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従来から排便ケアに課題を抱えていた5つの医療施設において、ワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」のデモ機を活用した排泄エコーの実践・浸透プロジェクトを行いました。約6ヵ月間にわたる同プロジェクトにご参加いただいた5施設の皆様に、エコー研修から各施設での取り組みの中で感じた課題や手応え、今後の展望などについてうかがいました。

青梅慶友病院
桑田 美代子 看護部長

有馬温泉病院
西山 みどり 看護部長

近森病院
岡本 充子 統括看護部長

筑波メディカルセンター病院
田中 久美 看護部門長

順天堂東京江東高齢者医療センター
佐藤 典子 看護部長
有馬温泉病院 西山氏 当院は304床(回復期リハビリテーション病棟35床、障害者施設等一般病棟52床、医療療養病棟217床)、患者さんの平均年齢現在82.85歳の療養型病院で、2024年は年間132名の方の看取りをさせていただきました。
エコーの実践・浸透に向けた取り組みでは、まず私を含めた4名の看護師が2025年4月に次世代看護教育研究所の研修を受講し、5月にその看護師が中心となって当院における排便ケアの課題とエコーの活用方法を検討しました。そして、6月から43床の医療療養型病棟に入院中の高齢者で眠前に刺激性下剤を与薬予定の方々にエコーを当てることとし、その際、研修済みの看護師とともに病棟看護師にもエコーに触ってもらえるよう働きかけを行いました。その後、他病棟にもエコーの活用方法や成果を共有したところ、中心静脈栄養法だけの高齢者の方や向精神薬を多く服用されている方の排便ケアに関して依頼がありました。9月に入ってから排便ケアのフローの見直し等を行い、11月頃から経営層に不必要な刺激性下剤の減少効果やエコーを必要とする看護師の声等を伝えて、iViz airの購入に至りました。
排便ケアにおける従来の課題として、刺激性下剤が必要なのかという判断に自信が持てない、中心静脈栄養法の高齢者に対して何日まで排便を待っていいのか迷う、向精神薬を長期的に服用されている高齢者に毎日の排便を期待する、急性期病院からの入院時の情報だけでは不安が残る(嵌入便の事例)などがありましたが、エコーによって便を可視化することで看護師のアセスメント能力が向上し、課題の解決につながったと感じています。実際に、刺激性下剤については、与薬前にエコーを行うことで388人中132人の方の与薬をやめることができ、浣腸についても事前にエコーを行うことで66人中37人の方の浣腸を不要と判断できました。
一方で、取り組みで感じた障壁として、エコーの経済効果と活用展望の明確化が難しかったことがあり、特に民間病院では購入に向けて経済効果の可視化が求められると感じました。
今回、最終的に購入を決定したiViz airの良い点としては、立ち上がりの速さ、ワイヤレス、軽さ、コンパクトさ、画像の鮮明さ、保存した画像を共有できる点などがあり、AI技術のひとつであるディープラーニングを使用した「直腸観察ガイドplus機能」*1によって自分の判断の裏付けができるところも良いと思います。
今後は、院内で排便エコーが行える看護師を増やしていき、他病棟にも拡大していきたいと考えています。
順天堂東京江東高齢者医療センター 佐藤氏 当院は404床の急性期病院で、高齢者をはじめとする患者さんの健康状態を全人的に捉え、総合的に評価し、早期診断・治療・看護を行っています。
今回の認知症病棟43床を対象とした取り組みの振り返りとして、病棟スタッフ全員が「やってよかった」と感じており、ほとんどのスタッフから「さらに広げていきたい」という意見がありました。
一方で、取り組み当初は、エコーの研修費用や高額なエコーを操作することへの懸念があり、病院から研修費用の支援を受けることも難しい状況でした。しかし、特に志やモチベーションの高い専門/認定看護師を中心に声をかけて、排便エコーの実践・浸透に向けた動機づけをしていきました。その後の取り組みでは、「エコーは医師が行うもの」という意識が当院の看護師たちにあったため、エコーの導入から実践までに少し時間がかかりました。その中でも、今回のプロジェクトの定期会で皆さんの具体的な取り組みのお話を聞いて、それを当院での取り組みに活かしていけたことは本当に良かったと思っています。
