- 大口予約が取り消されると、同規模の予約で埋め合わせることが難しく、大きな機会損失につながっていた
- お客様への電話確認なども行っていたが、十分な効果が得られなかった
- AIによるキャンセル予測で、約87%の的中率を実現
- キャンセルの早期把握と予約枠の有効活用により、宴会場の利用客数が前年同期比で約10%増加
- 確認連絡の対象が明確になり、従業員の意識も変化した
- AIによる予測を基に、キャンセルリスクの高い予約へ早期に確認連絡ができること
- 当社の課題やデータに合わせた、富士フイルムBIジャパンの柔軟かつ迅速な支援
福岡市で1961年に創業した「博多料亭 稚加榮(ちかえ)」を中心に飲食業を営んでいます。2026年に創業65周年を迎えました。料亭にある生簀は国内有数の規模を誇り、豊富な魚種とストック量を活かした、他店では味わえない活魚料理を提供しています。
また、料亭ならではのこだわりの詰まった辛子明太子などの物販も行っています。さらに、セカンドブランドとして展開している「稚加榮茶寮」では、若い層のお客様をターゲットとするカフェと、博多駅構内の弁当・惣菜販売店を運営しています。
料亭では、カウンター・個室・宴会場とさまざまなお席を提供しています。宴会場は最大120名様までご利用いただけますが、大人数の宴会ほどキャンセルによる影響も大きくなります。数十名規模の宴会では、来店予定日の1か月前にキャンセルが発生した場合でも、代わりの予約で埋めることは容易ではありません。
こうした問題が特に顕在化したのが、コロナ禍の時期でした。当時は予約数が減少しただけでなく、料理の配膳に必要なスタッフの確保も難しくなり、席に余裕があっても人手不足のため予約を受けられない状況が発生していました。こうした限られた人員で運営している中、受けた予約がキャンセルになると、苦労して集めたスタッフの稼働が無駄になってしまいます。特に大口予約が取り消された場合、同規模の予約で埋め合わせることは難しく、「大口予約のキャンセルリスクを何とか減らしたい」ということが大きな課題となっていました。
もちろん以前から、ご予約をいただいたお客様へ「予定どおりでよいか」と確認のお電話を入れるなどの対策は講じていました。しかし、どの予約について確認の電話を入れるべきか判断できず、十分な効果にはつながっていませんでした。
そんなあるとき、富士フイルムビジネスイノベーションジャパン(以下「富士フイルムBIジャパン」という)の展示会で、「FUJIFILM IWpro Intelligent Assistantオプション」の説明を受けました。機械学習型AIによって、さまざまな分析業務を自動化し、人の判断をサポートするサービスとのことで、興味を持ちました。ふと思いついて「予約キャンセルの予測に使えないか」と尋ねたところ、「できるかもしれません」との回答がありました。そこで早速社内に持ち帰り、定例会議の場で導入を提案したのです。
実は、当社は長らく社内LANもファイルサーバーもない、システムとは無縁の会社でした。しかし、コロナ禍直前に現在の社長が就任して以来、伝統を大切にする一方で、業務の効率化や経営判断に必要なデータ活用を積極的に進める方針のもと、社内のデジタル化にも取り組み始めました。そうした社内の空気もあって、「FUJIFILM IWpro Intelligent Assistantオプション」を使った予約キャンセル予測の提案に対して経営陣も前向きで、「やってみないと分からないから、まずはやってみよう」という社長の一声で、すんなりと導入が決まりました。
導入決定後、AIに予約キャンセルを予測させるため、どのデータを学習に用いるかを富士フイルムBIジャパンの担当者と検討しました。その結果、「予約日・来店予定日・人数・予約者・利用する部屋の種類」などのデータを学習させることになりました。
中でも「予約者」については、旅行代理店が団体旅行の食事場所として当店を含む複数の店に予約を入れ、最終的に1軒に絞って他をキャンセルするという慣行があります。そこで富士フイルムBIジャパンの担当者から、代理店とそれ以外の予約者をデータ上で分けた方がよいとの提案を受け、元データにはなかった「団体・代理店・個人」というグルーピングを行うことにしました。
過去4年分の予約データを学習データとして渡し、富士フイルムBIジャパンでFUJIFILM IWproの検証を行いました。予測結果は、過去の予約データリストの各行に「1」または「0」の値が追加されたシンプルなもので、「1」は「キャンセル」、「0」は「予約どおり来店」という予測を表す推論値でした。当初の検証では、予測が正確である可能性を示す確信度が平均75%と比較的高かったことから、実務での利用を開始しました。さらに1か月間の運用結果を確認したところ、キャンセルの可能性があると予測された予約のうち、約87%が実際にキャンセルとなっていました。この結果はまさに私たちが求めていたものでした。
現在では、キャンセルの可能性が高いお客様に早めに確認の電話を入れる運用が定着しました。早期に状況を把握することで、別の予約で埋め合わせられるケースも増えています。実際に、導入前年の4~7月と導入後の同じ4か月に宴会場をご利用いただいたお客様の数を比較すると、約10%の増加が見られました。
また現場でも、確認連絡の対象が明確になったことで、経験の浅いスタッフでも同じ基準で対応できるようになりました。従業員が以前より積極的に確認連絡を行うようになり、「予約枠を無駄にしたくない」という意識も高まっています。
このような予約者のグルーピングをはじめ、当社の業務実態に合わせた提案や導入時の柔軟かつ迅速な対応など、富士フイルムBIジャパンにはさまざまな面で支援していただき、とても感謝しています。
今後もデータを蓄積し、AIモデルの改善に活用することで、予測の正確性をさらに高め、機会損失の低減による経営の効率化や従業員の意識向上につなげていきたいと考えています。
同業の料亭はもちろん、ホテルの団体予約など大口予約のキャンセルリスクを抱えている企業であれば、業界・業種を問わず導入する価値はあると思います。ベテランはこれまでの経験から判断できますが、その判断基準を若手へ伝えることは簡単ではありません。AIによる予測結果を共通の判断材料にすることで、経験にかかわらず速やかに判断できる点が大きなメリットだと感じています。
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 吉塚 光太郎
株式会社稚加榮 代表取締役社長 田原 義太慶 様
株式会社稚加榮 システム室 室長 三井 文人 様
富士フイルムビジネスイノベーションジャパン株式会社 猿川 容一
博多駅構内の「稚加榮茶寮」で行っている弁当販売について、売れ残りの廃棄による食品ロスや、閉店間際の割引販売による利益率低下などが、以前から問題となっています。逆に、早めに売り切れてしまった場合には、もっと在庫があれば売上は増えていたことになります。現在は天候や近隣のイベント情報などを基に店長が日ごとに用意する数量を決めていますが、「FUJIFILM IWpro Intelligent Assistantオプション」を使って、天候や周辺イベントなどの情報も踏まえた、弁当の種類別の需要予測に取り組んでいます。
富士フイルムBIジャパンには、同サービスの機能強化などを通じて、今後も私たちの取り組みを支援していただくことを期待しています。
- 業種
飲食サービス業、小売業
- 事業内容
料理店の経営、辛子明太子等食品の販売
- 従業員
150名
- 本社所在地
〒810-0041 福岡県福岡市中央区大名2丁目2-17
- URL



















