉塞であれば、X線で見やすいものとエコーで見やすいものがあるなど、症例によって適した検査が異なりますので、症状を見極めながら使い分けています。
その中で、在宅でX線検査を行う場合は臥位での撮影になり、腸閉塞に典型的なニボーが確認できないため、そこをエコーで補うと診断の確実性がさらに高まると思います。
在宅医療領域における画像診断の重要性は。
在宅医療においても適切にX線撮影装置やエコーを活用していくことで、より質の高い医療が提供できるのはもちろん、患者さんやご家族の納得感や
満足度にもつながると思います。また、当院のある北上市は降雪が多く、携帯電話が使えないほど山深い場所もあります。こうした地域では、通院するのも一大事ですし、救急隊が患者さんを搬送するのも大変ですので、我々が医療機器を持って患者さんのご自宅を回り、できる限り在宅で診療していくことが重要だと考えています。