その後、10月から認知症病棟43床の延べ131人を対象としてエコーの導入効果を検証し、グリセリン浣腸は月平均110本から60本に、レシカルボン坐薬は月平均40個から2個に減少し、医師からの指示は「①ピコスルファート10滴→②レシカルボン坐薬→③グリセリン浣腸」から「エコー評価後下剤等調整」に変更されました。また、それ以外の効果として、スタッフが解剖をよく考えるようになったことに加えて、怒責をかける体位などの排泄動作に関する検討を行い、新たなケアにつなげていくような取り組みも生まれてきています。さらに、排便エコーの導入後、対象病棟での転倒者数が大幅に減少していることから、今後その関連性についても検証していきたいと考えています。
そして、iViz airについては、特にAI技術のひとつであるディープラーニングを使用した「直腸観察ガイドplus機能」が使えることで不安が軽減すると実感しました。やはりエコーに慣れるまでは「相談できる人」の存在が重要で、富士フイルムメディカルの担当者さんのサポートには助けられましたし、iViz airのユーザー会での症例検討の動画も分かりやすくて、よりイメージが湧きやすくなると感じました。
筑波メディカルセンター病院 中辻氏(がん看護専門看護師) 当院は408床の急性期病院で、がん医療においては茨城県地域がんセンターとして専門医療・緩和ケアなどを行っています。
今回の取り組みにあたり、当院で看護エコーを広めていくためのポイントとして、がんリンクナース会などのすでにある委員会を活用することとしました。また、当院では過去2年間の症状マネジメントの中で便秘緩和がワースト1位で、組織として便秘ケアに対する関心度が高い状況にあり、看護部長および各師長、医師に対しては面談や会議で排便ケアへの啓発を行いました。さらに、現場の看護師に対しては、専門家による勉強会や院内での実技研修・OJTを行いました。
これに対して、看護エコーを広めていくための課題としては、特定の看護師しかエコーが活用できてないことがありました。また、リンクナースが経験年数の点でリーダーシップを発揮しづらい状況にあったため、後方支援が必要でした。さらに、夜間シフトで患者さんの排便の評価を継続的に行うのが困難だったので、横断的に活動している専門/認定看護師が病棟看護師と協働する必要があると考えました。加えて、組織全体としてポータブルエコーのニーズが低い点や診療報酬に直結しない点も課題となりました。
次に、看護エコーを半年間使用して変わったこととして、リンクナースにインタビューをしたところ、医師については「看護師がエコーを扱えることをすごく驚いていた」、「がんセンターに関連する医師が看護エコーに対して協力的だった」、「医師から直接看護師にエコーの依頼があった」という声がありました。リンクナース自身の認識としては、「エコーで可視化することで、患者が坐薬や浣腸に対するケアをスムーズに受け入れてくれた」、「排便処置のケアが増えた」、「排便に関して医師と相談する機会が増えた」、「専門チームと病棟間での便秘に対するコミュニケーションが増えて、継続的な排便ケアにつながっている」という声がありました。
また、私たちは、当院のがんセンターの一般病棟と在宅で、エコーを活用してオピオイドを使用している患者さんの排便の実際を把握することを目的とした観察研究を行いました。その結果として、集計途中ではありますが、33人の患者さんの疾患は肺がんが最も多く、直腸内に便が溜まっていた方は33名中18名で、そのうち89%の方が何らかの下剤を服用していました。次に、直腸内に便が残留している患者さんの主訴として、便意を感じていない人が便意を感じている人よりも多く、腹部膨満感を訴えていない人は約半数で、直腸内に便が貯留している患者さんの中で便意がない人が約60%いるという結果が出ました。そして、ブリストルスケールと直腸内の便が残留している関連性として、ブリストルスケールが4や5の場合でも便が貯留しているケースがあり、18人中7人は4または5でした。この研究の考察として、オピオイドを使用している患者さんにエコーを実施したことで、主体的に排便ケアを提供していくことの重要性を認識できました。エコーの技術や知識を習得した看護師は、以前よりも根拠を持ってケアができ、結果として主体的なケアが提供できる礎になるのではないかと考えます。排便状況を患者さんと看護師が可視化できたことでケアに対する合意ができ、互いの満足度向上につながるのではないかと思います。
今後の課題としては、基本的なエコーの技術を習得したものの、難渋するケースもあるので、技術や知識のさらなる向上を図る必要があり、そのためには、自己研鑽だけではなく専門家とのカンファレンスなど、継続的な研修が必須となるのではないかと考えています。
