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日本

前立腺IMRTの前処置でワイヤレス超音波画像診断装置「iViz air」を活用 ~患者さんの負担軽減と治療のスループット向上に貢献

このコンテンツは医療従事者向けの内容です。

大阪府済生会中津病院
診療放射線技師
藤田 秀樹 先生

放射線治療法の一つである「IMRT(強度変調放射線治療)」は、専用の治療計画用コンピュータを用いて放射線強度を細かく調整することで、腫瘍に対して集中的に放射線を照射できるため、副作用を軽減しながら治療成績の向上を目指すことができます。そして、前立腺IMRTにおいては、前立腺と近接する膀胱に当たる線量を低減するために、照射前に一定量の尿を蓄えておくことが必要になります。

当院では前立腺IMRTの前処置として1時間前に排便・排ガス、排尿をしてもらい、それから1時間の畜尿を行い、照射直前に撮影する位置合わせ用のCone-beam CT(CBCT)画像で尿量を確認していますが、CBCT画像で確認した尿量が少ない場合は、再度蓄尿した後に改めてCBCTを撮影しなければならず、それには大きな手間と患者さんの被ばくが伴います。そこで、当院ではポータブルエコーiViz airを用いて、CBCTの撮影前に尿量を把握することで、患者さんおよび診療放射線技師の負担軽減、放射線治療のスループット向上につなげています。

エコー初心者にも使いやすい膀胱尿量自動計測

こうした中、エコーのスペシャリストである診療放射線技師の方から、iViz airをご紹介いただき、前立腺IMRTにおける尿量の評価に使用する目的で試用を開始しました。

当院の放射線治療領域において、これまでエコーが使用される場面はまったくなく、私自身も実際の患者さんに使用した経験はありませんでしたが、iViz airの膀胱尿量自動計測は、膀胱を描出するだけで、尿量を自動計測してくれるので、すぐになじめ、尿量測定に関しては十分に使いこなせるようになれたと感じています。また、私の他の診療放射線技師3名もこれまでエコーを使用した経験がなかったのですが、すぐに使いこなせるようになりました。

さらに、前立腺IMRTの患者のうち研究に同意した5名161回分を対象として、その診療放射線技師がiViz airで測定した尿量と、私がCBCT画像から測定した尿量を比較した研究において、iViz airとCBCTの尿量の測定結果には強い相関(r2 = 0.9607)が認められ、尿量が正確に測定できていると感じています。

低侵襲かつ手軽なので、途中経過も確認しやすい

CBCTは被ばくも手間も伴うので何度も撮影することはできませんが、ポータブルエコーは低侵襲かつ手軽なので、蓄尿の途中経過をいつでもどこでも確認できることも大きいと思います。

また、尿量測定時、数値だけでなく画像が見られる点も重要で、ポータブルエコーを用いることで一人ひとりの患者さんの膀胱の位置をしっかりと確認できるので、尿量が少ない場合でも正確に測定することができます。

最初は“焦らず、じっくり”取り組むこと

iViz airは、前立腺IMRT前の尿量測定のためだけに導入しても、十分な価値があると思います。その一方で、エコーを使用することにハードルを感じる診療放射線技師も少なくないと思いますが、私の経験を振り返ると、実際に使い始めると尿量測定だけなら簡単に使いこなせるようになったという実感があります。

私自身がそうだったように、使い始めの頃は「早く結果を出したい」「患者さんを待たせてはいけない」と焦ってしまうこともあるかもしれませんが、慣れないうちは“焦らず、じっくり”取り組むことがポイントになると思います。

そして、毎日使用していけば、ポータブルエコーは画像が確認できるので習熟も早く、比較的早い段階で導入効果を実感できると思います。