2025.09.08
機械学習とは?
AIとの違いや活用するメリット・活用事例をわかりやすく解説
機械学習とは、コンピューターがデータからパターンやルールを自動的に学習し、予測や判断を行う技術のことです。
しかし、活用シーンや学習方法が多数存在するため、自社に最適な方法を理解する必要があります。
本記事では、機械学習の定義や他プログラムとの違い、活用事例や学習方法まで解説します。
目次
機械学習とは
機械学習について、基本的な定義や従来プログラムとの違いについて解説します。
- 機械学習の基本的な定義
- 機械学習と従来プログラムの違い
- 人工知能(AI)との違い
- ディープラーニング(深層学習)との違い
- 機械学習が注目される理由
人工知能やディープラーニングとの違いについても解説しているので、機械学習の基礎理解に役立ててください。
機械学習の基本的な定義
機械学習とは、コンピューターが大量のデータからパターンやルールを見つけ出し、それをもとに予測や判断を行う技術です。メールのスパム判定や製品の需要予測を、コンピューター自身がデータにもとづいて判断できるようになります。
あらかじめすべての手順を人間が指定する必要はなく、データからの学習によって精度を少しずつ高めていくのが特徴です。単なる命令に従うだけのプログラムとは異なり、経験を積むことで柔軟に性能を向上させていける技術です。
従来プログラムとの違い
従来のプログラムは、人間がルールや条件をあらかじめ明確に記述し、その指示通りにコンピューターが処理を行う仕組みです。たとえば、「〇〇なら△△する」といった条件分岐を無数に組み合わせて動作を制御します。
しかし、例外やパターンが多い問題では膨大なルールを記述しなければならず、現実的に限界がありました。
一方、機械学習ではすべてのルールを事前に書き込む必要がありません。コンピューターが大量のデータから自動的にパターンや特徴を学び、最適な判断を行います。
たとえば、画像認識で「犬」を識別する場合、従来型プログラムでは「耳の形」「毛の長さ」などの特徴を細かく定義する必要がありました。機械学習では大量の犬の画像を学習させることで、自ら共通の特徴を見つけ出せます。
人手では対応が難しい複雑な問題にも、柔軟かつ高精度に対応できるのが機械学習の強みです。
人工知能(AI)との違い
人工知能(AI)とは、人間の知的な作業をコンピューターで再現しようとする幅広い技術や研究の総称です。あらかじめ決められたルールに従って処理するだけのシステムや、探索・計算を行う仕組みなども含まれており、そのうちの一分野が機械学習です。
機械学習は、データをもとにパターンを学習し、自ら予測や判断を行えるようになる技術で、AIのなかでも「経験から学ぶ」仕組みを担う中心的な役割を持っています。
たとえば、AIの応用分野にはロボット制御・自然言語処理(翻訳や会話)・ゲームの対戦相手など、幅広い用途があります。一方、機械学習は売上予測・画像識別・スパムメール判定など、特にデータにもとづく予測・分類タスクが得意です。
つまり、AIは包括的な概念であり、機械学習はそのなかの実践的な手法の一つです。目的や課題に応じて、AIのどの技術を選択・組み合わせるかが成果を左右します。
ディープラーニング(深層学習)との違い
ディープラーニング(深層学習)は機械学習の一種で、人間の脳の神経回路を模倣した多層構造の「ニューラルネットワーク」を活用するのが特徴です。
従来の機械学習では、「画像の輪郭」や「色の濃さ」といった、どの特徴に注目するか(特徴量)を人間が設計する必要がありました。一方、ディープラーニングでは特徴設計を人が行わなくても、多層的な構造を通してデータを解析し、自動的に特徴を抽出可能です。
たとえば、画像から「猫かどうか」を判定する場合、ディープラーニングは「毛の模様」「輪郭」「目の形」などを複数の層で段階的に学習し、精度の高い分類を実現します。
この特性から、ディープラーニングは画像認識・音声認識・自然言語処理など、高度なパターン認識や大量データ処理が必要な分野で広く活用されています。
機械学習が注目される理由
近年、ビジネスで扱うデータ量は爆発的に増加しています。顧客の行動履歴・センサーの計測データ・SNSの投稿内容など、企業が保有する情報は膨大かつ多様です。これらを人の手で分析し続けるのは限界があり、従来のルールベース型システムでは変化や例外に柔軟に対応できないケースが増えています。
こうした課題を解決する技術として注目されているのが、機械学習です。機械学習は、大量のデータから自動的にパターンを学び、予測や判断を行えるため、人間がすべてのルールを事前に定義する必要がありません。
さらに近年は、クラウド環境や高性能コンピューターの普及により、企業規模を問わず機械学習の導入が容易になっています。加えて、ChatGPTやMidjourneyといった生成AIの登場により、非専門家でもAIの有用性を実感しやすくなったことも追い風になっている要因のひとつです。
今後もデータ活用が前提となるビジネス環境が広がるなかで、機械学習は欠かせない基盤技術として存在感を高め続けることが予想されます。
機械学習を活用するメリット