青梅慶友病院 桑田氏 当院は526床、患者平均年齢89.6歳の医療療養型病院で、従来から看護職が主体的に排泄ケアを判断する文化が根付いています。その中で、2019年にそれまで尿量測定に使用していたエコーが故障したため、AI技術のひとつであるディープラーニングを使用した「膀胱尿量自動計測機能」*2が搭載されたiViz airを導入することとし、3名の看護師が次世代看護研究所主催のエコー講習を受けました。排便ケアに関しては、2003年から各種の取り組みを開始していましたが、今回のプロジェクトに際して新たに6名の看護師がエコー研修を受けて、エコーを活用した排便ケアの定着に取り組みました 。
プロジェクトに参加して良かったこととして、2025年6月の日本老年看護学会第30回学術集会に参加した当院の病棟師長たちが、同学会で私が座長を務めた富士フイルムメディカル共催のランチョンセミナー(「高齢者の排泄ケア再考 -エコーの活用:便秘を可視化する-」)を聞いて当院の取り組みの先進性や意義を改めて実感し、エコーを導入して日々の排泄ケアの質を高めたいという思いを強くしてくれたことがありました。
また、個人的にはエコーの効果はなかなか実感してもらえないのではないかと思っていたのですが、スタッフと理事長が直接対話する職員懇談会で、エコーを使った看護師たちが「エコーを導入して良かった」、「もうエコーなしでのケアは考えられない」といった話をしたと聞き、うれしく思うと同時にスタッフたちにとても感謝する思いでした。やはり人を動かすのは人の思いで、エコーを使った看護師たちの思いが経営層に伝わったことでiViz airの追加導入が実現したのだと思います。
一方で、プロジェクトの中で難しさを感じたのは、「道なき道を行く」ことです。プロジェクトのコンセンサスミーティングや慢性便秘エコー研究会等でさまざまなお話をうかがいましたが、それを自施設に落とし込むことはできません。その中で、コンセンサスミーティングの内容をもとに排便ケアのフローチャートを作りましたが、そのまま使うことはできず、コンセンサスミーティングのメンバーの方々から助言をいただきながら修正していきました。「高齢者」と言っても、実際には急性期病院と当院のような医療療養型病院では患者像が異なるので、そういった点も共有して、相互理解を図りながら、エコー定着の方策を検討していく必要があると思います。
そして今後は、全病棟に導入した合計10台のエコーを継続して使用していくために、排便ケア以外での活用も検討していきたいと考えています。
青梅慶友病院 松野氏(老人看護専門看護師) 私は、先日のエコーチームの話し合いで「直腸診という概念がなくなった」という話が出て、エコーの効果を実感しました。従来は人生の最晩年の患者さんに「ごめんなさい」と言いながら直腸診をしていましたが、エコーを導入したことでそれがなくなったのは私たちにとっても患者さんにとっても非常に大きいことだと思っていますので、今後もエコーの活用を継続していきたいと考えています。
近森病院 岡本氏 当院は489床の急性期病院で、従来から排便のアセスメントが主観的評価に依存しており、それがケアの遅れや過剰介入につながっていると感じていました。そうした中で、エコーによって排便状況を可視化して適切なケアのタイミングを判断することで、無駄をなくし看護師の負担を減らすとともに、ケアの標準化や根拠のある看護実践につなげたいと考えて、今回のプロジェクトに参加しました。
そして、約6ヵ月間にわたって、がん看護専門看護師と認知症看護認定看護師がトライアルを行い、個々の事例で効果が見られています。今回は、がん看護専門看護師の島田さんから事例の紹介をさせていただきたいと思います。
近森病院 島田氏(がん看護専門看護師) 私が実際に「エコーがあって良かった」と感じた事例を紹介させていただきます。
80歳男性で、既往に脳出血後遺症(左不全麻痺)、四肢拘縮、認知症、L4圧迫骨折のある方でした。経過としては、施設入居中でADLは全介助、意識レベルも呼びかけに反応する程度だったのですが、1週間前から食事の摂取量が低下して徐々に反応が鈍くなって救急搬送され、4日前から尿路感染症で入院されていました。
私たちが介入したきっかけとしては、前日に夜間せん妄があって認知症ケアチームに介入の依頼がありました。そして、カルテを確認すると、入院後に食事摂取量がさらに低下しており、持参薬にグリセリン浣腸とピコスルファートナトリウムがあり、介入時は排便-6日目で、2日前にセンノシドは内服していましたが反応便がない状態でした。
私たちのチームのアセスメントとしては、脳出血の後遺症と四肢拘縮で体が動かせず、腸の動きが悪いこと、食事・水分摂取量の低下で便が硬くなっていることに加えて、弱オピオイドのトラムセットを内服しているのでさらに腸の動きが抑えられているのではないかと考えました。また、認知機能の低下があるので便意を訴えることも難しいこと、入院後に排便リズムが崩れた可能性があること、ベッド上安静で自然の排便姿勢が取れないこと、その便秘による不快感がせん妄の促進因子になっている可能性があるとアセスメントしてエコーを行いました。
