日本

ポータブルエコーの使用事例

医療過疎を救う!
ポケットサイズの腹部ワイヤレスエコーの可能性

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

医師 / 診療所
真鶴町国民健康保険診療所
川﨑 英司 先生

超高齢化社会が進む中、医療過疎の地における外来診療および在宅医療の現場で、柔軟な対応が求められています。私は「なんでも診る」スタンスで日々の診察にあたっているため、場所を選ばず、簡単・スピーディに利用できるポケットサイズの超音波画像診断装置に関心を持っていました。いざ導入すると、医師はもちろん、患者さんにも大きなプラス効果をもたらすことがわかりました。

病院でのエコーによるスクリーニング検査が、症状の乏しい人の中から疾患を発見することが目的であるのに対して、ポケットエコーの目的はポイントオブケア。観察部位を限定し、そこから必要な情報を得て、その場で問題を発見し、その場で判断することです。具体例をご紹介していきましょう。

私が所長を務めている真鶴町国民健康保険診療所は、私を含む2名の常勤医と複数の非常勤医で内科、外科、小児科、整形外科を標榜して診療を行っています。真鶴町の高齢化率は40%を超え、2017年、神奈川県初の過疎地域に指定されました。かかりつけ医療機関として当診療所に期待される役割は大きく、先に述べたように、0歳児~100歳を超える超高齢者まで専門科や疾患などの領域にとらわれず「なんでも診る」スタンスで診察にあたっています。

メインは外来診療。プライマリ・ケア医として救急医療から生活習慣病や慢性疾患の管理、終末期医療、健康診断など予防医療まで幅広い対応が求められます。外来患者数は一日平均50人、冬の感染症流行期は100人近く診ることもあります。

高齢の患者さんが多いため、疾患としては高血圧、糖尿病、脂質異常症、骨粗鬆症、心不全、慢性閉塞性肺疾患、認知症などが中心です。海の街ということもあり、釣り針が刺さった、ウニのトゲや海洋生物に刺されたなどの訴えで受診される方もしばしばおります。

私は元々は泌尿器科が専門ですので、前立腺肥大症、過活動膀胱や前立腺がんの薬物療法も診療所で行っています。

超音波の使用頻度は週に1、2回程度で、最も多いのが、腎臓、尿管、膀胱、前立腺を診る尿路のスクリーニング検査。健診で尿潜血陽性を指摘され外来に来られる方が多いので、尿路のスクリーニング検査と尿の細胞診をセットでチェックしています。また、排尿障害、頻尿などの主訴で受診された方の初診時や治療中の患者さんの経過フォローという形で超音波検査を行っています。

加えて、十数名の患者さんの訪問診療を行っており、このとき最もポケットエコーの重要性・可能性を感じられるのです。

ポケットエコーを使用して、治療方針が定まったという事例をご紹介します。

他病院から訪問診療の依頼で紹介された患者さんのカルテに「排尿障害」「神経因性膀胱」との記載があり薬が処方されていました。ただ、私としては、「現在も排尿障害が認められるか」といった疑問があり、認められなければ少しでも薬を減らしてあげたい気持ちがありました。けれど問診では判断がつきませんので、患者さんのお宅でポケットエコーで検査したところ、カルテ通りそれなりの量の残尿が認められました。その結果、変更なく薬を処方することになりました。

医療機器が揃わない訪問診療でも、患者さんの症状に合わせて都度、治療方針を見直していくのは当然ですが、このように今後は、ポケットエコーが治療方針決定の判断材料になっていくと思います。小さなことでも懸念事項があれば、その場で診断し、その場で治療方針が決められることにポケットエコーの可能性を感じました。

さらに、「背中の皮下にデキモノがある。処置をしてほしい」という患者さんが外来にいらしたとき、ポケットエコーを活用しました。ポケットエコーの特徴としては、診察室に置いておける収納性と機動性。コンベックスでしたが、浅部の画質が鮮明だったので、腫瘤が筋肉層まで達していないことが判断でき、その場ですぐに処置できることが判明しました。

多忙な外来の合間に別室に移動して自ら行う超音波検査をねじ込むのは、ハードルが高くても、ポケットエコーであれば、診察室で即座に立ち上げて検査を始めることができます。このスピード感のおかげで、患者さんをお待たせすることなく、診察の負担も軽減されています。

ワイヤレスというと、バッテリーが心配ですが、毎日充電しておけば問題なし。訪問診療に出かける際も、数時間であればバッテリー切れを心配する必要はありません。

これは、私の個人的な構想ですが、教材用にも最適だと思います。据え置き型だと、横になって自分にエコーを当てているときに画面が見えませんが、ポケットエコーだと、寝転がったまま様々な部位に当てながら、スマホでネットを見るときと同じ感覚で自分の体内を可視化できてしまう。つまり、自分の体を超音波検査の手軽な練習台にできるのです。研修室に一台置いてもらえれば、気軽に練習できて研修医の技術向上にも一躍買うのではないかと思います。医療技術の技術革新は、人の成長速度を加速させると夢は膨らむばかりです。