このコンテンツは医療従事者向けの内容です。
HAMA-RADネットワークセンター
浜松医科大学
放射線医学教室 助教
棚橋 裕吉 先生
医用画像情報システム「SYNAPSE」や読影ビューワ「SYNAPSE SAI viewer」と連携することで、シームレスにクラウドで提供される画像解析機能を利用できる「医療クラウドサービス」。
棚橋裕吉先生に肺結節検出サービスなどの運用状況をうかがった。
HAMA-RADネットワークセンターの概要は。
当センターは、地域の医療施設から送っていただいたCT・MRIなどの医用画像を放射線診断専門医が読影する遠隔読影会社です。現在は5名の読影医が在籍し、4施設と連携しています。
読影に使用しているシステムは。
読影ビューワは「SYNAPSE SAI viewer(以下、SAI viewer)」を使用し、画像診断支援として「医療クラウドサービス」を、遠隔読影支援システムとして「SYNAPSE Teleradiology」を利用しています。
医療クラウドサービスの使用感は。
大学で使用している院内サーバ型の画像解析オプションと比較しても、画像表示や解析のスピードは遜色ありませんね。また、クラウドの懸念点の一つであるセキュリティ面についても、しっかり対応されているとうかがっていますので、安心して利用ができています。
HAMA-RADネットワークセンターにおける医療クラウドサービス活用状況
SAI viewerの使用感は。
デザインや機能、使い勝手が以前のバージョンよりもかなり良くなっていると感じています。中でも、薄いスライスを見る時に別のアプリケーションを立ち上げる必要がなく、SAI viewer内で参照できる点は非常に良いと思います。私が専門としているカテーテル治療では、治療方針を立てるためにCT画像で血管を追っていきますが、通常の2.5mmや5mmのスライスでは細い血管を連続して追えないため、薄いスライスを確認する必要があります。私の場合はカテーテル治療を行う際は全例で薄いスライスを確認しますし、がんのスクリーニングや交通事故等での出血か所の確認でも薄いスライスを参照することが多いため、SAI viewerの導入によってワークフローが大きく改善しました。
SAI viewerのカスタマイズ性については。
アイコンのサイズや文字のサイズ、サムネイルのバーの高さなどがすべて調整できるので、自分に合ったカスタマイズが可能です。その中で、私は、よりスピーディに距離を測定したり、タイピングの労力を減らすことに加えて、レポートに貼り付ける画像の見やすさにもこだわっています。例えば、距離については、レポート上で測った場所や数値がしっかりと確認できるようにカスタマイズしていて、距離の数値は印刷しても見やすい大きさに設定しています。
Deep Learning技術を活用した肺結節検出機能の使用法は。
まず自分の目でしっかりと読影した後に、肺結節検出機能をオンにして全体を確認します。そして、見つかった結節候補については、形や色合いから良悪の鑑別を行い、良性の場合でもレポートに書き残すようにしています。
どれだけ経験を積み重ねても、肺がん検診や術後の再発診断など、結節の有無を確認する際に、自信を持って“ない”と言い切るのは難しい部分がありますが、肺結節検出機能を導入したことで、以前よりも自信を持って“ない”と言えるようになったと感じています。
また、見落とし防止の観点では、私の感覚として、心臓周辺の小さな結節は肺動脈や肺静脈との関係で見落としやすい印象がありますが、肺結節検出機能はそうした結節もしっかりと拾い上げていると思います。加えて、腹部CTに写り込んだ胸部領域のように、肺が関心領域ではない場面でも有用だと感じています。一般的に、腹部が関心領域の場合、特に大きな異常があるとそこに集中してしまい、最後に肺を見るのを忘れてしまうこともごくまれにあると思います。肺結節検出機能を使用すれば、そういったことを防止できますし、肺の条件に変更しなくても検出してくれるので手間なく活用できます。
さらに、フォローアップでは、病変の長径と短径を確認するのが一般的ですが、本来は体積を測るべきだと思います。しかし、体積の測定は非常に手間がかかるため、日常診療の中で実践するのは難しい部分があります。その点で、肺結節性状分析機能で病変の体積を表示してくれることは大きいですし、測定およびデータの標準化にも寄与すると考えています。
例えば、肝臓にはS1~8の区域があり、レポート上で主治医に病変の位置を伝える際やカテーテル治療の方法を検討する際には、病変のある区域を特定することが重要になります。私自身は慣れているので困ることはないのですが、経験の少ない若手医師や学生は区域の境目が分からないケースもあるので、肝臓の区域を自動で抽出してくれるセグメンテーション機能は教育面でも有用だと考えています。