エコー像が図1で、横断像では音響陰影を伴う高エコー域が確認できたので、普通便~硬便が貯留していると判断しました。縦断像では上部から下部にかけて便の貯留があり、全体的に音響陰影を伴う高エコー域が確認できたので、特に肛門側は硬便がありそうだと判断しました。そこで、まずは肛門部の硬便の摘便で取り除いた後にレシカルボン坐薬を使用し、その後、ブリストルスケール5の多量の排便が確認できました。翌日、再度エコーを行うと、上部にそのままの位置で便が残っていたので、今度は浣腸を施行して貯留は改善しました。この方の場合は、輸送機能障害と排出機能障害が考えられたので、便秘予防のケアを検討していきました。結果としては、食事量は入院前の状況に戻り、夜間せん妄も持続することがなかったので、せん妄対策の内服薬の使用も必要なく経過しました。

図1 初回アセスメント:
三日月形の高エコー領域あり、音響陰影あり直腸株まで便が下りてきている(左)
普通~価便が貯留している(右)
近森病院 岡本氏 現在は、看護エコーを院内でさらに広げていくための取り組みを進めており、先日、エコー勉強会を開催しました。参加者は36名で、エコーに興味を持った看護師からは「もっと勉強したい」という声が出ています。また、2026年2月の院内学会で今回の取り組みについて報告を行う予定です。
そして、単にエコーで便の有無を見るだけでなく、その他の情報も含めて複合的にアセスメントした上で、その人に合った排便ケアにつなげてもらうために、「エコーの基本操作研修⇒2人のエコーナースによるOJT⇒定期的な症例レビュー会」という流れでスタッフを育成していきたいと考えています。同時に、こうした取り組みを通じて、看護師の排便ケアにかかる時間や浣腸や坐薬の使用回数・摘便回数等の定量的な効果を示していきたいと思っています。
これらの取り組みによって、根拠に基づいたケアや個別性の高い排便ケアの実践ができ、患者さんの苦痛軽減やQOL向上につながると考えられます。また、時短勤務の看護師が病棟に配属されるとフリー業務が中心になりがちですが、そういった看護師がエコーナースになることでやりがいにつながればと思いますし、看護師の確保・定着につながるのではないかと思います。
看護エコーは排便アセスメントの客観性向上に効果があり、スタッフの学習意欲も高いので院内での普及をさらに勧めていきたいと考えています。今後はデータ収集体制を整えて標準ケア化を目指し、看護の質向上、効率化に寄与する取り組みとして、継続して推進していきたいと考えています。
筑波メディカルセンター病院 中辻氏 当院では、すでに訪問看護で富士フイルムのエコーを導入して使用しているので、今後は排泄ケアも含めてさらに看護エコーを拡大させていけるように、さまざまな機会で今回の取り組み内容を発表していきたいと考えています。そして、当院だけでなくグループ全体やがん看護領域の中で、エコーが質の高いケアに貢献していくよう取り組みを進めていきたいと考えています。
近森病院 岡本氏 以前は排便アセスメントが主観的評価に依存していましたが、今回のプロジェクトでエコーによって排便状況を客観的に可視化することで、適切なケアタイミングの判断やケアの標準化等につなげられると示せたことは非常に良かったと感じています。また、5施設共同で取り組んだことで、エコーの購入に向けた経営層との交渉方法やそのための戦略が自然と見えてきたところも良かったと思っています。
青梅慶友病院 桑田氏 看護エコーを継続し、定着させていく上で、エコーの専門家の存在は非常に重要だと感じていますが、それと同時にただ教えてもらうだけではなく、我々の現場のことを専門家に伝えていくことも大切だと考えています。そのために、当院では松野さんに次世代看護研究所の指導者認定を受けられるコースを受講してもらっています。また、院内で指導者を育成することで、院内でエコーの専門的な指導ができるのはもちろん、医療圏の中でタッグを組んで看護エコーを普及させていくこともできると思っています。
今、看護エコーに少しでも興味をお持ちでしたら、まずは声を挙げて、管理者に相談してみてください。そうすれば、きっと良い変化が生まれていくと思います。また、管理者としては、自組織の5年後、10年後を見据えたスタッフの育成やスタッフに対する価値提供が重要になってきますが、その点でも看護エコーは大きな役割を果たすものだと考えています。
- *1 設置後に自動的に性能が変化することはありません。
- *2 設置後に自動的に性能が変化することはありません。
- 販売名
FWUシリーズ
- 認証番号
301ABBZX00003000