機械学習を活用することで得られる主なメリットは以下のとおりです。
- 業務の効率化につながる
- 大量データの高速処理ができる
- 低コストで導入できる
メリットを理解して、自社の課題解決や新たなビジネス機会の創出に役立ててください。
業務の効率化につながる
機械学習は、人が行っていた繰り返し作業を自動化することで、業務の効率化に貢献します。
たとえば、経費精算書の自動仕分けやコールセンターでの問い合わせ分類、生産ラインでの不良品検出など、これまで時間をかけていた作業を短時間で高精度な処理が可能です。
機械学習は24時間稼働も可能なため、人員不足の解消や生産性向上にもつながることが期待できます。業務の効率化によって生まれた時間は、新規事業の立案や顧客提案の質向上など、より戦略的で付加価値の高い業務へ振り向けられます。
大量データの高速処理ができる
現代のビジネス環境では、日々膨大なデータが生成されています。機械学習は、この膨大なデータを短時間で処理し、有用なパターンや傾向の抽出が可能です。
たとえば、ECサイトでは購入履歴や閲覧履歴をもとに、顧客の好みに合わせた商品をリアルタイムでレコメンドし、購入率の向上に貢献しています。金融業界では、膨大な取引データを瞬時に分析し、不審な動きを検出して詐欺やマネーロンダリングの早期発見に役立っています。
さらに物流業界では、需要予測にもとづいて配送ルートを最適化し、コスト削減と効率化への貢献を期待されています。
機械学習による高速処理は、あらゆる業界で迅速かつ的確な意思決定を可能にしています。
導入ハードルが下がってきている
かつては機械学習の導入に、高額なサーバー設備や専門知識を持つエンジニアが不可欠で、中小企業には手が届きにくい技術でした。
しかし現在では、クラウドサービスの普及により、物理的な設備を持たなくても機械学習環境を構築できます。さらに、ノーコードツールと呼ばれるプログラミング不要のサービスを活用すれば、専門知識がなくても機械学習モデルの作成・運用が可能です。
実運用にはデータ準備・精度検証・運用保守といった追加コストや人的リソースが必要になりますが、以前と比べると導入のハードルは下がっています。
機械学習の主な3つの学習方法
機械学習の主な3つの学習方法は、以下のとおりです。
- 教師あり学習
- 教師なし学習
- 強化学習
それぞれの方法を理解して、自社の目的に適した学習方法で進めることが大切です。
教師あり学習
教師あり学習は、正解付きのデータを使ってモデルを学習させる方法です。人が答えを教えるように、入力と正解の組み合わせを大量に与えて、未知のデータにも対応できるようにします。
たとえば、メールのスパム判定や手書き文字認識、住宅価格予測などが代表例です。正解があるため精度を測りやすく予測性能が高いのが特徴ですが、その分、質の高いデータを多く用意する必要があります。
教師なし学習
教師なし学習は、正解がないデータから隠れたパターンや関係性を見つける方法です。似たデータをまとめるクラスタリングや、重要な情報を抽出する次元削減などがあります。
たとえば、顧客データを類似性にもとづいてグループ分けしてマーケティングに活用したり、異常な動きを検出して不正防止に役立てたりできます。新しい発見や洞察を得られるのが教師なし学習の強みです。
強化学習
強化学習は、環境とやり取りしながら試行錯誤で最適な行動を学ぶ方法です。行動を取るたびに報酬やペナルティが与えられ、より多くの報酬が得られる行動を見つけていきます。
たとえば、囲碁や将棋のAI、自動運転車やロボット制御などで活用されています。正解がない状況で、自律的に最適解を見つけられるのが特徴ですが、学習には時間や安全な環境が必要です。
機械学習の具体的な活用事例
機械学習の具体的な活用事例を5つ紹介します。
- Webサービス・スマホアプリのレコメンド機能
- 画像認識
- 音声認識
- データ分析・予測
- 自然言語処理
以下の事例を参考に、自社の業務やサービスに導入する際のイメージを膨らませてみてください。
Webサービス・スマホアプリのレコメンド機能
Webサービス・スマホアプリのレコメンド機能は、機械学習が日常的に活用されている代表例です。レコメンド機能とは、ユーザーの行動履歴や検索履歴などを分析し、関連性の高い商品やサービスを提示する仕組みのこと。
ECサイトでは顧客の購買履歴や閲覧履歴を分析し、好みに合う商品やコンテンツを自動で提案します。動画配信サービスでは、視聴履歴をもとに次に見る作品を提示します。音楽アプリでは、好みに合わせたプレイリストの自動生成が可能に。
レコメンド機能により、利用者は多くの選択肢から素早く自分に合った情報を得られるため、利便性と満足度が高いサービスの提供が可能になります。
画像認識
画像認識とは、カメラで取得した画像から対象物を識別・分類する技術です。近年はディープラーニングの発展により、その精度が飛躍的に向上しています。
医療分野では、CTやレントゲン画像から病変を自動検出する診断支援システムに活用されており、医師の診断支援に利用され、診断業務の効率化への貢献が期待されています。製造業では、製品の外観検査を自動化することで作業時間を短縮し、品質の均一化を実現。不良品の削減や人手不足の解消にも貢献し、安定した生産体制の構築を可能にしています。
また、顔認証技術はスマートフォンのロック解除や施設の入退室管理などに利用され、セキュリティーと利便性の両立を実現。さらに自動運転の分野では、歩行者や信号・標識を瞬時に認識し、安全な走行をサポートしています。
音声認識
音声認識とは、人間の声をテキストデータに変換する技術です。
ビジネス分野では、会議内容を自動で文字起こしするツールが広く活用されており、議事録作成の手間削減に役立っています。記録漏れを防ぎつつ、会議後の情報共有や検索もスムースに行えるのがメリットです。
また、コールセンターではリアルタイムの応対支援システムに音声認識が組み込まれ、オペレーターの対応をサポート。24時間体制での対応を可能にし、応対履歴の蓄積・分析によって顧客満足度の向上や業務改善にもつながっています。
データ分析・予測
機械学習を活用したデータ分析・予測は、過去のデータから将来の動向を見通すための強力な手段です。
小売業では、販売実績・天候・イベント情報などを組み合わせて需要を予測し、最適なタイミングで仕入れや在庫配置を行います。これにより、欠品や在庫過多を防ぎ、販売機会の損失を最小限に抑えられます。
通信業界では、顧客の利用状況から解約リスクを予測し、対象ユーザーに特別キャンペーンやフォロー対応を実施。結果、契約継続率の向上や顧客ロイヤルティの強化につながります。
製造業では、センサーが取得した稼働データを分析し、設備の故障予兆を検知。突発的な生産停止を防ぎ、計画的なメンテナンスを実現します。
機械学習によるデータ分析・予測は、コスト削減とサービス品質の向上を同時に実現できるのが強みです。
自然言語処理
自然言語処理とは、人間が日常的に使う言葉をコンピューターが理解し、解析・処理する技術です。なかでも代表的な活用例のひとつが、機械翻訳です。日常会話から専門的なビジネス文書まで正確かつ迅速に翻訳できるため、国際的なコミュニケーションや海外展開をスムースに進められます。
チャットボットでは、顧客からの問い合わせに自動で応答し、24時間体制のサポートを実現。これにより、業務負担を軽減しながら顧客満足度を向上できます。さらに、契約書や報告書の自動要約やキーワード抽出なども可能で、大量の文書を短時間で整理でき、業務の効率化や迅速な意思決定に貢献します。
機械学習を活用する際の注意点
機械学習を活用する際には、以下の注意点があります。
- 十分なデータ量が必要になる
- データの質やバイアスによって結果がゆがむ
- プライバシーや倫理的な配慮が必要になる
これらの要素を軽視すると、精度の低下や誤判定、さらには法的・社会的なリスクにつながる恐れがあります。導入を進める際は、以下で解説する内容に注意して進める必要があります。
十分なデータ量が必要
機械学習は、データからパターンを学習して予測や分類を行うため、十分な量と質のデータが不可欠です。データが不足していると学習が不十分となり、未知のデータに対する精度が低下する可能性があります。
さらに、限られたデータで過度に学習させると「過学習(オーバーフィッティング)」が発生し、学習データでは高精度でも実運用では誤判定が増えるリスクがあります。
近年では、すでに学習済みのモデルを活用する転移学習や、少量データに対応できる技術も進化していますが、多様でバランスの取れたデータセットの準備が望ましいです。
データの質やバイアスによって結果がゆがむ
機械学習は、与えられたデータに含まれる偏りや誤りをそのまま学習します。そのため、データの質やバイアスが結果に直接影響する点に注意が必要です。
たとえば、偏った属性のデータで学習したモデルは、公平性を欠いた判断を下す可能性があります。結果のゆがみを防ぐには、データ収集時から多様性を確保し、定期的にモデルの公平性や偏りを評価することが重要です。
プライバシーや倫理的な配慮が必要
機械学習は、個人情報や機密情報を扱う場面が多いため、プライバシー保護や倫理的配慮が欠かせません。適切な取り扱いを怠ると、情報漏えいや不正利用による信頼低下、法的リスクにつながる可能性があります。
具体的な対策としては、利用目的の明示・データの匿名化・アクセス権限の制御などが挙げられます。また、AI活用に関するガイドラインを策定し、社内で共有・遵守することも重要です。
安全かつ倫理的な運用環境を整えることで、安心して機械学習を活用でき、企業やサービスの信頼性向上にもつながります。
まとめ
機械学習は、データからパターンを学び予測や判断を行う、AIの一分野を担う技術です。教師あり学習・教師なし学習・強化学習といった手法があり、それぞれ適した場面で活用されています。
業務効率化や大量データの高速処理、低コストでの導入など、さまざまなメリットが企業やサービスの導入を後押ししています。一方で、十分なデータ量や品質の確保、プライバシー保護などの課題にも配慮が必要です。
自社の目的に合った手法と運用体制を整え、段階的に導入することで、企業が求める成果と競争力向上への寄与が期待できます。
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